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腹に呑んだ一本の刀 〜劇団KⅢ第八回本公演「罪忍」感想

仰々しいタイトルになってしまいましたがこれを書かないことには私の腹の中がズタズタになるんじゃないかということでぜひ書かねば!!!!と書かせていただきます。

 10月21日 舞台「罪忍」みてきました!!
あらすじ☟がコチラ

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時は戦の残火が燻る仮初の時代
先代の主、貞光が討たれ座を引き継いだ
吉政は暴君と化し、国は衰退の影を見せていた
そんな国に主君殺しの罪で幽閉されていた
元御庭番衆の佐之助が何者かの手により脱獄
何者かは言う 「忠義を尽くせ」
罪を背負うモノは走り出す
濡れた刃を握り締め
トアル「時代」トアル「島国」のモノガタリ

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観劇させていただきました。2時間15分。

凄いものを見た‼︎

もう、とことんそこに尽きるといいますか
タイトルにある通りとある国,倭の国の腐りゆく現状から始まって行くんですがそこで起きる二つの出来事が
・圧政により苦しめられている農民達が一揆を起こそうとしている
・かつて主君殺しを起こした佐之助が何者かの手により脱獄をした

この二つの出来事に対して国側 市民側 忍側それぞれが動き出して行くんですがまず全く関係性がないこの二つの出来事にたいして現在の国王である吉政が身を乗り出して取り組むのが後者であり,国王が家畜同然と捨て置いた農民達によりそい国に対する不信感を燃やした若い武士 羅威が前者につく。
ここでおもしろい、と思ったのがまず羅威はこの時点で佐之助に関する話を聞いていないところなんですよ。とにかく農民と話をしなければならないという一心で突っ走しる。そんな羅威の師匠である鴎外は暴走しがちなその姿を諌めつつも止めず,自身は忠臣としてのあり方を全うする。
鴎外が多分一番羅威がどうなって行くか、てわかっていたんじゃないかな…と今になって思い返しつつその陰で調子がいいように振る舞いつつ各陣営を引っ掻き回して行く伊達。そして遊女2人。
政治の大事な場には女あり、なんていうけどこの遊女の咲 咲織がまあーね!?凄いことしてくれますよね!!なんでこんなことするんだろ!!とおもってたらそこの影には巨大な力があるという

いや構成がめちゃくちゃ良すぎない!?!

そして現在の吉政公の御庭番衆たる忍びの里
国の市街や政治からは直接的な干渉を受けてはないおかげか忍び達はみんなそれぞれが思い合い,家族のように生活している。そこに飛び込む佐之助の報に戸惑いを隠せないながらも任務と掟,そして恋とで揺れ動きつつも自分達の忠義を重んじる忍達 前半コミカルなやり取りを見せてくれるおかげで後半が怒涛の悲しさ押し寄せてきた
救いをください

そして市民側にも動きあり、一揆を抑えつつも怒り止まぬ農民、猟師の3人組に国にも世の流れに対してものらりくらりとかわしつつ生きている桔梗一家のもとに罪忍である佐之助と導いた男弥助が接触したことで運命が動き始めて行く。

この舞台のすごいとこはこうして起きた出来事と各人物達の接触なんですけどそれが全て繋がること,かつ人は違えど育ってきた背景や思いに類似性があることなんですよ。

羅威と忠五郎の対比

咲と咲織の魅惑的かつ,演じられる青木五百厘さんと浅水香穂さんのとてつもない演技力の高さと醸す色気が凄かった前述した二つの出来事が重なるシーン。
・武士であり,立場も金回りも良く,それでいて人を思う羅威
・やや抜けていて桔梗や岩瀬から下の世話までされている忠五郎

全然違うこの2人。なぜこの2人、ておもうんですけどこの2人って 誰かのために役に立ちたいって思っていて、それを突き詰めすぎて役に立てないなら死んでるも同じ。ってぐらいの気概でいたんですよ。
 羅威はもう最初から世を救うためには吉政を切るしかないぐらいの気概でいて、なんども刀に手を伸ばしては師匠である鴎外に諌められる。鴎外の事は尊敬していて、その鴎外の気持ちも組んでいるからこそ士道を全うしつつ農民に頭を下げる。

