「VRChat企業・自治体ワールド見学体験ツアー」開催のウラ側
TAM/TAMTOの角谷(@hitoshisum)です。
記事を開いていただき、ありがとうございます。
TAMTO METAVERSE LAB主催で「VRChat企業・自治体ワールド見学体験ツアー」というイベントを開催しました。
この記事では、イベント開催の裏側をご紹介したいと思います。VR未経験者をあつめてVRChatでイベントをするときの参考になれば幸いです。
前回の記事を書いたあとの話
VRChatを250時間だけやってみて思う「メタバースの歩き方」 という記事を11月16日に公開し、たくさんシェアいただきました。「この記事を読んで俄然興味がわいた!」という声も聞こえてきました。
嬉しかった半面、『あぁ、、メタバースをはじめたい人に対して、雑な投げ方してしまったな…』という気持ちもありました。
仮想世界の中に入って、仮想の自分の手足を動かす感覚は、やってみたらきっと感動する体験なのですが、やってみないとわからないものです。
その感覚を、なんとか体験してもらう機会を作りたいと思いました。
もともとVRの仕事がしたいと思ってTAMTO METAVERSE LABを始めているので、将来的には仕事にもつなげたい。
そうして企画したのが、「VRChat企業・自治体ワールド見学体験ツアー」でした。
コンセプト
~あそびながらまなぼう~
メタバースやVRが多くの人につかわれるようになる未来を先取って、いま体験してみる。 まだ、あなたの周りの多くの人が知らない、楽しいメタバースの世界を、いち早く、遊びながら学んでみませんか?
初めての人でも楽しめるイベントを
「VRChat(VR)の仕事したいな」と思ってもらうため、VRヘッドセットを持っていない人を、VRでVRChatを楽めるところまで連れていきたい。
そのハードルはなかなか高かったです。
ハードル1.まずOculus Quest 2を用意してもらう必要がある
色々考えたのですが、Oculus Quest 2は運営側では用意しませんでした。
Oculus Quest 2をお客さんが自分で買って参加してもらいたいという気持ちがあったからです(ほんとにすいません)。
VRで何ができるかを自分自身で考えてもらうためにも、自分でVRヘッドセットを所有してもらえるといいなと考えていました。
その分、ちゃんとした企画を用意しようと頑張りました。「VRのヘッドセット、買ってもいいよ」と思える企画を目指しました。
とにかく講師のタナベさんに相談しながら、初めてコミュニケーションをとる方々に体当たりで企画を相談・打診し、イチから組み立てていきました。
企画
・テレビにも出演しているワールド制作者のVR蕎麦屋タナベさんを講師に
・企業事例として最もホットなNISSAN CROSSINGワールドの話が聞ける
・なかなか聞けない制作の裏側を聞けるイベントに
・実績多数のVR/メタバースガイドのおきゅたんbotさんに司会・配信を依頼
・日産自動車の広報の方や、企画担当の方もゲストで来てくれることに
・参加して聞くだけで終わりじゃなく、「交流会」も開催
ハードル2.VRChatに入って操作に慣れてもらう必要がある
VRChatの経験者ならわかると思いますが、VRChatは最初に友達と会うまでのハードルが結構高いです。(操作に慣れる、フレンド申請する、Inviteする…など)
初めての人が、だれにも教わらずにイベント当日にプライベートインスタンスに入るというのは無理だと思われました。
どうするか…と考えた結果、VRChatをインストールするところから学んで楽しめる体験会・操作説明会をツアー本番の前に実施することにしました。
事前体験会(オンラインで1時間半~2時間 /2回開催)
・Oculus Quest 2 でVRChatをインストール~操作チュートリアル
・フレンド申請と「Request Invite」の方法
・VRChat内で操作説明
・交流しながら、ワールド巡り
資料
https://docs.google.com/document/d/1wMXt7ZuSgstoQdO23ZUli8kSspQwIX23xbrxjevkVAM/edit
※事前体験会では操作説明に「Quest日本集会場 [JP]」をご案内させていただきました。ワールド制作者のhirhir13さん、ありがとうございました!
