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卓球ラケット工場で働く私たちが多摩の森で学んだこと 【#2多摩の森で私たちが五感で得たこと】

こんにちは。広報のツザキです。

前回の「#1 多摩の森に私たちが行った理由」に続き、
今回お届けするのは「#2 多摩の森で私たちが五感で得たこと」です。

▼前回記事はこちら▼

バタフライのスタッフ用にカスタマイズしていただいた「森林エコツアー」に参加し、そこで五感を通してラケット生産部の皆さんが得たものとはいったい何だったのでしょうか。

前回に引き続き、イベントを企画したラケット生産部ラケット加工課ブレード加工係の施 宇哲(し うてつ)さんのインタビューをお届けします。

毎日4時台に起きてパーソナルトレーニングに励む施さん。最近リニューアルされた食堂では毎日資質カットのために麺類をオーダーするそう。

この「木」はどこから生まれてくるの?

ツザキ 実際に行われた「森林エコツアー」の内容はどのようなものでしたか?

 森林探索に行く前に、私たちのもとに日々届いている木材がどういう工程を経て届いているかを理解するため、まずは1時間ほど講義をしていただきました。


輪切りの木材を見せながら、タマス版の講義をしてくださる先生

講義では、木材にも様々な定義があり、節や線があると価値が下がるなど明確なレベル分けがあることを伺いました。真っ白な木材は、貴重でなかなか取れないこと、そしてバタフライのラケットのほとんどが、その貴重な木材を使用していることを改めて知りました。

講義を受けた後は森の探索に行きました。バタフライのメンバーも伐採の体験をしたのですが、行ってみると車やトラックでは登れない場所にあるんです。そこも、林業・森林関係者の方がいかに大変なのかを感じる場面でした。

6月の暑い日、虫や枝除けのために長袖で歩いていく山道はとても暑かったそう

ツザキ 施さんも伐採体験をしたんですか?

 私も体験をさせていただいたのですが、ものすごく大変。最新設備があれば楽になるという話でもなく、やはり手作業が基本でした。1本の木を伐採するためにかかる労力の大きさを実感しました。


多摩の森で実感した「林業の過酷さ」


ツザキ
 伐採にはやはり体力が必要なのでしょうか?

 最初はのこぎりで切りましたが、どうやってものこぎりが動かない。そこで、斧も使いましたがそれもだめ。重労働でした。しかも、切るだけではなく、どっちに木が倒れるかも考えて誘導する必要がありました。

ツザキ 施さんのフィジカルの強さでも…それは大変です。木の倒れる方向も重要なんですか?

 正しい方へ誘導しなければ、周りの木に邪魔をされて倒れないこともありますし、倒してはいけない木に寄りかかってしまい、その木がダメージを受けて枯れてしまうこともある。木が枯れると、養分がその木に取られて周りの木にも影響が出るため、倒れる方向も大切なポイントになるそうです。

周りの木を痛めないようにロープで支えて誘導しながら切ります。たくさんあるように見えても、1本1本を大切にするからこそのひと手間ですね。

参加メンバーで力を合わせて1本の木を伐採しましたが、伐り終える頃には午前中が終わっていました。そこから木を原木市場に移動したのですが……

私自身は「こんなに大変な作業で、危険だし苦労して木だから相当高い金額なのでは」と感じましたし、ラケットに使用できるきれいな部分はかなり少ないものの、それでも価値はあると思いましたが、1本のお値段は3,600円。

これは参加メンバー全員にとって驚愕の事実でした。

バタフライにはラケット用の木材仕入れを担当するスタッフもいますが、それ以外のメンバーにとってはこのようにたくさんの木材が置かれている場所は新鮮に映ったようです。


そして芽生える「より、ていねいに」の思い


ツザキ かかっている労力を考えると確かに驚愕ですね。

 もちろん付加価値がついた最終製品になることで、市場価格が高まります。ですが、私たちが高品質な製品を届けるためには、第一次産業の林業の方の存在が欠かせません。それに対する理解を持った上で、ラケット生産に携わる私たちが「貴重な原料を使っている」ことを認識する重要性を感じました。

ツザキ 現状ではその「貴重な材料をつかっている」という認識はラケット生産のスタッフ内ではどれくらい広まっていると感じますか?

 私の感覚では、貴重な原料を使っているという認識を持っている人は少ないのではと感じています。

長く務めている方はこれまでの経験から得た様々な知識もあり、木材の特性を理解していますが、いまはラケットの生産も作業が細分化されています。前工程からきたものを、自身の担当部分の加工をして、次の工程に送る業務がメインのため、目の前の担当作業だけで自分の仕事は完結してしまいます。

目の前にきたそのラケットが一見すると不良品でも、「この木は貴重な材料だから何とかして活かせないか」という視点が必要なのでは、と今回の「森林エコツアー」を通して感じました。その視点があれば、例え自分にはできなくても、「これはどうにか生かせないでしょうか?」と周りに聞くことができます。

ツザキ その情報を積み重ねることで、「この場合は次の工程で対応ができる」という風に経験値がアップされ、分かるようになりますね。

 例えばですが、「この材料はとても貴重なもの」ということを知っているだけで、ていねいに扱うことに繋がるかもしれません。すると、ただ作業をする、早く修理をするだけの時と比べて扱い方に差が出てくるのではないでしょうか。

ツザキ 木と特性で不良になるものもあるけれど、そもそも貴重な材料であるという前提で取り扱うことが必要ですね。

 「無限に材料があるとか、無限に次のラケットが前工程から流れてくるから雑な扱いで良い」という発想にならない工夫も必要だと思っています。流れや工程を理解することは、ラケットの質を高めること、保つことにも繋がると思っています。そして、ていねいに扱うという心がけによって、作業のクオリティが上がっていくことに繋がるのではないかとも感じました。

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私たちが多摩の森で五感で感じたこと。

日々当たり前として受け取っていた木材は、決して当たり前ではないということ。

そして危険を伴う過酷な労働環境にある、林業の現状も知ることができました。


林業の現状を知ることができた「私たちの次のステップ」とは。
そして、実際に森林エコツアーで得たことを何に繋げていくのか。

次回は「多摩の森と私たちのこれから」をお届け予定です。

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