頼まれてもないのに。その43(令和4年大相撲名古屋場所を振り返る)
今回序ノ口の取組から幕内の結びまで、初めて最初から最後まで通しで相撲を見ることができました。14日目です。Abema大相撲さんありがとう。
この日はまさかの12時45分取組開始でした。することのなかった土曜日、6時間ならギリギリお付き合いできます。
え、朝から国技館にいれば通しで見られる? いやいや逆です。国技館観戦ってのはとにかく忙しいの。食堂に続くお昼のちゃんこの長い列に並ばなきゃいけないし、十両や幕内の関取たちが場所入りするぞって時間帯めがけて外出なきゃならないし、もちろん売店だっていろいろはしごしますし思いもよらないタイミングで往年の名力士であった親方衆とはちあわせできたりもするんですから、うかうか座ってられないんです。そうそう相撲博物館だって忘れちゃいけないよ。
常連さんともなれば落ち着いたものかもしれませんが私のような数年に1度観戦するかしないかみたいな客の場合、とかくあちこち見て回っちゃうもの。
ああまた行きたいなあ国技館。おっと話がずれました。
序ノ口から順に見ていくと、上に行けば行くほど相撲の圧が違ってくるのが伝わってきますし、幕内上位ともなればこれに加え動きのスピードまで全く違ってきます。頭ではわかっていても実際に順を追って見ていくことでしか味わえないこの感覚、貴重な体験でした。
番付下のほうには私が思っていたよりも体の引き締まった成長途上のお相撲さんが多くいて、中には相手力士の重量に吹っ飛ばされてしまうお気の毒な取組もなかったわけではないですが、みな持ち前の動きの良さと意外な力強さを披露し見ていてわくわくする取組を見せてくれていました。どの子も楽しみです。いいもの食べて、稽古でもっと体を大きくしていくんだよ。がんばれ。
私のひそかなお気に入り二本栁さんの取組が久々に見れたのも嬉しかった。幕下の番付で頑張っているのですね。苦労されているようです。苦労の報われる日が来ますように。
さてさて、早くから見ていたせいですでに気持ちがだれていたせいなのか、15日間分の記憶とごっちゃになってしまったせいか、この日の十両、幕内の取組を思い出すことはできません。とにかく力士がいないんだもの。土俵入りは巡業さながらのソーシャルディスタンス状態。北の富士さんのコラムを読み直して、そうそうこの日は霧馬山と若元春の好取組があったんだっけと。
最後まで相撲を取ることのできたお相撲さんの中ではこの二人と豊昇龍、錦富士と翠富士が痛快だったという印象を残しています。若隆景もよかったけど今回は次点かな。
横綱は終盤グダグダになりつつも千秋楽まで土俵を務め上げ、それだけでも最低限のお仕事を果たしたという感じでしょうか。貴景勝は良い時も悪い時もただひたすら勝ちに邁進する姿勢が、それが裏目に出る行き過ぎも時々見られるようになりましたけど、そうはいっても周りが大袈裟に騒がなくとも気づけば黙って地位を守りきってるという意味では立派に大関だなと。正代は来場所を見てみないと何ともいえません。
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優勝したのは平幕の逸ノ城。遅いよこれが初優勝だなんて。12勝3敗。
こういう異例の場所で手堅く優勝することも大事だけれどこれほどの逸材なんです、できれば皆が出揃った場所での堂々たる優勝を祝いたかったよ。
これまで発揮しきれなかった実力がついに開花、というよりも、先場所コロナで無念の休場をしたことが持病の腰痛にはプラスに働いてくれたのかなと思うと、来場所以降同じ活躍が見られるかどうか。
なにせ今場所は、初日からの田子の浦部屋全員休場はともかく、7日目の出羽海部屋一斉休場から始まった怒涛のコロナ発症。千秋楽には直前まで協会ご挨拶までこなしていた理事長が表彰式には姿を現せなくなるという、今場所のグダグダをまるっと象徴するような事態に。
終わってみれば田子の浦部屋も含め、43部屋中13部屋、全体の約3割にあたる174人の力士が休場という、なんとも釈然としない終わり方をしてしまいました。
仕方ないんですけどね。日本相撲協会も力士たちも関係者の皆様も、誰一人として悪くないです。対応は国の指針に従っているだけのこと、事前に複数回のワクチンだって打ってるでしょ、感染対策だって、そりゃ実際には見てないけどもさ、どこの部屋もおろそかにしてただなんて思わないもの。
ただただ不運としか言いようがなく、感染者を出したことを気にはなさらないでということと、その中でも後日発熱等の症状に見舞われた皆様にはご無事と全快を祈るばかりでした。
というわけで今場所に関していえば本来いるべき力士が3割も出てない中での成績ですから参考記録みたいなものだよなあという思いが私の中にはありまして。そうはいっても15日間必死で戦って結果を出した人に昇格という目に見える成果を与えなければならないのも事実。
今回好成績を残し、さらには昇進を果たした皆様、これも強運の一つ。運も実力のうちといいます。
感染者が場所中に出てもなんとか完走できたことは一定の評価となるのでしょうが、こんな形に終わる興行はやはり寂しい限りですね。
好調だったのに一斉休場の憂き目にあった力士たちは相当悔しかったでしょうし、部屋から感染者が出ないかずっとヒヤヒヤしながら最終的に皆勤できた力士たちも精神的に相当きつかったことでしょう。とりわけ大関横綱を抱えている部屋の関係者は終盤になればなるほど相当のプレッシャーだったでしょう。
次回9月には感染状況も落ち着き、今度こそ力士の皆様が最後まで実力を存分に発揮できる場所になることを心からお祈りし、今回のまとめとさせていただきます。
休場された皆様も、皆勤された皆様も、本当に本当にお疲れさまでした。とりわけ発症された皆様におかれましては後遺症等の苦しみがどうかございませぬよう。
武者修行中です。皆様に面白く読んでいただけるような読み物をめざしてがんばります。