また、ツアー本番当日は、VRで入れない人向けにZoomでも見られるようにしました。
タナベさんと相談し、おきゅたんbotさんならVRの中の映像をZoomに中継していただけると聞き、ご相談をした形でした。
仮想空間と現実が、Zoomを通して接続する感覚がとてもおもしろかったです。
イベント開催までの苦労
VRヘッドセットを持っていない、または買って間もない方をターゲットにしたことによる難しさがたくさんありました。
苦労1.応募は伸び悩みました。
Twitterではイベントをシェアいただき、とても多くの人に見てもらうことができた一方で、思ったよりも応募が伸びませんでした。Oculus Quest 2が必要というハードルの高さを改めて感じました。声掛けもしたので、結果的にはワールドのキャパシティ一杯の参加者に応募いただけましたが、少しひやひやしました。
これについては、企画自体に何点か反省があります。
反省点
・【初心者向け】→【初心者歓迎】のほうがよかった。
経験者だってVRを仕事にしたいと思ってくれる人もいるはずなのに、初心者に限定したような書き方にしてしまった点。初心者じゃない人に「自分は対象外」と思わせてしまった。そういうツイートを実際に見かけた。
・「Questが必要」と書いたことで、PCVRの人達が来づらくなった。
PCVRの人も仕組み的には参加できるイベントだったので、不要なフィルタリングをかけてしまった。書き方の問題。
次回、開催する場合はこの辺を変えていこうと思います。
↓イベント公開時のシェア
苦労2.社内でやった事前体験会のリハで課題がたくさん出てきた。
社内で5名ほど集まってもらってQuest単体のオンライン事前体験会の運営テストをしてみた結果、
「Questのインターネットの接続が切れる(運営 / 参加者共に)」
「一人ひとりの進捗が、VRChat経験値次第でバラバラになる」
「トラブルの時にコミュニケーションがぐちゃぐちゃになる」
という問題で、まったくスムーズに進行できませんでした。
この日は、このように運営しました。
・運営メンバー3人がリアルで集まりつつ、
・被験者と運営はZoomに集合し、
・Zoomで説明後、VRChatに移動して説明をする
リアル+PC(2D)+Quest(仮想空間)という3空間を同時に使うコミュニケーションになっていましたが、これがトラブル時に全くうまく機能しませんでした。
リアルとPCと仮想空間の間は接続されていないため、同時に話しかけられたときに対応ができないという状態になりました。
この経験から、実際の運営では次のように気を付けました。
事前体験会/本番での運営時の注意点
・説明する人は1名にしぼる
・トラブル発生時も同じ空間内で対応したほうが結果的にスムーズ
・進行は、一番遅い人に合わせてゆっくり進めることにする
・インターネット接続環境をしっかり確認 参加者にも念押し
苦労3.35名が同時にワールドに入ったときのQuest単機の負荷対策
これは未知数かつ本番のワールドでのテスト方法もわからなかったため、Quest単体で人数の多いPublicワールドに入ってみて、負荷を確認しました。
35人程度で20FPSを切ることもあり、がたつく可能性もあったため、あらかじめ次の対策を検討しておきました。
負荷対策
1.新たに作る集合場所ワールドについては、なるべく動作が軽くなるよう作る(ライトの設定等)
2.Safetyの設定を「Maxium」で案内する
3.念のため集合場所ワールドにQuest対応のAvatar Pedestal設置
苦労4.事前体験会で、一部の参加者に機材トラブル発生
事前体験会は2回実施しました。
1回目は、人数も6名と少なく10時間~20時間ほどVRChatをしたことがある方が多く参加されていて、スムーズでした。
2回目は、人数が9名と多く、はじめての方も多かったので小さなトラブルがいろいろと発生しました。
小さなトラブル例
・初めての方でPCVRで参加された方あり。PCVRの案内は用意がなかった。
・インターネットの接続がうまくいかない方が2名ほどいた。
・Questの電源が立ち上がらない方がいた。
・一部の方が、フレンド申請が反映されるまでに時間がかかった。
など
その結果、うまくVRChatで合流ができない方が出てきてしまったので、「翌日土曜も個別対応いたします」とお伝えして、対応することとしました。結果的に、機材トラブルは原因を確認するのに時間がかかったため個別フォローをして正解でした。
また、事前体験会が平日夜だったので、「どうしても仕事で参加できなかったから個別案内をお願いしたい」という方もおられたので、個別対応は元々計画に組み込んでおくべきだなと思います。
その他、いろいろと気を使いながら進行を進めました。
はじめての方/Quest単機で必要な配慮一例
・充電の減りが早い
-事前体験会では2時間程度で充電が100→10%に。充電器接続を推奨。
・酔いへの配慮
-時間を極力短く(2時間) / 移動をholoport案内 / 当日体調みながら進行
・迷子への配慮
