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落ちこぼれシニアのリベンジ読書~『食べものから学ぶ世界史』平賀 緑著~

「食」を基軸に歴史と経済や環境問題を学ぶ本。
食の歴史、今日の課題と背景、今後の方向性がわかりやすく書かれていた。
特に「緑の革命」と「地域に根差した食と農のあり方」については、個人的にほとんど知識を持ち合わせておらず、学ぶべき点が多かった。
 
「緑の革命」。このきれいな言葉の背景には「先進国のエゴ」が見え隠れする。
そもそも「緑の革命」とは、農業の生産性向上を目的に、穀物類の品種改良などの農業技術革新と、発展途上国への導入プロセスのことをいう。
新しく開発された品種は、発展途上国における食糧不足を解消し、さらには食糧の増産による自給体制を確立することを目的に途上国に積極的に導入された。一時的に収穫量の増大をみたが、肥料、農薬の大量投与による環境破壊や伝統的農村文化の崩壊を招くなど、多くの批判も浴びたようだ。
 
例えば、IR‐8という新しい品種は収穫量を従来の品種の約2倍に増やすことができるものであるが、大量の肥料農薬の散布、灌漑(かんがい)設備や農機具の充実など、近代的農業技術の導入を前提とするものであり、多額の資本投下を必要とする。結果的に先進国への依存度が高くなってしまった。さらには新品種を導入できる農民や地域と、できないものとができ、農村内部の階層間、地域間の所得格差を拡大させるという国際的な社会問題をもたらすことになった。
 
また、筆者は日本の食と農を考えるにあたり、最終的に「どのように持続可能な経済の仕組みをつくり、人と環境に望ましい食と農の仕組みを築いていくか」との問題提起をしている。
そのひとつの解決策として、京都で始まっている市民活動をもとに「地域に根差した食と農のあり方」をイメージしている。
ポイントとなるのは、小さな農家や事業者、地域行政や農協、商工会議所、そして子ども食堂やフードバンクなどに取り組んでいる市民活動などが、分散しながらも多くの線でつながっているネットワークを形成すること。
さらにはその地域ネットワークを通じて、商品の「価値」ではなく「使用価値」(有用性)を重視する社会へと広げていく。
こうした協働の仕組みづくりこそが「地域に根差した食と農のあり方」の基本であり、今後の「食」に求められる形なのだろう。

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