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「日本の法律では動物はモノ」そろそろやめませんか

動物虐待のニュースがあると必ずといっていいほど、「日本の法律では動物はモノという扱いである」という話が出てきますね。ペットが好きな方たちが「だから日本の法律って遅れてる、ひどい」と言う背景として登場することが多いかなと思います。

でもなあ、と思ったりもするんですよね。

「日本の法律では動物はモノ」の根拠は民法です。

民法では「この法律において「物」とは、有体物をいう」となっていて、有体物っていうのは、液体、気体、固体のことなんだそうです。
それと、「土地及びその定着物は、不動産とする」「不動産以外の物は、すべて動産とする」という規定もあって、動物は不動産じゃないので「動産」なんですね。
動物がなにものであるか、については書いてないので、動物をどこかのくくりに入れるとしたら「物」だし「動産」ってことになります。

でもね、動愛法(動物の愛護及び管理に関する法律)には「命あるもの」と書いてあるんですよね。

動物愛護管理法
第2条
動物が命あるものであることにかんがみ、何人も、動物をみだりに殺し、傷つけ、又は苦しめることのないようにするのみでなく、人と動物の共生に配慮しつつ、その習性を考慮して適正に取り扱うようにしなければならない。

この「もの」は「命ある物体」という意味ではなくて「命ある存在」ということなんだと思います。

1973年(昭和48年)に制定された「動物の保護及び管理に関する法律」には書かれていなかったのですが、1999年(平成11年)に「動物の愛護及び管理に関する法律」と名称が変わり大きく改正されたときに、「動物が命あるものであることにかんがみ」という文言が付け加わったんですね。1999年から動物は法律上では「命ある存在」なんです。

法律上の動物の立場は海外のほうが進んでる! とはよく言われる話で、たとえばドイツの民法などでは「動物は物ではない」としているものもあるそうです。

たしかに日本のどの法律にも「動物は物ではない」とは書いていないのですけど、動物愛護管理法には「命ある存在」であることは明確に規定されているんですよね。

それに刑法の器物損壊罪(261条)に「他人の物を損壊し、又は傷害した者は」と書いてあるこの「傷害」は動物のために入っているので、「動物傷害罪」と呼ばれることもあって、「物」とは別扱いされているんだそうです。(参考「動物の法的地位-憲法の観点からの考察を含めて-」山崎将文『九州法学会会報 2019』)

「日本の法律では動物はモノ」と言い続けることは、一方では動物をとりまく法律がよりよくなるものになることへの後押しになるかもしれないけれど、反面、動物虐待をするような人たちの虐待へのハードルを下げることになってはいないだろうか(「動物なんてしょせんモノなんだから痛めつけたってかまわない」)、とも思ったりするんですよね。

もう、「日本の法律では動物はモノ」ではなくて、「日本の法律では動物は命ある存在」と言ってもいいんじゃないでしょうか。

ではまた。

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