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ワクワクリベンジ読書のすすめ~『聞く技術 聞いてもらう技術』東畑開人著~

「何かあった?」と尋ねてみる。どうしてもそう言えないときには、聞いてもらうから始める。
「ちょっと聞いて」と言ってみる。今はそう言えないときには、聞くところから、始める。
*      *     *     *     *     *
この著書の結論である。前者が「聞く技術」、後者が「聞いてもらう技術」の本質であるとのこと。
なぁ~んだ、そんなことか。当たり前のことじゃないか。
そう思う人も多いと思うが、それらの言葉が的確に機能するかは別問題。結構難しいように思う。
 
内閣官房に「孤独・孤立対策担当室」が設置されているのをご存知だろうか。
個人的に地域活動に参加しているにも関わらず、まったく知らなかった。
ホームページもある。「社会的不安に寄り添い、深刻化する社会的な孤独・孤立の問題について総合的な対策を推進するための企画及び立案並びに総合調整に関する事務を処理するため、内閣府に、孤独・孤立対策推進室を設置いたしました。政府一体となって孤独・孤立問題に取り組み、より一層的確に必要とする方に支援をお届けいたします」としている。
 
つまり、今日の社会環境が対話やつながりを必要としていながらも、そういう状況にないことを国が問題視し対策をたてているということなのだろう。
著者は、これまでも臨床心理士としてマスコミから取材をうけたり、数々の投稿を通じて、対話やつながりの希薄化についてメッセージをあらわしている。
著書のなかでも、孤独や孤立についてページをさいている。興味深いのは「孤独と孤立のちがい」という章。
「週末には孤独な時間がある」と「週末になると孤立する」------。
似たような言葉。ともにひとりでいる状態。しかし著者は「孤独には安心感が、孤立には不安感がある」としている。孤独は自らひとりを選択した精神的に安定した状態、孤立はのけものにされるように結果としてひとりになってしまうという不安定な状態、とでも言おうか。
著者が「孤立しているときには話は聞けないけど、孤独になれるならば話を聞くちからが戻ってくる」とするのもなんとなく理解できる。
 
国を挙げての孤独・孤立の問題。実は対話やつながりをつくるための社会や個人のあり方といった背景を理解することが重要であり、その壁をブレークスルーするには相手を思いやる、何気ない、ごく日常的な簡単なメッセージにヒントがあると強く感じた。今後の活動の参考にしたい。

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