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究極のシングルタスク

自分がなんちゃってエンジニアをしていることもあるかもしれないが、マルチタスクという言葉が案外近年世間に浸透しつつあるように思う。

いきなりさておき。
私には13歳離れた姉がいる。
マァ私とは真逆の人間で、若い頃は細身短身で、色白、運動神経もよく、達筆、授業も予習復習なぞしなくても授業の内容を暗記し高成績をおさめ、当然若い頃は男にやたらモテ、さらに酒豪で、阿波踊りでは精鋭のみが踊る有名連に所属していた、なにそれチート?みたいな人だった。
私と似ているとしたら、声と笑いのツボくらいだ。(今はティモンディがお気に入りである。)

身内自慢のようになってしまったが、こっから落とすのでご安心を。

彼女には大きな欠点がある。
究極のシングルタスク人間なのである。

何が問題か?
集中すると人の話が全く聞こえない。(但し、悪口は聞こえるようである)
彼女との電話の途中でいきなり音声が途切れても焦って電波を疑う必要はない。勝手に考え事をし始めて、勝手に集中し、勝手にだんまりをするのである。
特に最近は携帯を触ることが多いので、話すタイミングが難しい。余談だが私が1台の機種を使っている間に彼女は3台機種を変えた。恐らく彼女が集中して使いすぎるので基盤がイカレたか、集中時に凄い磁場を発生させてるかのどちらかであろう。

そこから鑑みて、私の妄想だが彼女の若い頃にあったであろう話を聞いて欲しい。因みに既婚しているので今はありえない。

例えば、姉に好意を寄せる男がいたとする。
男は姉の好きなものをリサーチするだろう。そしてもんじゃ焼きデートに誘う。姉は無類のもんじゃ焼き好きだから、「今度、一緒にもんj」くらいで二つ返事をするだろう。
しかし、姉にとってもんじゃ焼きは食べ物ではない。美味く食べる「競技」なのである。油引きから鉄板にフルロットル向き合う。そうなれば、もう男のたわいない話に「ふーん」「へえ」しか返ってこない。もうこの時点で半分男の心はミシミシと音を立てていることだろう。しかしながら、彼のバックの中には自分とのペア時計があった。
土手を作る姉、液を流す姉、混ぜる姉。もうただのもんじゃ焼きマシンだ。
焼き上がった頃を見計らって男は姉に時計を渡すだろう。
「今もんじゃ焼きを食べてる途中でしょうがあ」
姉はシングルタスク故に、差し込みタスクが入ると瞬間湯沸かし器のように激しく感情的になるきらいがある。北の国からの五郎さんより切れたことだろう。
男は引っ込みがつかず、とりあえず姉に時計の渡してブロークンハーツのまま帰路についたことだろう。想像の男とはいえ不憫である。

もう一度言うが、あくまで上記は私の妄想である。
しかし、小学生の頃姉からやたら高そうな時計をもらったことがある。
数年後、その時計の話になった時に姉はこう言った。
「ああ、なんかお揃いでって時計もらったけど、ペアって気持ち悪いからあんたにあげた。」

えええー。

その男もまさか会ったこともない妹とペアウォッチなんぞしてるとは思ってないだろう。というか、その「気持ち悪い」の私に渡す?

妄想のまま完結してしまったが、つくづくシングルタスクは不便である。
そして、私とペアウォッチしていたであろう、妄想の中の男を不憫にと思いを馳せるのだ。

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