「辞めますか?」


大学の授業で一番好きだったのは翻訳の授業だった。
英語は好きでも得意でもないから、先生が面白い人だったというのが大部分の理由であったが(女性の下着を「パンツ」と訳したら「パンティだろ!」と怒られて目から鱗だった)、一単語ずつちまちまと辞書を引く作業を重ねて、なにか成果物ができあがるというのが楽しかったんだろう、と思う。
誤訳であっても、次の週には先生が正解を持ってきてくれるので、答え合わせもできてスッキリ、という感じだ。

今の仕事は、あの時の翻訳の課題に似ている。
前任者がおらず、僅かに残されたマニュアルを読み取って、知らないことはもちろん知っていると思っていたものまで一つひとつ調べて解決策を探していく。ただ違うのは、誰も答えを持っていないことだ。
えいやっ、とやってみて成功すれば正解、エラーが出れば不正解、といった具合で進める。
効率はこの上なく悪いので時間がかかるのは大前提だが、時間をかければできるというものでもない。プレッシャーが大きい分、上手くいくと羽が生えたような心持ち。

入社してして2か月、中途採用というのは、本当に即戦力を求めているのだと実感している。
そして私が期待に応えられているかどうかと考えると、そうでもないような気がする。

同期入社の人が別部署にいて、その人は早やプロジェクトのメンバーの中心だ。専門分野というのはこんなに汎用性が高いものかと感心する。

前職のときは、毎日頭の中にスケジュールや工程が入っていて、忙しくなればなるほど頭がクルクルっと回って片付けていくことができたのに。

そして、毎月、月に半分ほどの日程で出張に行けという命令を「全ては難しい」と断ったところ、早くも退職の危機に。
一般事務職って、そういうもの?


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