古民家家族療法:まえがきと目次

私が東京から群馬の高山村に移住して4年になる。私の治療を求めてここにやって来る人たちは、来るだけで心が癒されるばかりでなく、長年抱えてきた問題が不思議と氷解していく。それより対話する中で私自身の心が癒されていくのがよくわかる。いったいなぜなんだろう? 
とりあえず私自身の体験に根ざした古民家・家族療法と名付けてみた。そして考えを深めていくうちに、これはアジア的な関係性に根差した愛着療法attachment therapyと考えるようになった。

古民家:私の安心の由来

高山村に越してきた始めは、空気の澄んだ自然の中の古い民家の環境がそうさせているのだろうと思っていたが、どうもそれだけではなさそうだ。私自身が60年あまりだどってきた人生の中で、愛着の喪失を体験し、自分自身の「安心」と「不安」という主観的な感情体験に気づいた。

安心と不安のメカニズム

精神科医としての臨床経験と自身の人生経験から、安心感と不安感という2つの感情が人の心のあり方、強さと弱さを規定していることに気づいた。人間は本来とても弱くちっぽけな存在だ。そういう人を元気にしているのは安心感。安心に満たされていれば、人は限りなく強くなりレジリエンスを発揮し逆境を乗り越え、不安の渦の中に居れば限りなく弱くなる。不安の中にいると、様々な精神症状や身体症状を引き起こしたり、不安の反動として問題行動を引き起こす。

不安と安心の由来

安心と不安の由来は人との関係性から生まれてくる。なぜなら、人の感情は親しい(はずの)人の間で自動的に伝わってしまうから。安心を伝え合えれば人は強くなり、不安を伝えあってしまうと弱くなる。その関係性(アタッチメント・システム)は一生を通じて、形や相手を変えて維持されていく。これはアジア的な関係性のあり方や人生観でもある。

不安を安心に変換する

安心な関係性の中で自己の不安を表出し、受け止められると不安を安心に転換できる。それさえできれば、不安の世の中でも安心をキープできるし、ひとに安心を分け与えることさえもできる。そのためには安心な他者との関係性が必要である。

支援者の自分軸をつくる

不安も安心も人同士の関係性の中で醸成される。他者に安心を分け与えるためには、支援者自身がしっかり安心の自分軸を確保する。それは理論や技法ではない、支援者自身の体験を作っていく。

具体的な技法

私が実際に行っている活動を具体例を交え紹介する。

1)関係性を集める
参加しないメンバーへの招待
祖父母・きょうだいの活用
システムの全体&部分へのアプローチ
関係者ミーティング
多種の「問題」を視野に収める
オンライン面談の活用

2)セラピストと、クライエント一人ひとりとの関係性を樹立する
相づちの活用
話題の焦点化

3)家族が安心して対話できる場を創る
中立性:相撲の行司役
関係性を肯定する

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