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落ちこぼれシニアのリベンジ読書~『文章読本』丸谷才一著~

書くことが大の苦手な自分が、なぜかものを書く仕事がメインの職場へ配属。ずっとうまくいかず、怒られてばかりの毎日だった。
そんなある時、上司から渡されたのがこの書籍。しかし、「毎日忙しくて400ページもある本は読めない」と結局は積読に。
あれから30年。今回読んでみて、上司は何をいいたかったのか、身に染みてよくわかった。しっかり読んで理解していればもっといい仕事ができたのに、と今さらながら反省している。
 
文章とは「判断や意見を相手に伝え(伝達)、あわよくばそれを信じさせる(説得)ために書かれる」ものと記載されている。
よい文章を書くために注意しなければならないのは「話の運び」。それはつまり「伝達・説得のための表現」であり「心構え」を意味する。
そこで「一番大事なのは、論理性であり、その論理性を貫こうとする場合、肝要なのは筆者の視野の広さである」としている。
そして「終始論理的であるように話を進めるために大切なのは準備(伏線)」として、「心理的にも論理的にも必要にして充分なだけの前置きをしなければならない」とある。
 
おそらく上司はこのことを伝えたかったように思う。
視野の狭い範囲の少ない情報。そして論理性がない話。起承転結がはっきりしていない話。だから相手に何も伝わらない。
それが当時の私の文章だった。(今でもそう大きく変わっていないが)
 
著者の丸谷才一はこの著書で、特に文章の論理性を訴えている。
「文学は意味の伝達性と文章の論理性とに支えられて成立する点が肝心な点」として、さらに、論理的な文章を書くためには「西洋の文章(名作ということだろう)に親しむ」ことが必要であると説いている。西洋の場合、思想の言語と生活の言語がつながっている(=語彙に汎用性があり気軽に使える)こともあり、そこに論理性を学ぶヒントがあるとしている。
 
どうしたらよい文章を書かせることができるか。
おそらく上司は私以上に頭を痛めていたことだろう。
この著書を読んで当時の上司の気持ちを察することができた。

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