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1作品に描くメインキャラ数の最適解

9人や。ウチを入れて。

© 2013 プロジェクトラブライブ!

おわり。


冗談です。でも結論はこれ↑です。

はじめに

  • 【重要】経験や体感による結論なので数値的な根拠はないです。
    あくまでチラ裏(いにしえのことば)として読んでください。長いぞ。

  • この記事で語るのは「1作品(1つのIP)」においてメインキャラとして据えるキャラ(=個性)の数の最適解についてです。
    ※ここで言うメインキャラというのは、作品上で敵味方問わず主役級の作り込み、登場頻度が予定されているキャラ(企画側で意図的にメイン商材となるように設計しているキャラ)のことです。

  • スマホゲームの運営目線が強めですが、メディアミックス前提の企画であればラノベ発だろうが漫画発だろうが結局ゲーム化で収益増幅すると思うので、「1作品」という言い方をしてます。

  • ラブライブの話もしますが、ラブライブについての記事ではありません

  • 私自身がソーシャルゲーム、スマホゲーム関連の仕事を8年以上やってきて感じていることとして、キャラの数というのは事業計画やIP認知、愛着(=売上)においても永遠の研究テーマみたいなところがあるので、この機会に自分の考えを言語化してみることにしました。

ちなみに、いま言語化しようと思ったきっかけは単純で、2021年10月から放送しているアニメ「SELECTION PROJECT」がめちゃくちゃ気に入ってしまったからです。

©SELECTION PROJECT PARTNERS

基本的な前提:キャラは多いほうが良い

これはたぶん、現在のスマホゲーム業界においては共通認識で答えが出ているものだと思います。
基本的にはキャラの数は多いほうが良い、なぜなら売り物(=ガチャキャラ)のバリエーションは豊かな方が良いからです。

(C)TYPE-MOON / FGO PROJECT

キャラが多いことのメリット

メインキャラが1~3人くらいの作品と比較すると、9人やそれ以上のキャラが登場する作品の方がメリットがあります。

  • ユーザーが気に入るキャラが必ず1人はいる、という状態を作りやすい。(広いユーザー層をターゲットにできる)

  • 毎回異なる見た目の商品(=キャラ)を出して、新鮮さを演出しやすい。

  • 多様なキャラと売れ行きから、現在中心となっている購買層の好みを検証して、次の新規キャラ制作や、既存キャラのバリエーション制作に繋げやすい。

  • 広告用クリエイティブに使える選択肢も増える。

  • ユーザーは自分だけの好きなキャラを見つけ、「推し活」を競ったり語り合ったりして楽しむことをしやすい。

特に、数年間運営を続けるスマホゲームは、商品のバリエーションの問題に悩まされやすく、運営年数が経過するにつれキャラ数問題は顕著になります。

ストーリーを飽きさせず展開させるための新キャラを作ったり、正月・バレンタイン・水着・ハロウィン・クリスマスといった定番シーズナル衣装も着せるキャラが定番化しすぎないようにしなければなりません。

(C)2014 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス刊/SAOII Project
(C)BANDAI NAMCO Games Inc.

上記はソードアート・オンライン コード・レジスタ 2016年のサマーシーズンキャラ。
https://www.4gamer.net/games/268/G026888/20160804039/
SAOはヒロインが少なく、ストーリー上のポジションも同列ではない(=人気にも当然偏りが出る)ので、特にアスナは現在までに一体どれだけのメイド服、浴衣、水着、サンタ服、バスタオル姿を見せたのか…

企画運営担当者はネタ切れに苦しみ、問題解決のようにオリジナルキャラが追加される場合も…
それならば、最初からしっかりとした位置づけで、それぞれに魅力を明確に持たせ、ファン(購買層)が良い塩梅で分散する程度に多くのキャラが登場する作品の方が、安定した売上を年単位で作れる…というのが現状です。

©2020 プロジェクトラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会

これは完全に個人的な想像(妄想)でしかないですが…
ラブライブの虹ヶ咲については時系列や展開方法を考えると、スクフェスの運営年数が2~3年を迎えた段階で「ラブライブの冠がありつつゲーム運営サイドで扱いをコントロールしやすい、売りやすい新規キャラ・グループを作って運営上のいくつかの問題を解決したい」といった、あまり胸を張れない出発点だったんじゃないかな…?と頭をよぎってしまいます。
角川(電撃G'z)やサンライズ主導の無印&サンシャインはキャラの取り扱いなど監修や制限が多そうなのは容易に想像できますし、2015年頃はアニメも落ち着き、収益基盤がスクフェス=ゲーム側となり、プロジェクト内でも発言力を持ち始めそうな頃合いに見えます。
そこから企画制作と調整で2年程度として、2017年3月に発表とするとなんか丁度いいなあ、と…

