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FIP闘病記2 されど嘔吐は止まらず

保護猫団体の診療所でFIPと診断された愛猫は、その日から投薬治療を開始することになりました。
診療所で扱っている薬は、中国メーカーの未承認薬CFN。これを最短84日間に渡り投与するのです。

投薬期間の最短84日のしばりは、GS-441524 という物質を猫に注射したところ、84日以上投与を続けた猫に持続的寛解が見られたという、カリフォルニア大学デービス校のニールス・ペダーセン博士の研究に基づいています。2週間で寛解したかに見えたとしても、再発してしまうと治療はさらに困難を極めてしまいます。そこで、この論文にもとづいて、持続的寛解を目指し84日間投薬を続けるわけです。

何錠飲ませるかは症状と体重によって変わってきます。食欲不振のため体重が減少していた愛猫は、3錠+1/4錠からスタート。ちなみに当時、診療所では1錠5000円でした。ということは、1日の薬代は、1万5000円超。高額な治療費のためにクラウドファンディングを立ち上げる人が少なくないのはそのためです。
わが愛猫の治療費については、それはまた、別のお話にて。

母の葬儀を終え、身も心も疲れ果てて家に帰ってきた直後から、突然スタートしたFIP治療でしたが、開始当初の最大の難関は、治療費よりも何よりも、果たして「愛猫に投薬できるのか?」問題でした。
何を甘えたことをとお叱りを受けそうですが、投薬未経験の飼い主さんにとっては、かなりのハードルです。
愛猫をわが家に迎えて1年半、健康診断やワクチン接種のため動物病院に連れて行こうにも家中、追いかけ回して引っ掻かれ、噛まれ、オシッコをひっかけられたり大騒ぎ、挙句の果て断念して予約をキャンセルしたことも度々。セレニアとプレドニゾロンもあわせると、5錠以上飲ませなければいけないのです。夢のまた夢に思えました。
しかも、投薬は時間しばりがあります。血中濃度を一定にするため、決まった時間に投薬しなければいけないのです。わが家では外出するリスクのない朝ということで7時をお薬タイムと定めました。

開始当初は、夫と二人で行っていました。一人が確保して抱いている係、一人が口を開け飲ませる係です。確保に手こずることを考慮して、6時30分頃から開始しましたが、敵もさるもの、察知してベッドの下から出てこない。あっち行った、こっち来た、他の部屋に逃げたなどと傷だらけになりながら確保してからも、愛猫は口を引き結んでいてがんとして開けようとしない。時になだめすかし、時に泣きを入れ、やっとのことで飲ませたと思ったら吐き出されたり……。ちなみに薬を飲ませる際は、診療所でいただいたシリンジを使ってトライしていましたが、すぐに指で入れる方法に変更しました。投薬が大変で、という話をすると、メディボールのような商品を勧められるのですが、そうした類のものは、手に入れられる商品はすべて入手し試してみました。が、愛猫は想定外にかし子でありました。どれだけ偽装しても匂いを嗅いで完全スルー。そうした事情に加えて、決まった時間に何錠も飲ませなければならないことを考えると、口中に入れるのがリスクが少ないと判断し、おやつ等に忍ばせるのはやめました。

苦労した甲斐あって、愛猫は嘘のように元気になっていきました。10日後の再診では腹水は見当たらなくなり、4センチの腫瘤が3センチに! 2週間後には腫瘤わずか1センチまで小さくなったのです! 
このときは体重も5キロオーバーに。当然のごとく、薬増量です。お金がさらに飛んでくと思いましたが、正直、うれしい悲鳴でした。相変わらず投薬は大変でしたが、このまま84日を乗り切れば寛解できる!と信じていましたから。そこに微塵の疑いもありませんでした。
84日の治療期間の折り返し地点を過ぎたある日、再び嘔吐したのです。
食欲も落ちていき不安を抱き診療所へ。
血液検査では、4.62まで下がっていた炎症マーカーは、再び22.2まで上昇していました。ですが、超音波検査で想定外の結果が出たのです。

腫瘤が目視できないほど小さくなっているというのです! 

ということは、薬は効いているということ? 
では、なぜ嘔吐と食欲不振が起きているのか? なぜ炎症マーカーは上がっているのか?
薬の耐性ができたのかもしれませんという説明を受け、メロンSという薬に変更することになりました。
これも中国産の未承認薬です。カプセル薬のこの薬は、かなり苦味が強いようで、夫が投薬した際、愛猫は泡をふいてしまいました。ショックを受けた夫は、俺にはもう無理と、投薬から手を引いてしまい、愛猫の投薬がわたしの担当となったきっかけを作った薬でもあります。
しかしメロンに換えても嘔吐はおさまらなかったのです。加えて激しい水下痢まで起こすようになりました。
結局、メロンSもあわないということで、CFNに戻すことに。しかも、1錠の増量し、日に4錠1/2を投与することになりました。

それでも嘔吐は止まらなかったのです。
この時期は、薬を飲ませた後に嘔吐してしまうこともしばしばでした。30分以内であれば同じ量の薬を再投与しなければなりません。30分以上経過していたら半量、1時間以上経過していたら問題なし。この頃は、薬を飲ませた後も1時間はついていなければならず、いっ時たりとも目が離せなせませんでした。これはおかしいと思い、診療所に指示を仰いだところ、かかりつけ医のもとで吐き気どめの注射を打ってもらってくださいとのこと。そこで訪れたかかりつけ医のもとで衝撃の事実が発覚したのでした。

腫瘤が、治療開当初の3センチという大きさで見つかったのです。

診療所の超音波検査で腫瘤は消えていますと診断を受けてから、1週間後のことです。

消失していた腫瘤が、1週間で元の大きさに戻ったのか? 
それとも………?  それはまた、別のお話。


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