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【読書ノート】BRAIN DRIVEN 1) - モチベーション

青砥瑞人著、ディスカヴァー・トゥエンティワン出版の「BRAIN DRIVEN ( ブレインドリブン ) パフォーマンスが高まる脳の状態とは BRAIN DRIVEN パフォーマンスが高まる脳の状態とは」を読み終えました。「モチベーション」「ストレス」「クリエイティビティ」というビジネスパーソンが課題に感じやすい3つのテーマについて書かれた読み応えのある書籍でした。

これがKindle Unlimitedで読み放題に入っているのがすごいなぁ、と思います。3つのチャプターからなるこの本ですが、1チャプターを1冊としてもいいくらいの読み応えです。Kindle Unlimitedで読める本はどうしても限られてしまう中、これはお金を払ってもいいと思えた一冊でした。

この本のユニークなところは、神経科学が新たに示してくれる叡智を、哲学や心理学でこれまで育まれてきた叡智と照らし合わせたことです。 神経科学の専門書は多くあり、哲学、心理学もそれ以上に多くあると思います。でもそれらを組み合わせて、私たちの生活と照らし合わせ、実際の生活にどのように応用できるのかを探求するのは専門的かつ実践的で、大変参考になりました。

それぞれのチャプターがモチベーション、ストレス、クリエイティビティと独立しているので、読書ノートも別々に設けることにしました。本日第一弾は「モチベーション」についてです。

モチベーションを語る前に、「メタ認知」という言葉について理解しておく必要があります。メタ認知とは、「自分自身を、客観視、俯瞰視」した認知の状態です。自分自身のことを主観的に捉えるだけでなく、客観的に捉え、自分自身の脳に自分自身についての情報を書き込み、それによって自分の状態を把握します。近年マインドフルネスという言葉を至る所で耳にしますが、メタ認知はその要と考えてもいいのかな。

さて、肝心のモチベーションですが、神経科学的にモチベーションを捉えると、3つの要素があります。

  • モチベータ=行動を誘引する始点となる間接的な原因  

  • モチベーション・メディエータ=行動を誘引する直接的な体内(脳内)の状態

  • モチベーション=行動を誘引する直接的な体内(脳内)の状態を認識したもの

モチベーション・メディエータとモチベーションのの違いはー

  • モチベーション・メディエータはやる気になっている状態

  • モチベーションはやる気になっている自分を認知した状態

モチベーションがまったくないという人はほとんどいません。やる気が出ないと思っている人はやる気がないのではなく、やる気を認知していないだけだと筆者は説きます。そこで前述のメタ認知が大切になってくるわけです。

そこで実践にそのモチベーション・メディエータをしっかり認知してモチベーションを保つためには何が必要なのか、というお話になってきます。

まずは睡眠。

脳の機能を見ていくと、古くからある脳機能、すなわち脳の下部の構造がモチベーションとして優先されることが多い。 だからこそ、たとえば睡眠不足の状況になると、生存のための睡眠が優先され、高次機能を発動させることが非常に難しい状態になる。呼吸や体温が乱れていると、学習や仕事のモチベーションどころではないのである。したがって、脳幹や間脳などでつかさどる機能のコンディションを整えておくことが、学習系や高次脳処理機能系のモチベーションを引き出すためには重要となる。

そのほかにも朝に日光を浴びてセロトニン量を増やす(夜のメラトニン量が増えて質の良い睡眠につながる)なども重要。生活リズムを整えることは基本中の基本だなぁ。

またモチベーションにはトップダウン型とボトムアップ型の2種類があります。たとえば「眠い」などはボトムアップ型、「これを勉強しよう」などはトップダウン型のモチベーションです。ボトムアップ型のモチベーションを自制して、トップダウン型のモチベーションに基づく情報処理を実行に結びつけるのが得策だそう。

たとえば大好きなコーヒーを見るだけで飲まないようにして、ドーパミンの値を増やし、やる気につなげるなど。空腹を感じたときにドーパミンを少しずつ活用して集中力に繋げるなど。ドMな私好みのやり方です。

