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尾道から長崎へ 自然を自分なりに美しくに描く《三浦秀幸アトリエ訪問》

アーティストのアトリエを訪れると、過去の作品と最近の作品を一堂に見ることができるので、考え方や技術の変化を見て取ることができます。
今回は長崎にある三浦秀幸さんのアトリエにお邪魔しました。尾道市立大学大学院を修了し、2019年春から制作環境を故郷長崎に移した三浦秀幸さん。近作は雰囲気が大きく変わった印象がありました。そこで、TAMENTAI GALLERYの山本と、アーティストの有田大貴でお話を伺いました。
(この記事は2019年12月に取材したものです。)

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 "Still Life with a Cactus (サボテンの置いてある静物画) II"を前に。
左:三浦秀幸 右:山本 功(TAMENTAI GALLERY)

尾道から長崎へ

山本:尾道から地元長崎に帰ってきてどうですか?

三浦:自分自身を内省する時間がやはり増えましたね。いま考えると学生の頃は、教授と同級生をすごく意識して、模索しながら作品をつくっていたんだと思います。
ところが長崎では日常的に美術の話をする相手も両親と、家の一部をアトリエとして間借りしている祖父母くらいです。周りと比べることもなくなったので、必然的に自分がほんとうはどういう絵を描きたいか、そのうえで自分はどうあるべきかと考えることが増えました。海と山に囲まれた静かなところに住んでいるのでなおさらかもしれません。

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アトリエの玄関を入ると三浦の描いた祖父の絵が飾られていた

心象風景を描く

三浦:もうひとつ、最近は具体的な風景よりも心象風景を描くことが増えています。自己表現で主張したいというのでなく、自分なりに自然の美しさを美しく描きたいんだなと思うんです。見ていて飽きない作品と、評価を狙ってインパクトを追求したものは異質だと気づきました。もっと自由に描きたいんです。
それから、日常と自然のつながりを感じられる作品を作りたいですね。ここのところ長崎の稲佐山など山の風景をつづけて描いています。
大学院を修了するときに、近松門左衛門の虚実皮膜論についての論文を書いたのですが、現実と虚構を自分独自の視点で織り交ぜながら絵にしたいという思いが強くなっています。
たとえば「蒼い砂漠」は、完全に自分の想像で書いたものです。

山本:風景画でありながら、抽象画のような印象もあります。

有田:絵に湿度を感じますよね。

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蒼い砂漠

三浦:心象風景の作品は、いまのところ小さなものが中心です。
大きな画面にしてみたいなとも思っているのですが、画面が持つかな、という不安がありまして...

山本:「画面が持つ」ですか?

三浦:心象風景は、自分のあこがれを表現しているもので、想像上のものです。その空気感を描き出すために大きめの筆で薄く塗っているのですが、これは小さな画面だからこそ成り立っている気がするのです。

作品の変化

山本:最近の作品と並べてみると、学生時代の作品はなんとなくもがいていた様子が感じ取れる気がしますね。

有田:筆致は変化していますけど、それぞれ三浦さんのスタイルがしっかりあっておもしろいと思いますよ。並べてみて思ったのですが、最近は人物を描かなくなっていますか?

三浦:たしかに、風景ばかり書いていますね。言われてみて気づきました。

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学生時代の作品「幽遠な夢」(右手前)、「誰も知らない場所」(右奥)と
近作「海辺の風景」(左奥)、「Puddle」(左手前)ほか

油絵でどこまで美しく描けるか

山本:これからどういう展開をしていこうとしていますか?

三浦:油絵具を極めようと思ってます。どこまで美しく描けるか突き詰めていく中で、なにをテーマに描くかを考えるようになりました。

山本:どう描くかの先に何を描くかがあるんですか?

三浦:どうでしょう。長崎に帰ってきて、自然とか、山に囲まれているぶん、感覚が研ぎ澄まされている気がします。学生時代は、生命とか自然の大切さとか、もっと大きなテーマを考えなければと背伸びをしていた節もありました。
最近感じたのは、紅葉の色づきが以前より悪いんですよね。温暖化とか環境問題とか原因はあると思うんですが、大きな社会問題を身の回りのことと地続きにとらえながら、美しさの表現について考えています。
技術もテーマも、やっぱり小さなことをひとつひとつ積み上げていくしかないです。

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「稲佐山の風景」

三浦秀幸 
画家。1994年長崎県生まれ。2017年尾道市立大学芸術文化学部美術学科 (油画)卒業、2019年同大学院美術研究科美術専攻(油画)修了。現在は長崎県を拠点に活動中。

下記ページで三浦秀幸の作品や過去のインタビューを掲載しています。


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TAMENTAI GALLERYは、2018年にスタートしたアートギャラリーです。オンラインサイトでの販売と、オフラインでの各種アートプロジェクトの企画をつうじて、「日常的に楽しめるアート」の文化を広げます。
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