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落ちこぼれシニアのリベンジ読書~『老人力』赤瀬川原平著~

いわゆる「前向きな(ポジティブな)老人研究」の走りの書だろうか。
著者が仲間と作った「路上観察学会」での活動(!?)を通じて、「老人」が研究対象となり、「老人力」という言葉が生まれたらしい。

どうしても老人ネタはネガティブになりやすい。
著にもあったが、老人力の特徴は「物を忘れる、体力を弱める、足どりをおぼつかなくさせる、よだれを垂らす、視力のソフトフォーカス、あるいは目の前の物の二重視、物語りの繰り返し」などにあるが、それをみんな嫌がるという傾向が強い、と。
しかし、物は考え方だ! この書は教えてくれた。
 
例えば、身体に力が入らない・・・・・・。まさに老人のマイナスイメージの典型の言葉。
しかし逆説的に考えたらどうか。
「力み」がなくなるといえないだろうか。
ゴルフにしても、力が弱っているのに「遠くに飛ばそう」という思いが強すぎると、変なところに力が入ったり、おかしなフォームになってしまったりしがちである。
むしろ「力がなくなってきた」という現実を受け入れれば、「飛ばす」ことよりも「(力を抜いて)コントロールする」ことに視点が変わってくる。よほど爽快感を求めたい、という方なら話は別だが、確実なゴルフをめざす結果として、最終的にプレー後のストレスは少なくなるように思う。

また老人力の深まりが今日の新しいブームを作りだしたといえないこともない。
著に骨董ブームの記載があったが、私が毎週見ているテレビ東京の『なんでも鑑定団』はその典型のように思う。陶器や掛け軸、古書などなど・・・・・・。出てくる作品はそうした老人趣味が多い(最近は傾向が変わってきたが)。それが番組の演出もあってか、作品の出品者はもはや老若男女は関係ない。聞けば、応募も半端ないらしい。「コレクションを楽しむ」という新しいブームの到来である。
 
大切なのは「もののとらえ方」か。「老人=老いぼれ」的な発想ではなく、俯瞰して考えることで、新たな自分を見つけることもできる。それによって残りの人生もより充実したものになるだろう。
さらには、そうした老人力が社会に役立つことにもなると感じている。経営の神様・松下幸之助も「青年の逞しい創造力と老人の体験による知恵とが適切に融合されたとき、そこに大きな成果が生まれる」と語っている。
『老人力』は、今日の超高齢社会に対する応援歌である! 
強く感じている。

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