その森のやすらぎ
【詩】
その森に入ると体温が一度あがる
計ったわけではないが身体がほんのり温まる
木々の配置や池の大きさ、その構図
ほんのわずか人を受け入れる余地を残す風
幸いにもぼくは森に受け入れられ
こうして唯一置かれたベンチに座ることができる
そこには何の不安も怖れもなく
ただただ存在することが許される
ぼくは背負ってきた重い荷物をおろし
池の水鳥が餌をついばむようすを眺めたり
雲がゆっくりと流れてゆく様を見あげる
寒さも暑さも焦りも失望も感じることなく
ただただそこに在り続ける
そして思う
この森がいつまでも壊されないことを
ヒトの悪意に踏み荒らされないことを
虫や鳥がいつまでも森を守ってくれることを
今朝も森に日が差して風がそよぐ
ぼくは森の入口に立ちどまりその存在を確かめる
森を見ることができる人は限られている
どうかヒトの悪意に見つかりませんように
そして重い荷を背負い駅へと向かう
tamito
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