-運営メンバーが列最後尾で案内 / Drop Portal時は最後にSocial確認
・インターネット接続が悪いなど、当日うまく入れない場合の配慮
-Zoomなど配信が見れるようにしておく
余談:VRChatterのやさしさ
イベントの企画を始めた11月~開催終わる2月までの間、うまく行かなくて、落ち込むこともありました。
そんな中でも、タナベさんやおきゅたんさんが励ましてくれて、VRChatにいる人たちのやさしさを感じずにはいられませんでした。
「今回やって得られたことをまた次にいかしていけばいいんです」
「今回がダメでも、またやりましょう」
余談2:絶対に失敗できない理由
今回、スペシャルゲストをお招きしてのイベントなので、絶対に失敗はできないという気持ちでした。
また、VRChatの世界はつながりでできていて、口コミが広がりやすいので、TAMTO METAVERSE LABとしての初となるVRイベントを失敗させるわけにはいきませんでした。
集合場所ワールドはアセットを使って自作
イベントの趣旨説明をする集合場所が必要だったので、自分で作りました。(PC/Quest対応含む & スライド作成含まずで15時間程度。)
「仮想空間のワールドを作る」と言うと、なんだか壮大に聞こえますが、意外と素材はたくさん販売されているので、Unityさえ分かっていれば組み合わせるだけで作れたりします。
もちろん、オリジナルのものを作ろうと思うと3Dモデリングからなので大変です。それはWebの制作でも同じです。
15時間内訳イメージ
1~2時間 どんなワールドにするか作りながら思考錯誤
1~2時間 アセット選ぶ
4~5時間 Unityで組付け、調整
1~2時間 PC対応(最初Quest版から作った)
5時間 本番リハ後の調整(ライト、音量減衰対応、立ち位置設定など)
使用アセット
にりらぼさま
[VRChat]ワールド用インスタンス人数カウンター(SDK3.0)
https://kinel.booth.pm/items/2684600
ねこばこ屋さんさま
【無料】VRChat Udon 入退室ログ表示アセット
https://nekobako.booth.pm/items/2683599
【無料】VRChat Udon アナログ時計アセット
https://nekobako.booth.pm/items/2686243
みみーラボさま
【VRChat】スライドショーギミック【Udon】
https://mimyquality.booth.pm/items/3078140
LaikaBOSSさま
White Showroom
https://assetstore.unity.com/packages/3d/environments/white-showroom-93436#description
Vertex Studioさま
Free Laptop
https://assetstore.unity.com/packages/3d/props/electronics/free-laptop-90315
いもふらい店さま
無料うどんマイク(減衰無効ギミック付き)
https://booth.pm/ja/items/3038574
メイド・イン・プラナリアさま
VRChat SDK3のワールドの音声距離減衰設定するUDONのやつ
https://booth.pm/ja/items/3362816
rpgwhitelockさま
AllSky - 220+ Sky / Skybox Set
https://assetstore.unity.com/packages/2d/textures-materials/sky/allsky-220-sky-skybox-set-10109#publisher
John Bartmannさま
Gypsy Doo Wop
https://www.chosic.com/download-audio/28349/
がとーしょこらのおみせさま
UploadPlatformChecker
https://gatosyocora.booth.pm/items/1313067
Package Shop @aivrcさま
VRChatThumbnailer 2020 (サムネイル設定補助ツール)
https://65536.booth.pm/items/2327103
そしてツアー本番
開場の1時間前に運営メンバーで集合し、ミッションやトラブル発生時の対応フローの読み合わせを行いました。
当日は、酔いを最小限にするためにもイベントの時間は「2時間」です。
この短い時間で、最大限満足をしてもらうためにもツアー本番ではできる限りスムーズに流れるようにする必要がありました。
なので、当日は操作説明はしない方針で、事前体験会や資料であらかじめ準備していただけるように進めてきました。
みなさんのご協力もあって、当日は進行に集中できオンスケでスムーズに進めることができました。
↓開場前の読み合わせ資料
参加してくれた人たちへの感謝
最後に。
