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「顔たち、ところどころ」:思い出と顔を刻む

原題は「Visages, Villages」。韻を踏んでいて響きがよい。

だけど、「顔たち、ところどころ」という邦題もぴったりだと思う。
これ以上のタイトルやらコピーが思い浮かばないというのがnoteを書き始めて思う、最初の感想だ。

今回は渋谷のUPLINK併設のカフェで友人たちとご飯を食べたあとに映画をみた。

夕飯後だったこともあり、とくに前半は睡魔に襲われた。淡々としたスローペースのロード・ムービーだったので余計に眠くなった。

その点について、佐々木俊尚さんがこの映画のコラムを書いているので引用しながらコメントしたい。

87歳になる女性映画監督と、33歳の男性現代アーティスト。この2人がフランスのあちこちをめぐりながら、人々の顔写真を撮影し大きく引き伸ばして壁に貼り出すプロジェクトを続けていく。本作は、ただその様子をひたすら描いていく映画だ。

こうして内容の紹介を短く書いてしまうと、「なんだか単調でつまらなそう」と思う人は少なくないだろう。私も正直なところ、映画を観るまではそう思っていて、あまり期待していなかった。たいていのつまらないドキュメンタリーは、事実を淡々と客観的に描くことに執心しすぎている。過剰にドラマチックを追い求めれば現実から乖離してしまうが、一方で物語性を否定しすぎると観客の心には刺さらない。だから「良きドキュメンタリ」は、現実と物語の絶妙なバランスの上に成り立つ。

このあとに続く文章で、佐々木さんは本作品を「奇跡のようなドキュメンタリ」「超絶面白い」と評価している。

おばあちゃんになった女性監督とダンディな男性アーティストの掛け合いは可愛らしく、愛おしいものだったという点には共感するのだけど、正直、私にはまだこの映画にそこまでのおもしろさを見いだせなかった。

というより、あまり物語性がなかったように思う。

主人公の二人についても、その関係性についても多くは語られない。
なんだか不思議な映画だ。

でも、自然体な作品がみたいというときには、絶妙な映画なのかもしれない。

浜辺の戦争の遺跡に写真を貼って、翌日海に見に行ったら消えてしまっていたあの切なさが印象的だった。

あ、あとは絵が綺麗だった。カラフルなカットと村や海の風景、どちらもよかった。

花を買って生活に彩りを…