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【書籍】それでも、対話をはじめよう

1.はじめに

「人の話を聞いているつもりでも、自分の意見で頭の中が埋め尽くされていませんか。」
これは、今回紹介する書籍「それでも対話をはじめよう」の帯に書かれたメッセージです。

キャリアコンサルタントも、まずは自分の意見を頭の外に置いて、クライエントの話を聴くことから始めます。
心理学者カール・ロジャーズ(※)が提唱した積極的傾聴の三要素「共感的理解」「無条件の肯定的関心」「自己一致」によってクライエントとの信頼関係を構築し、クライエントの内省が促され、まだ言葉になっていない問題を見つけていくのです。

キャリアコンサルタントは一対一のカウンセリングだけでなく、組織への介入が必要となる場合があります。組織内外の多様な人たちと共に問題に取り組み、未来を作り出すためには「対話」が必要なことを多くの人が実感していると思います。

2008年に出版された「手強い問題は、対話で解決する」の新訳版となるこの書籍では「心理的安全性」や「1on1」など近年ビジネス界でも注目されているキーワードも使われており、古さを感じない「対話」の原点を学ぶことができます。

※書籍の150ページ2行目でカール・ロジャーズの言葉にふれています。

2.書籍の序文

序文は「学習する組織」のピーター・M・センゲさんが2004年4月に執筆しています。

進むべき道は、単にもっと賢くなるだけではなく、もっと人間らしくなることだ。

出典:「それでも対話をはじめよう」序文

2023年10月の今、この一文を読むと「単にもっと賢くなる」のはAIであり、「もっと人間らしくなる」のが我々に必要なんだと強く共感できます。

3.書籍のはじめに

著者アダム・カヘンさんによる「はじめに」の全文を英治出版さんのnoteで読むことができます。

4.書籍の章立て 

第一部 手ごわい問題
 第1章 「唯一の正しい答えがある」
 第2章 世界を見る
 第3章 奇跡的な選択
第二部 話す
 第4章 行き詰まる
 第5章 命ずる
 第6章 礼儀正しく話す
 第7章 素直に話す
 第8章 話すだけで聞かない
第三部 聞く
 第9章 オープンに聞く
 第10章 内省的に聞く
 第11章 共感的に聞く
第四部 新しい現実を創造する
 第12章 殻を破る
 第13章 丸めた拳と開いた掌
 第14章 傷口は一体になりたがっている
結論 オープンな方法
謝辞
訳者解説(小田理一郎)
参考文献

出典「それでも対話をはじめよう」目次

第一部から第四部ではアダム・カヘンさんの様々な実践での気づきがわかりやすい章立ての中で説明されています。

結論ではオープンな方法を始めるための10の具体的な提案が挙げられています。

訳者解説は30ページあります。
「今この本を読む意義」を3つ挙げており、この部分を最初に読んでもよいと思いました。
また、「話し方と聞き方の4つのモード」を図解し丁寧に解説しています。

5.著者アダム・カヘン氏登壇!刊行記念イベントに参加

このイベントでは「愛:Love」「力:Power」「公義:Justice」の重要さを繰り返しおっしゃっていました。(書籍では訳者解説に「愛、力、公義」についてまとめてふれています)

個人的にはThe Beatlesの「All You Need is Love」「Power to the People」を連想して好感を持ちました。

5.田村の一言

学習する組織」のピーター・M・センゲさん、
U理論」のオットー・シャーマーさん、
来談者中心療法のカール・ロジャーズさん、
出現する未来」の訳者としての野中郁次郎さん、など関心のある人たちがこの一冊の本でつながっていて、なるほどそうだったのかと原点を垣間見ることができた感じで嬉しくなりました。
キャリアコンサルタントの教養と実践のためにお勧めしたい一冊です。


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