ただし、無制限に増やせばいいというものでもありません。
これも業界で共通認識だと思いますが、確実なデメリットが存在します。

キャラが多すぎる場合のデメリット

  • 管理がしきれない
    ※性格、口調、キャラ同士の呼称、行動原理など…
    ※シナリオが増えて登場人物を増やすほど整合性をとるのも大変になり、倍々で管理工数が肥大化していく

  • 単調化する
    ※時間が限られている場合、キャラが多ければその分一人ひとりのキャラ設定に割く時間も減るということなので、当然内容も浅くなり、見た目だけ違う単純でつまらないキャラの量産になりがち

  • ボイスがある場合、収録も工夫が必要
    ※目先のものだけで何も考えず収録すると費用が嵩むので、「先々までのセリフをまとめて収録する」「複数キャラ掛け持ちで共通声優を使う」など色々と企画工数が必要になってきます

  • 1回しか出てこないようなキャラが出てくる

  • 結局数人のキャラに人気が集中し、それ以外のキャラの扱いがおろそかになる(あるいはキャラ単体グッズを平等に作ろうとしたりすると常時余るようなキャラといくら作っても足りないキャラで二極化するので扱いづらくなる。ガルパン等)

  • ユーザーがキャラを覚えきれない

  • 増えれば増えるほど、全員を推すような深いハマり方(アイドルやVtuberで言うところの「箱推し」)が難しくなる

何人が「ちょうどいい」のか

ここまで読んでいただけたらわかると思います。
少ないと困る。
多すぎても困る。
じゃあ何人がベストなんだ?と。
コンテンツを作ってきた人たち、今まさに作り続けている人たちは、ずっと模索していると思います。

明確な答えが出たわけではありません。
一意の答えなんてない問いだとも思っています。
ただ、こと「アイドル」路線のコンテンツにおいては、ほぼ最適解といえる数字が見えてきたのではないか?と個人的に思っています。

そう、「9人」や。

© 2013 プロジェクトラブライブ!

ちなみに念の為先に言いますが、「ラブライブが成功したから」とかそういう話をするつもりは毛頭ありません。

ラブライブの前にあったもの

ラブライブの原作者である公野櫻子さんといえば、私にとっては完全に「シスター・プリンセス(シスプリ)を生み出した人」です。
シスプリといえば、「12人の妹たち」です。

▲ちなみにマイシスターは咲耶です(Vtuberで登場した時、私は嬉死んでしまいました)

(C)シスター・プリンセス 20th プロジェクト
(C)天広直人・公野櫻子/KADOKAWA

シスプリについて語ると長くなるので割愛しますが、少なくとも公野櫻子さんが原作を担当し、ラブライブ同様に電撃系の企画として存在した過去の作品を辿ると…

  • シスター・プリンセス:12人

  • パピー・ガールズ 〜わたしのおじさま〜:5人

  • Strawberry Panic!:3人+9人

  • Baby Princess:19人

こんな感じで、メインキャラ数が増減しているのがわかります。
※なお、このうち私がちゃんと追っていたのはシスプリだけなので、ほかはWikipedia知識のみになります…間違いがあったらすみません。

ここで言いたいのは、ラブライブより前に様々な試行錯誤があり、ラブライブの「9人」自体も試行錯誤の1つだったのではないか、ということです。

もちろん、試行錯誤だから簡単に生み出されてたまたま当たったとか言いたいわけでもなく、それぞれが心血を注いで作られたものであろうことは理解していますし、これらは読者参加型企画なので古参ファンの熱量は他コンテンツとも段違いだと思います。

しかしながら、コンテンツが「その時、世の中で大成するかどうか」はやはりギャンブルに近いところもあります。
とはいえ完全なギャンブルでもありません。
研究をして、確度を上げられるタイプのものだと思っています。
そしてその確度が高い人数として、収束していった結果…「9人」という人数が生まれたのではないか?
と言いたかったんです。