もうひとつのお役立ちテクニックが「モチベーショントリガー」。モチベーションを高めるためのおまじないのような位置づけです。お気に入りの名言、ジェスチャー、音楽を見聞きして、必要に応じて脳内で思い浮かべることでモチベーションにつなげることができます。イチロー選手始め、多くのスポーツ選手が独特の動きをモチベータに関連づけているのを目にしますよね。

さて、モチベーションと密接に関わりのある体内物質といえば、ドーパミンとノルアドレナリンです。

  • ドーパミンは脳内アヘンと呼ばれる快感物質β エンドルフィンを作る。好奇心をもったり、何かをやってみたいと思ったりしているときに出る。

  • ノルアドレナリンは戦うときなどに出るストレスホルモンコルチゾールを導き出す。避けたい、大変だと感じる作業に向き合うときに出やすい。

何か行動を誘発する要因が出てきたときには、「もっと行動したい」という快感を生むβ エンドルフィンと「もうやめたい」というストレスを感じるコルチゾール系のふたつが拮抗的に働くことになります。このふたつの関係を把握することがモチベーション持続へのキーとなると筆者は言います。たとえばアドレナリンの量が多く、ドーパミンの少ないと「嫌避モチベーション」と言って、嫌々何かをやっている状態になります。逆にドーパミンが多く、ノルアドレナリンの量が少ない象限だと望んで刺激や情報に向かう状態ではありますが、アドレナリンによる注意の強化が得られていないので、集中しきれない「好接モチベーション」状態になることがあります。ということはノルアドレナリンとドーパミンという神経伝達物質が両方とも適度に出た状態での行動が、あらゆる学びに最高な脳の状態と考えられますね。その状態をここでは「学習モチベーション」と呼びます。

この原理を実際に応用すると、「嫌避モチベーション」→「好接モチベーション」→「学習モチベーション」のフローを捉えるのが新しい学びにとって効率的と考えられます。

  1. ストレスや回避性をもたらす(嫌避モチベーション

  2. 失敗の原因を素直に認識して成長への栄養素と捉えることによって、ネガティブな情動反応をポジティブな感情に書き換える(好接モチベーション

  3. 学習モチベーションに至る

この二つの物質を利用する方法はほかにもあります。何かを学ぶときに、「楽しい雰囲気を感知する脳の状態」を作り、脳がドーパミンの効能を長続きさせるとよいと筆者は説きます。グループ活動でアイスブレイクを取り入れたり、ゲーミフィケーションする意義がここにありますね。私も毎日のエクササイズをアップルフィットネスで友人たちと競ったりすることで、モチベーションにつなげています。

また、成し遂げた際のポジティブなイメージを作り出すことで、脳内でドーパミンを誘導して、脳や身体で快の反応をもたらせられるように想像力と妄想力を養うことも大切。「苦しいフェーズがあるからこそ、大きな快が得られる」と本気で信じ込み、強く望むことがポイント。たとえばアスリートが重いバーベルを上げるとき、脳は身体より早く「もう無理だ、やめよう」と回避しようとしますが、身体的にはまだパフォーマンスができることのほうが多いです。そこで自分自身、もしくはトレーナーに精神的な支えや追い込みをかけてもらい、高みを目指すわけです。

チャプターの最後に、モチベーションを追求する上で本質的な考えが書いてあります。

結果に対するポジティブな感情を大切にしつつも、プロセスにおける価値、快感、喜び、やりがいを大切にする人の脳は、たとえ結果がどうなるかわからなくても、やること自体に意味、意義、楽しみを見出し、新しい挑戦をする脳と言える。

結果が見えているような作業は人工知能が片づけてくれる現代において、結果ドリブンの脳ではなく、プロセスドリブンの脳が重要になると筆者は説きます。ゴールを目指す過程を楽しむ。これはモチベーションを追求するという意味合いだけはなくて、幸せに満ちあふれた人生の歩み方を考える上で大切なのではないかな、と思いました。

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