 忠五郎は自分を拾ってくれた桔梗、そして世話を見てくれる岩瀬に対して多大な恩がありその2人に対してのためだったならばなんでもしてやりたいのに2人の方が気が回る故に何もできないでいた。もし2人に危険があるならばたとえ反対されても押し通したい。

 そんな2人の若く燃える強い思いに間違った燃料投下して延焼した結果この二つがつながり,一個の国が燃えてしまう。ていうのがとてつもなくしんどくて、そりゃ桔梗も鴎外もこの2人を死なせたくないよね‼︎大事にするよね‼︎ておもいました。

ただ羅威には愚痴を話せる同期が必要だったと切実に思ってる。これはガチ

鴎外と長門

この2人の対決が一番そ、そうきたかー!となった。城が落ちるならば共にあり続けるという気概で将軍を務める鴎外とやや緩いとこがある忍び里次期当主の長門。長門は密書により真実を知っていてそれゆえの動きをするんですけどね、鴎外はもう武士の定めと決めたなら動じない。それを全うする一本の刀が腹の中にある。もう絶対に折れないんですよ鴎外は。だからたとえ鎖鎌で刀を取り去ろうがその刀だけは取れなかった。故にあのまま勝負は流れたというかそこは本当に竹田さんの滲み出す闘気が凄かったです。
そして鴎外は一本呑んでいた刀を最後には自分に突き立てる……壮絶すぎますよ。そんな鴎外だからこそ忍び里であの立ち振る舞いができた,そして鴎外にトドメをさせなかった長門はその折れない刀があのとき見えたんじゃないかな。て思いました。

吉政と同殉

すけべジジイが本気出すと強い

吉政、あのいかにもな悪しぐさから一点振り返るといきなり巨悪の深淵を見せつけてくるのが凄いのと同殉のおちゃらけた姿からの地を叩けば場が一気に固まる凄さ。同殉は育てる側の人間であり吉政は枯らす側の人間で正反対なんですが2人は共通して人間の持つ弱さを熟知している。だからこそ吉政は自身が神仏になることに執着していたし、同殉は若者達に忠義のありかたの問いかけの答えをまかせる。おそらく同世代?ではある2人が見てきた世界がそこにあって、その結果吉政は死に、同殉は自身の繋ぎたかった若者達を失うというなんとも言えない関係が、一緒にいるシーンはないんだけどここもそうだなと噛み締めました。

保護者被保護者の関係性がとてつもなく濃くてありえないほど強い

この濃くて強いはいわゆる強すぎる酒というか飲んだら心臓が焼けるとかそんな感じなんですけど佐之助と飛鳥は何歳差なんでしょうね。
でもそんな中同い年で固まってる農民チームとっても可愛いじゃない!てなったけどまあまあよく考えたらまず農民達は大人というか親世代は生活に喘ぎ苦しんでるからそれすらないということに気づいて泣いちゃった。
最後まで3人一緒だったのがね……

羅威

ライ…!!!!

ライ……!!!!!!!!

ライ……!!!!!!!!!!!!!!!!

私が鉄骨渡りながらボロボロ泣き叫びつつずっと名前を呼びつつける。
怒りも涙も堪え続け、農民からの不満も全て一心に請け負った羅威
そんな羅威が一つの糸口になるんではないかと縋った罪忍狩り
吉政に剣を振るった時に自身の師匠である鴎外に頭を下げさせ,代わりに首を差し出すとまで言わせてしまった時に果たしてどんな顔をしていたのか
檻から出てきた時の内に秘めていた全てが溢れた後の能面の様にも見える表情からの刀を引きずり,くしくも鴎外のように腹に刀を呑んだ羅威。
ただ羅威の中にあるのは鴎外のように澄んだ刀ではなく、戦火の中、血を吸った黒いなまくら刀なんですよ………


羅威


羅威…!!!!!!!!!!!!


各キャストさん毎の感想はご本人に伝えたい部分もあるのでまた明日
千秋楽も楽しみます!!!!






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