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ワクワクリベンジ読書のすすめ~『戦争と平和 第二部第四編』トルストイ著~

この章は、登場人物の関係性・展開の深さが特徴であると感じた。
中でも、ナターシャとマリアという二人の女性に注目してみたい。
ボリス、デニーソフをふったナターシャ。ボルコンスキイ家のアンドレイ公爵と婚約する。しかし、結婚は彼の父である老公爵の反対にあう。
 
なぜかナターシャはボルコンスキイ家の評判が悪いようだ。
老公爵は、以前、マリアとワシーリイ公爵の息子アナトーリの婚姻がもちあがった時にマリアの意志を尊重した。しかしアンドレイ公爵の場合は、「若すぎるナターシャ」「ニコーレンカを養育できるか」「アンドレイの健康上の理由」などから結婚を1年延期させた。
本音のところでは、家の格の違いが一番の原因のようだが。
ただマリアも反対しているとは意外だ。親友ジュリイ・カラーギナへの手紙でコメントしている。
(引用はじめ)
特に兄とロストフ家の末娘との結婚などといういいかげんな噂には、ほんとに驚きますわ。アンドレイがそのうちのだれかと結婚するなんて、とりわけあの娘と結婚しようなどとは、わたしには考えられませんわ。(中略)わたしの知るかぎりでは、あの娘はアンドレイ公爵の好みに合うことができるようなタイプの女ではありませんもの。アンドレイ公爵があの娘を自分の妻として選ぶとは、わたしには考えられませんし、正直に言いまして、わたしはそれを望みません。(P447)
(引用終わり)
が、マリアの考えはもっと深いところにあるようだ。老公爵がマドモアゼル・ブリエンヌとの結婚を望んだことなどもあり、結婚についてマリアが言いあらわした宗教的メッセージは実に印象深い。
(引用はじめ)
神の子、キリストが地上へおりて、現世の生活は束の間の生にすぎないと、わたしたちに言われたのだ。それなのにわたしたちはやはり現世の生活にしがみついて、その中に幸福を見いだそうと思っている。どうしてだれもそれがさとれないのか?(P451)
(引用終わり)
一方でナターシャは大人になり切れていない。時に情緒不安定で、まだまだ母親に甘えている状態である。
自立できていないお嬢様のナターシャと厳格な宗教家マリア。育ちも性格も異なっている。
今後の二人の展開に注目したい。

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