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ホップ収穫祭が無い夏なんて

今年は、遠野ホップ収穫祭が開催できなかった夏。

2015年から始まった遠野ホップ収穫祭。ビールの原材料であるホップの収穫を祝い、農家の皆さんに感謝し、仲間を増やしていく場。半世紀以上、ホップの生産を続けている遠野だからできるお祭りです。2018年から実行委員長を担当しています。

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3月から今年の開催についての議論が始まっていました。日々状況が変わるので、会議の度に「今は決断できない」ことが結論でした。もどかしい日々が続きました。リアルイベントとしての開催中止を決めたのは6月の頭。

実行委員長の立場として「今年は中止にしましょう」と決めて、関係者にメールを流しました。開催するかどうかを決断しないと、関わりのある方々にご迷惑をおかけしてしまう時期が迫っていたから。

会場の設営、出店者やゲストへの依頼、特別電車の手配。2日間で1万人以上来場するイベントには、協力していただいている方がたくさんいます。今年の「遠野ホップ収穫祭」が開催できるイメージが持てない中で、いつまでも引っ張れない。苦渋の決断でした。

一方で、状況が変わっていくかもしれないという希望もありました。もし夏に向けて感染者が減ったら、イベントを開催できるムードになったら、違うイベント名で開催しよう。そう関係者にも呼びかけていました。

そこからは、イベント中止や観光客減少によって影響を受けた地域の事業者支援に奔走しながら、遠野ホップ収穫祭の代わりに何ができるかを考える日々。これだったらできるのではないかと、いくつものパターンを考えていました。

諦めたくなかったんですよね。遠野ホップ収穫祭が無い夏なんて、受け入れたくなかった。何もしないで、夏が終わっていくのは悔しかった。

僕たちにとっては、文化祭のようにみんなで力を合わせて作り上げる機会であり、多くの方と再会できる、新しく出会える、大切なイベント。毎年の夏の思い出が、今年だけ抜け落ちてしまう気がしました。

責任感も感じていました。感染症を拡大させないというのはもちろんですが、地域経済のことも考えないといけない。自分たちが進めているビールの里プロジェクトも歩みを止めたくない。

7月くらいには「TONO HOPPING 2020」というタイトルの企画書も作っていました。密にならず、地域の各所に分散して、遠野の夏とビールを楽しめる企画。

その企画も、実際に進めようとなると、色々なハードルが。県内の感染者の状況が変わってきたタイミングでもありました。「TONO HOPPING 2020」は、幻の企画になってしまいました。

最終手段として残しておいた、完全オンライン企画でやろうと決めたのはお盆前くらい。ギリギリまで粘ったけど、リアルイベントはやっぱり難しかった。悔しいけど仕方がない。

当然、準備期間が短いので、実行委員チームの中でもリリース前には「無理をせず、今できることをやろう」と話していました。会場の横で、今の気持ちを話すくらいでもいい。自分たちの区切りとしてもやろう。ビアツーリズムメンバーを中心にオンライン配信のコンテンツを決め、SNSで告知を始めました。

そこから状況は変わっていくのです。失いかけた夏を取り戻すように。

SNSでの告知後、遠野ホップ収穫祭ではお馴染みのゲストの皆さんからメッセージが届き始めます。

2015年のイベント開始時から会場を盛り上げてくださっているドイツ民謡楽団・アルピナバンドのボーカル・山浦さんから、遠野ホップ収穫祭Facebookページへ投稿がありました。

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オンラインイベントが盛り上がるように、ご自宅で衣装を着て、演奏して歌ってくれて、そして来年に向けたメッセージ動画を投稿してくれたのです。

そして、遠野ホップ収穫祭のLIVEではお馴染みのサンプラザ中野くん・パッパラー河合さんからメッセージ動画をいただけるという話も飛び込んできました。

SNSでの告知を見て、「何か協力できないか」と連絡をくれたのです。ゲストや関係者の方にとっても、毎年楽しみなイベントになっていたことが嬉しくて。そして、中止になったことを同じように残念に思ってくれている。込み上げてくるものがありました。

オンライン配信の告知の少し前にリリースした遠野をご自宅で楽しめるTONO-HOP-BOXも、想定した以上のスピードで売れていきました。遠野ホップ収穫祭限定のリユースカップをSNSにアップしてくれている人も。今年は家で遠野を楽しむよ、オンラインイベント楽しみにしている、というコメントひとつひとつ見るたびに嬉しかった。

そこからは、実行委員メンバーや関係団体で協力しあって、急ピッチで配信機材を整え、配信場所や当日のタイムラインを考え直しました。少しでも楽しい雰囲気を届けたい、良い時間にしたい、と思って準備を進めました。このバタバタとみんなで準備する感じ、それは毎年のイベントで味わっていた感覚。

初回の配信は、まさかの機材トラブルが発生。30分も遅れて始まり、当初予定していたコンテンツが配信できない状況に。予定通り配信できないとわかった瞬間は、ゲストの方の想いや、楽しみに待っていてくれる視聴者のことを考えると悔しい思いでいっぱいでした。それでも、臨機応変に対応してくれた現場のメンバーや、視聴者の皆さんからの暖かいコメントに救われ、なんとか開催することができました。

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リベンジ配信やろう、と終わってすぐに実行委員メンバーで話し合いました。まだ夏は終わらない。機材を再度チェックし、企画を練り直す。

そして迎えた第二回の配信。今度は、全てのコンテンツを無事に配信することができました。嬉しかった。

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僕らの夏が終わった。配信終了のボタンを押し、実行委員メンバーで「お疲れ様でした」と声を掛け合った時にそう感じました。

今年は遠野ホップ収穫祭が無い夏。

でも、いつもの実行委員メンバーと力を合わせ、オンラインでの配信を実施することができました。そこには、お馴染みのゲストの皆さんや、応援してくれている皆さんが集まり、特別な夏の終わりになりました。

状況が読めない中で、何度もチームで話し合って、たくさんのプランを出したこと。考えた企画が白紙になったこと。ゲストの方から思いもよらない連絡をもらったこと。急遽機材を揃えてリハーサルをしたこと。機材トラブルでうまく配信できなくて悔しい思いをしたこと。それでもチームメンバーのフォローや、暖かいコメントに救われたこと。

全てはこの夏しか経験できないことです。大切な思い出として、これからきっと語られていくでしょう。

来年の夏は遠野で皆さんに会いたい。そう強く願っています。

皆さんと会場で乾杯すること、ゲストライブで盛り上がること、ドイツ民謡楽団の皆さんと一緒に踊ること、全てが楽しみですし、嬉しくて泣いてしまいそうです。

あの時は大変だったね。

そう言いながら、遠野でまた乾杯しましょう。

楽しみにしています。

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