やれ、「メタバース、テレビで取り上げられてます!」
やれ、「Oculus Quest 2はめちゃくちゃ売れてます!」
やれ、「Oculus Quest 2は圧倒的に安い!」
やれ、「VRChatに企業が参入している!」
やれ、「ザッカーバーグの手紙が胸あつなんです!」
・・・・
Oculus Quest 2や、VRChat(そしてClusterやWorkrooms・・・)の魅力を社内外にまき散らしてきました。(「VRVRうるさい」と思われていたかも…)
そんな中で、何人もの人がOculus Quest 2を買って、イベントに参加してくれると言ってくれました。
Kさんは「息子につかわせよう」って言った日のあと、ほんとに買ってくれていた。
Oさんは自分のチームを巻き込んで、イベントをフォローしてくれた。
Jさんは「たまたま必要になったので」と言って買ってくれた。
イベントのアンケートを見ると、7人もの人が今回のイベントのために買ってくれたという。
中にはこんなメッセージももらいました。
> 私も昨日少しだけ使いましたが、
> 「興奮する」という感覚を体験しました。
> つけてみないとわからない感覚で、
> 体験するきっかけとなって良かったです。
>チュートリアルアプリで衝撃を受けました。確かによくできてます。
>これまで体験したヘッドセット型のVRとは別次元で、
>まさに現実と仮想の垣根がなくなったように思いました。
ここまで社内外を巻き込んで、もう引けないところまで来たという責任を感じていました。(引くつもりは1mmもないですが、実際に成果につなげないといけない重圧を感じ始めました)
「面白いと思うよ」
「企画に共感しました」
「イベント楽しかった!」
というみなさんの言葉で、とても救われました。
共感してくれる人たちがいなければ、この企画は実現できませんでした。
VRやメタバース、新しい未来のコミュニケーションの形に期待を感じている人たちが集まって、一緒に作り上げたイベントだったと感じます。
運営していて不思議な一体感のあるイベントでした。
本当にありがとうございました。
イベントの結果報告
アンケートやTwitterでたくさんの声をいただきました。
VRヘッドセットを買いたいというコメントを頂いたことや、「具体的に仕事でVRを使う方法を考えたい」という方が多くいたことから、当初の目的はある程度達成できたのかなと思います。
↓アンケート結果
これで終わりにせず、買ってもらった人、参加してもらった人が、また次の一歩を踏み出せるように、新しい企画を考えていきたいと思います。
※TAMではVRChatの確認をとってイベントを開催しております。
運営メンバーより
[中村颯介]
VRChatの楽しさを共有したい、知ってほしいという想いから始まった企画だったので、「VRchatの中でやる」のが条件だったのですが、これにとても苦労しました。
まず、そもそもの集合がとても大変。お昼の12時にハチ公前で!で良いところが、「VRChatのワールド集合」だとそううまくはいきません。
現実世界だと単純に道案内すれば良いのですが、VRChatとなると、案内する方、される方双方Oculusを被る事になるため、見えているものが違います。
社内で数回リハを行ったのですが、見えているものを共有できないことや、多対多の複雑なコミュニケーションで、それはそれは大混乱しました。説明したいことがうまく伝わらなかったり、体験者の方の状況がわからなかったり。
そんな大混乱から生まれたのが、画面キャプチャをたくさん使った説明資料、お客さんとのやり取りは1人で担当する、説明の前にOculusやVRchatの概念図を紹介するなどの工夫です。
そんなこんなで、準備段階ではハプニングだらけだったのですが、本番では参加者のみなさまのご協力もあり、大きな問題もなく楽しいイベントになりました。
なんだか大変だったことばかり書いてしまった気がしますが、VRChatは現実社会のいろいろな壁をとっぱらって交流できる優しい世界なので、ぜひこれからも多くの方と楽みたいです!
[坪谷初音]
今回のイベントの感想を一言で言うと「楽しかった!!!」です。VR上のイベントに参加したことがなかったこともあり、当日までは不安の方が勝っていましたが、当日は運営メンバー兼一参加者として普通に楽しんでしまいました…!
これからもVR上でできることを模索していきたいです。
[佐川史弥]
VRの紹介記事や動画が溢れる中、実際にVRヘッドセットを被り探検するというイベントを開催しました。
表向きは「企業・自治体ワールド見学」でしたが、自分の心に強く残ったのはみなさんとの交流そのものです。動いて喋って、実際にそこにいる感覚にすぐさま参加者の方々と打ち解けられた気がしています。
準備にはトラブルも多く「zoomだけの方が安全に開催できるのでは」という考えもありましたが、この言葉にできない感覚は空間を通して触れ合えたからこそです。
今後もこの特有の体験とビジネスの接点を探るべく様々な活動を行っていきます!もしVRで出会うことがありましたらぜひ仲良くしてくださいね。