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税理士・本郷尚先生の”相続する人・させる人”~関わるすべての人が幸せになる方法~ ケース2

資産税の専門家である税理士の本郷先生が、相続にまつわるさまざまなケースを取り上げ、「相続をする人も、相続をさせ人も、関わるすべての人がしあわせになるための方法」についてご紹介する本企画。第2回は、「150坪の駐車場を相続した忠雄さん」のケースです。代々の地主の忠雄さんは、固定資産税で駐車場の利益がマイナスになってしまう、アパートの建設を考えます。しかし、奥さまや息子さんたちは大反対。果たして、どのような決断を下したのでしょうか? 早速、本郷先生にお聞きしましょう。

<プロフィール>
本郷 尚氏
税理士法人タクトコンサルティング 顧問/税理士
1947年生まれ、神奈川県出身。大学在学中に、税理士試験合格。1973年、税理士登録。1975年、横浜に本郷会計事務所開業。その後、東京に進出。2002年、税理士法人タクトコンサルティングとして新たに組織を発足。資産税に特化したコンサルティングに強みをもつ。『相続の6つの物語』『資産税コンサル、一生道半ば』を始め、著書多数。


150坪の駐車場を相続してホクホクの忠雄さん。しかし、固定資産税でマイナスに!?

マンションやアパート、駐車場など、土地の活用法はさまざまです。しかし代々の地主となると、「先祖から受け継いだ土地を守らないと」という気持ちが強いあまり、良い判断ができないこともあります。
 
今回の相談者である忠雄さんもその一人です。東京近郊で農家をしていたお祖父様の代からの地主で、お父様が亡くなり、150坪の駐車場を相続しました。数千万円の相続税を支払ったため、預貯金はほとんど残っていません。忠雄さんはすでに定年退職しているため、年金生活を送っていましたが、「相続した駐車場の利益が入れば、今後の生活は安泰だ」と安心していました。
 
しかしフタを開けてみると、駐車場の利益よりも固定資産税のほうが高いことがわかりました。
 
「これじゃあ、利益どころかマイナスになってしまうじゃないか!」
 
真っ青になった忠雄さんに、地元の金融機関が「アパートを建てましょう」と提案してきました。
 
「そっか。アパートの家賃収入が入れば、固定資産税を払っても十分な利益が出るな」
 
忠雄さんは、ホクホク顔で「取らぬ狸の皮算用」をはじめました。しかし、そんな忠雄さんのそばで、妻の美波さんはしかめ面をしています。そしてこう言い放ちました。

「私は反対よ」

アパートを建てれば問題解決!? 金融機関の申し出に、一度はうなずきかけるが……。

忠雄さんはびっくりして、妻の美波さんに問いかけました。

「土地を担保に入れれば住宅ローンを組めるし、ローンと固定資産税を払っても、ちゃんと利益が出るって金融機関の担当者が言っていたじゃないか」

「それがイヤなのよ。この年になってローンなんて。借金は絶対にイヤ!」

アパートの建設を提案した金融機関が提示してきたのは、「2億円の借入金を35年ローンで返済する」というものでした。

「あなた今70歳なのに。35年ローンをどうやって返すのよ?」

「俺が死んだら隆太と晃太が相続するから、あいつらが返済すればいいだろう」

忠雄さんは、息子の隆太さんと晃太さんの名前を挙げました。

しかし、息子さんたちにその話をすると、真っ向から反対してきました。

「なんで僕たちが親父の借金を背負い込まないといけないんだ!」

それはもう大反対で、忠雄さんはタジタジになってしまいました。

「良いアイデアだと思うんだけどなぁ」

チラチラっと妻の美波さんや息子さんたちに目を向けますが、3人はずっとしかめ面のままでした。

代々受け継いできた土地を売る!? 忠雄さんにとって「ありえない選択」が、家族みんなをハッピーに!!

忠雄さんは一人では解決できず、税理士のもとにやってきました。

「祖母の代から受け継いできた土地だし、なんとか有効活用したいんです。アパートを建てれば、すべて解決すると思うのですが……」と、忠雄さん。

「とにかく借金はイヤ。息子たちに借金を背負わせるなんて、もっとイヤ」と、妻の美波さん。

「僕たちの気持ちを無視して、勝手に決められてもね」と、息子さんたち。

真っ向から意見が対立している忠雄さんご家族を前に、税理士はこう言いました。

「現状の駐車所では赤字。アパートを建てたとしても、2億円もの借金を35年かけて返済することになります。ご自身で組んだ借金を、お子さんの代まで背負わせるのはかわいそうではありませんか? 資産を守るのではなく、家族を守る方法について考えませんか?」

ここまで聞いた忠雄さんはハッとしました。

「確かに。先生のおっしゃるとおりかもしれません……」

それまで意固地になっていた忠雄さんでしたが、税理士の言葉を聞いて、つきものが落ちたように表情がやわらかになりました。そして家族で話し合い、税理士が提案した「駐車場を売却する」という方法を選択したのです。

東京近郊にある150坪の土地は、1億5千万円で売却することができました。十分な現金を得ることができ、妻の美波さんは胸をなでおろしました。

忠雄さんの顔も晴れやかです。どうやら、忠雄さんにとっても「借金を背負うこと」が少なからず負担になっていたようです。

その後、忠雄さんと妻の美波さんは、2人の息子さんとその奥さまに、毎年100万円ずつ贈与するようになりました。息子さんたちは、「子どもの進学で一番お金がかかるときだから、すごく助かるよ」と、とても感謝してくれたそうです。

【田宮のヒトコト】資産を守るよりも、家族を守ることを一番に。相続で大切な考え方です。

今回、本郷先生がお話してくれたケースは、自宅に加えて150坪の土地を保有する地主の方です。ご相談者の忠雄さんは「祖父の代から受け継いできた土地を守らなければ」という気持ちが強く、そのために奥さまや息子さんと真っ向から意見が対立してしまいました。

けれど最後には、税理士の「資産を守るのではなく、家族を守る方法について考えませんか?」という言葉にハッとし、「土地を売却する」という判断を下しました。

利益を生まない土地を持ち続けるよりも、売却して家族が必要な時に使う。忠雄さんと奥さまの美波さんが「息子夫婦のために」と毎年100万円ずつ贈与したのは、まさに「生き金」として資産を活用した素晴らしいご判断といえるでしょう。

タミヤホームでは、このような地主のお客さまのお悩みにも寄り添い、相続や土地の有効活用の専門家をつなぐことで、課題の解決に貢献したいと考えています。お困りのことがございましたら、ぜひお気軽にご相談ください。


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