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きのことスター・トレック

Netflixではスター・トレック「ディスカバリー」の第3シーズンを配信中。

スター・トレックを始めてみたのは2013年に映画館でみた「イントゥ・ダークネス」。パートナー氏が好きだというので付き合い程度にその次の「ビヨンド」も見ましたが、特にどうとも思っていなかったのです。それが、「ディスカバリー」で大ハマリ。スター・トレックナメてました。スター・ウォーズ的なSFエンタメかと思いきや、哲学、美学がしっかりしていて、風刺、隠喩がてんこ盛り。「ガリバー旅行記の舞台が未来の宇宙になったらスター・トレック(当社比)」なのです。

映画は全部、ドラマも実写のは(アニメ以外)はかなり見ました。オリジナルの「宇宙大作戦」と「新スター・トレック」はテンポがたりぃので、要所だけかいつまんで、「ディープ・スペース・ナイン」は航海しないぶん冒険に欠ける(退屈)なので冒頭のみですが、「ヴォイジャー」と「エンタープライズ」はぜんぶ見ました。アマゾンで配信している「ピカード」とNetflixの「ディスカバリー」はまだ続いていますがとりあえずぜんぶ見てます。

作られた順番で見ていないうえに、時系列順に作られてはいないので、製作された順と、時系列順の年表を自作したくらいハマってます。クリスマスツリーにはエンタープライズとクリンゴン艦が乗っかっています。

それはそれとして…。

現在進行系の「ディスカバリー」のメインキャラクターにポール・スタメッツという機関士がいます。気むずかしやとして登場するのですが、「胞子ドライブ」という宇宙きのこの菌糸体を利用した瞬間移動システムの一部に自らなる経験以降、人が変わったようにフレンドリーになり、ボーイフレンドもでき…という設定。実はポール・スタメッツというのは実在する菌類学者で、その人にちなんだ命名なのだということをつい数日前に知りました。

念の為、菌と細菌とは全く別の生き物であることを確認。細菌とは核をもつ単細胞構造がクローンを生み出すことで増殖します。菌はきのこやカビのようなもので、胞子が発芽し菌糸を伸ばし成長し胞子を作り飛ばし…というライフサイクルを持ちます。この菌類を研究しているポール・スタメッツ博士

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こちらはディスカバリーのスタメッツ

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実在のポールはひょうきんなオジサンといった風体ですが、宇宙艦隊の士官なだけあって凛々しい。

それはともかく、ハイテクノロジーの未来においてなぜ「きのこ」?というところがとても興味深くて、あらゆることが記号化、電気信号化されるテクノロジーの世界ではありますが、有機体の世界を無視しては行き詰まるのだろうという予感さえ漂う説得力なのです。少なくともわたしはそう感じました。

有機体と無機体を結んだり解いたりするのが「菌」。もしかすると「菌」は時空や次元を超えて胞子をばらまき菌糸を伸ばしているかもしれないのです。その運び屋の一端を担っていたのがクマムシという設定も突拍子もないのですが、かといって頭ごなしに否定もできません。

何を言ってるのかさっぱりわからなくなってきたかもしれませんが、生き物たちのネットワークやコミュニケーション、共生や循環には必ずといっていいほど「菌」がミクロな世界で関わっているのだから、マクロに転じてもフラクタルに同じことが言えるのではないか、と。

タイトルの写真は薪に生えた名前のわからないちっちゃなきのこです。菌は有機体を無機体に変え、また有機体の栄養になる橋渡しをします。「土に返す」のが「菌」のしごと。土に帰り無機体となったものは、細菌、菌、植物たちの栄養になります。わたしたちが抗生剤or抗菌剤などと呼んでいる細菌の増殖を阻むお薬をつくるのも「菌」のしごとです。わたしたちの預かり知らぬところでいろんな生き物のコミュニケーションを橋渡ししているのが「菌」。

菌が作り出す菌糸体は地上だけにではなく、ドラマの中では宇宙きのこが宇宙空間全体に張り巡らしていて、その菌糸体のネットワークを利用した胞子ドライブが2256年頃に実用化されます。ところがその胞子ドライブを備えたディスカバリー号は次々にアクシデントに見舞われるため、そして複製が困難であったため、そこから900年後の未来(いまから1000年以上の未来)になっても普及していません(伝説のテクノロジー)。第三シーズンはこの胞子ドライブを巡る展開になっていますが、果たしてこれが宇宙の平和につながるのかが気になるところです。物理的な位置や一方向に流れる時間を自由自在に超えられるテクノロジーは、ワープ技術を超える精神性がなければ平和に用いることができないのではないかと、勝手に想像して今後の展開を妄想して楽しんでいます。ドラマの中のポール・スタメッツが胞子ネットワークにつながるにつれ、腹側迷走神経複合体のコンディションが良くなっていくように見えるのです。脚本家はポリヴェーガル理論を勉強したにちがいない。

森の中にはいろんなきのこがあります。きのこが豊かに生える地面にいろんな植物が生えて森になるのかもしれません。いずれにせよ、ネットワークや共存関係のあるところには必ず「菌」がいます。電気信号のネットワークはそれを模倣しているだけなんですよね。ホバリングする楓の種をヘリコプターに模し、滑空する鳥の翼を飛行機に模倣したように。共存と平和のスターターとしての「菌」に注目していきたいと思います。

味噌や甘酒を仕込むこときの「こうじ」、ブリーチーズやカマンベールチーズがまとっているのが「白カビ」、ゴルゴンゾーラは「青カビ」、ビールやワイン、パンは「酵母」。これ、ぜんぶ「菌類fungi」です。ずっと昔からヒトは菌と共存してきたんですね。

では。


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