「9人」の特徴1:個性の種類が多い

最初の方で述べたとおり、キャラ(=個性)は多い方が広く刺せます。
企画側としても、それぞれをしっかり差別化して描くのに丁度いい最大数なのではないでしょうか。
ファン側も、9人もいれば1人は好きな子が出てくるでしょう。

▲セレプロだと栞ちゃんが好きです

©SELECTION PROJECT PARTNERS
▲私は大体、実直で真剣すぎるがゆえにツンツンしちゃう子が好きなんですよね

© Project Revue Starlight

「9人」の特徴2:「センター」がある

© Project Revue Starlight

奇数人数ということは、一列に並んだ際、必ず1人が中央…つまりセンターになるということです。
「アイドル」路線であれば、奇数であることは必須要素ですね。
センターをめぐる争いは、ドラマを生みやすいです。

また、ビジュアルデザイン的にも3×3で正方形に並べたり、5+4の2列で台形に並べたり、1~2人を前に出して残りを後方から囲ったりと、配置の見せ方もバリエーション豊富です。

▲3×3の正方形

©SELECTION PROJECT PARTNERS
▲前5+後4の台形配置

©Project Revue Starlight

「9人」の特徴3:小グループを作れる

© 2013 プロジェクトラブライブ!

9人は、「3・3・3」や、「2・3・4」など、2人以上で構成される小グループに分けて、それぞれに濃い関係性を描きやすいと思います。
さらにこれは1作品内で固定する必要もありません。
例えばラブライブでは、ファン投票によって選ばれた3ユニットの他に、「学年」という単位でも3つのグループに分けられるなど様々です。
人数を絞って関係性を描くことで愛着が湧きやすくなったり、最推しが関わった他のキャラクターに関心が生まれたりして、「箱推し」より推しやすい「小グループ推し」のようなスタイルもファン間の共通認識(=公式提供)として生み出すことができます。

▲”お嬢”を推すと、”マーマ”と”先生”にも関心が湧く
https://twitter.com/kaaaaaappe/status/1454085106813964304

「9人」の特徴4:1対1の関係性も36通り

※計算間違えてたので12/19 6:45頃修正。恥ずかしい…

9人いれば、1キャラ対1キャラの関係性は36通りあります。

n個のものから r個を選ぶ組み合わせの総数 nCr
9人から2人の組み合わせ: 9C2 = 9!/2!(9-2)! = 36

https://keisan.casio.jp/exec/system/1161228812

上述の小グループに加え、1対1も含めれば、2~3年の運用を考えてもストーリー作りでネタが切れることはほぼないでしょう。

ちなみにスマホゲームのイベントは、私の体感ですが「1~2週間」の間くらいの日数が多く、設計もしやすい印象です。
そうすると単純計算で月2回 ×12で年に24イベント。
イベントシナリオだけで1対1の関係性を網羅しようとすると1年半かかります。
実際には大きなメインシナリオと小グループのシナリオをイベントに使いながら、1対1はサブシナリオとして並走させたりするんですが、コンテンツボリュームを増やす上で丁度いい量だと思います。

▲真矢クロ is 最高
https://twitter.com/revuestarlight/status/1231126479611793412

「9人」の特徴5:全員に愛情を注げる限界値

これは完全に体験ベースのゴリゴリ主観なんですが、noteって主観をダラダラ書く場所ですよね?合ってます?少なくとも私のnoteはそうです。
出典とかデータとか知らん。

>Sister Princess

私はシスプリのとき中学生でした。
中学生というと若くて記憶力も高い頃です。
当時は一応12人全員のことを意識して覚えていましたし、誕生日なども暗記していた気がします。
それでも、当時から「全員にまんべんなく」愛情を注ぐことはできませんでした。
マイシスター咲耶、それからサブ推しとして鈴凛、四葉。
といったように、12人いても「注目するのは9人未満」になりました。

▲これは咲耶/四葉/雛子

(C)2000. 2001 天広直人・公野櫻子/Media Works Inc.・Stack

全然関係ないけど、シスプリリピュアのBパートは本当にやばかった、衝撃を受けた記憶があります。もう内容覚えてないけど…
鈴凛の良い画像なんかないかなと思って探したら、良いツイートを見つけてしまったので引用。

>ラブライブ!(無印)

ラブライブはどうでしょう。
私は2ndライブと無印アニメ1期(つまり2013年頃)からだったので、もう社会人ですね。
中学生と比べれば記憶力も衰えます
でもラブライブは、「最推しは絢瀬絵里」という軸はあったものの、同じくらい全員が好きでした。
そう、「9人全員注目できた」んです。

▲みんな違ってみんな好き

© 2013 プロジェクトラブライブ!

そして2018年頃~現在。私はアラサー。
昨日やったことと今日やったことの境界も曖昧になるくらい脳が限界に来ています。不労所得がほしい。
もう終電まで働けるような歳じゃないんじゃ…
というのはおいといて、
ブシロード発の「少女☆歌劇 レヴュースタァライト」や、
冒頭で言ったセレプロこと「SELECTION PROJECT」です。

>少女☆歌劇 レヴュースタァライト

© Project Revue Starlight

レヴュースタァライトは、ラブライブにも深く関わったブシロード発の企画なので、人数が9人であることもラブライブの成果を深く研究した上で、同じ数に倣うことを選んだのでしょう。

記憶力の衰えが見えるアラサーにおいても、レヴュースタァライトの9人はハマっている当時、全員フルネームを言えましたし、どんな子なのかもはっきりわかり、西條クロディーヌという最推しはいましたが基本的に9人全員に対して愛着を持って見ていました
あ、もちろん今も大好きですよ。
劇場版最高でした。BD届いたらあと100万回見たいです。
次の舞台「-The LIVE エーデル- Delight」は続編じゃなくスタリラがテーマなんですね。
スタリラのオリキャラ、他のタイトルよりは予めしっかり準備されていた感じはしますが、やっぱり9人超えると多すぎて追いきれません。
というより聖翔音楽学園99期生以外は最初からもう追う気が起きません
追加は舞台で登場する青嵐の3人でギリ。老化。

>SELECTION PROJECT

©SELECTION PROJECT PARTNERS

セレプロは、作品のテーマやストーリー構成から明らかにNizi Projectの大流行の影響を強く受けて作られていると思います
とはいえNizi Project視聴層とアニメ視聴層では明らかに客層が違います。
NiziUが9人だから、という理由もあるかもしれませんが、これも過去のアニメアイドル作品を研究した上で9人という選択をしたのではないか?と想像しています。

私も、職場の女性陣がみんなNizi Projectに夢中になっているのを見ていましたが、やはり三次元アイドルには興味が湧かなかったので全く見てません。
でもアニメとなると話が違ってきます。
事前に脚本があるアニメで「リアリティショー」とは?みたいな根本的なアレはありますが、目的は「リアリティショーで生まれるドラマや感動を、アニメファンに嫌われない形で上手く落とし込む」ことでしょうから気にしてません。

▲ライバルのツインテールちゃん、気になる

©SELECTION PROJECT PARTNERS

セレプロは2021年12月19日現在、絶賛放送中なので記憶にも新しいですが、アラサー末期ゆえの記憶力欠如により、名前がもう覚えられません。
でも、どんな子なのかということや、既にアニメで描かれている家庭環境、出場経緯などはなんとなく覚えています。あと一部あだ名。
そしてやはり現時点で、9人全員にまんべんなく愛着が湧いています

★「全員に愛情を注げる限界値」結論

つまり言いたいのは、
10人以上キャラがいると、注目できる人数が9人未満になる」
9人だと、9人全員に注目できる」
という仮説です。
これは特徴3、4での「関係性の描きやすさ」に付随した影響かもしれませんが、実証は誰かお願いします。
作品登場キャラ総数とファン注目キャラ数のグラフがあったなら、交差する最大値が「9人」なのではないか?ということです。

※12/19 13:20頃 ちょっとだけ修正

注目できる人数が多ければ、それだけファン1人あたりが使うお金も増えますし、それによりコンテンツが続くので、良いことが多いです。
登場キャラを増やしても、注目される人数が減ってしまえば事業的にはあまり意味がありませんし、そうなると全員を注目させることのできる最大の人数を求めたいですよね。

まとめ

結局、私がスマホゲーム運営の仕事をずっとしているせいでどうしてもその目線ばかりになってしまいましたが…

最終的にスマホゲームで収益を維持する前提で、
・作品(IP)として2~3年の運用
・ファンの熱量維持
・コンテンツボリュームの維持
を考えた時の、最適な人数

それは…

《9人》や。

© 2013 プロジェクトラブライブ!


おわり。


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