赤と黒の話

月組 御園座公演「赤と黒」
公演期間:2020年2月10日〜3月4日
(※2月29日~3月4日の公演は中止)

宝塚歌劇が御園座で公演するのは初めて…かな。(ちょっと自信ない…数十年振り?確か初日ご挨拶では初めてと言っていたような…)
御園座がある愛知県はトップスター(当時)珠城りょうさんの地元であり、凱旋公演でもある。

しかしながら、アレの影響で2月29日〜3月4日の公演が中止となり、千秋楽を迎えぬまま公演終了となってしまった。


ミュージカル・ロマン
『赤と黒』 -原作 スタンダール-
脚本/柴田 侑宏
演出/中村 暁

フランスの文豪スタンダールの長編小説「赤と黒」を原作に、柴田侑宏が書き下ろしたドラマティックなミュージカル作品。1975年月組・大滝子主演で『恋こそ我がいのち』(東京公演より『赤と黒』)として初演、1989年には月組・涼風真世主演のバウホール公演として改編を行い、2008年には星組・安蘭けい主演のシアター・ドラマシティ公演として再演され、いずれも好評を博しました。ナポレオン失脚後の復古王政下のフランスを舞台に、恋と野望に彩られたジュリアン・ソレルの波瀾の人生を描いた物語が、月組トップコンビのために新たに追加されたフィナーレとともに、2年ぶりの名古屋での公演として、装い新たな御園座の舞台に鮮やかに甦ります。
(宝塚歌劇公式HPより引用)


主人公のジュリアン・ソレル(珠城りょう)は、ベリエールの田舎町の貧しい材木屋の家に生まれるが、貧しさと家業を心底嫌っている。野心家の彼は僧侶となり成功を収めパリに行く為、ラテン語をマスターする。ナポレオンを尊敬するが、王政復古の今のフランスでそれ言うとヤバい人認定されちゃうので、人には言えない。
プライドが高く自信家で、出世欲の強い拗らせた青年。
平たく言うと、超めんどくさい人。相手の行動や言動を深読みしすぎて「なぜそう捉える」「違うそうじゃない」「考えすぎ〜」と思わずツッコミたくなるが、彼は世の女性を虜にするほどの麗しき美青年。ジュリアンと関わる女性はもれなく彼に惹かれてしまう。

では、ジュリアンの危うさと美貌の虜になってしまった女性たちを紹介する。


・①ルイーズ・レナール(美園さくら)
レナール町長(輝月ゆうま)夫人。3人の息子がいる。
温室育ちなお嬢様で、今まで恋らしい恋をしたことがないまま結婚した。夫に対しても、家族として息子達の父として大切な存在だが、おそらく恋心を抱いたことはないのだろう。家庭を大事にし、子供達に愛情を注ぐ、貞淑な女性。
夫と見栄の張り合いを続ける助役のヴァルノ(千海華蘭)から長年言い寄られているが、相手にしない。

シェラン司祭(颯希有翔)の紹介で、ジュリアンが息子達のラテン語の家庭教師としてレナール家にやってきたことで2人は出会う。
ルイーズは、若く初々しいのに学があり、子供達にも優しく接してくれるジュリアンが来てくれたことを、嬉しく思う。
レナール家の毎年恒例の避暑地への滞在にジュリアンも同行したことで、2人の関係が変わる。
滞在先でふとしたときに、ジュリアンはルイーズの手をたまたま触れてしまうが(事故タッチ)、すでにジュリアンを意識していたルイーズは驚きと恥ずかしさで思わず手を避けてしまう。ジュリアンはその行動が馬鹿にされたと勘違いし(拗らせ…)、「手を握ることが俺の義務」とよく分かんない解釈で、ルイーズを自分の物にしようと誘惑する。
ルイーズはジュリアンへの恋心を自覚し、2人はs…関係を持つ。(オペラが一斉に上がる)
ジュリアンも最初は歪んだ気持ちで近付いたが、次第にルイーズにのめり込んでいく。
しかし、夫に関係がバレてしまい、ジュリアンはレナール家を追い出されることとなり、2人の関係も終わる。

ジュリアンが出て行きしばらく体調を崩すが、回復後は懺悔するかのように足繁く教会に通う。
しばらくして、パリのラ・モール公爵(一樹千尋)からジュリアンの行状についての問い合わせの文が届き、公爵の娘マチルド(天紫珠李)とジュリアンが結婚することを知る。
ルイーズは、フリレール副司教(蒼真せれん)とラパン神父(空城ゆう)にジュリアンとの関係を持ち出され、「女性を誘惑し財産を奪う恐ろしい人」と返事を書くように脅される。
ルイーズの返事により結婚は白紙。許せないジュリアンは、ベリエールに戻り教会に現れたルイーズを銃で打つ。

さくらルイーズかなり好きです。母性溢れる母親役がこんなにも似合うとは。さくらちゃんの母性で珠城さんを包み込んでいた。「世界の旦那珠城りょう」相手に包容力溢れ出ていた。さくらちゃんすげーや。
例の一斉にオペラ上がるシーンで、珠ジュリアンがさくらルイーズを怯えた子犬(ここは大型犬じゃない)のような目で見上げる瞬間が、母に甘える子供のようで、ジュリアンはルイーズに母の面影を感じたりしたのかな、と妄想。ジュリアンの母が生きているかどうか分からないけれど。そんな妄想が広がった。
ルイーズがナポレオンに嫉妬しちゃう所は、ジュリアンとしては、ナポレオンを尊敬していることを伝えても、拒まれずに受け入れてもらえたことが嬉しかったのかな。ありのままの自分を受け入れてもらえたような。これまでジュリアンは、フーケ(月城かなと)以外には心を許してこず、周りは敵だらけと心閉ざしてきたけれど、ルイーズの前ではそんな必要はなくて心安らげる。(あくまで妄想)
ジュリアンはルイーズを信頼していて、自分を陥れるようなことはしない人だと思っていた。(これも妄想)なのに手紙を読んで裏切られたと思い、許せなくてあんなことしちゃったのかな。


・②マチルド(天紫珠李)
パリの大貴族ラ・モール公爵(一樹千尋)の娘。ノルベール伯爵(夢奈瑠音)の妹。
宮廷一の貴公子クロワズノワ侯爵(蓮つかさ)と婚約中。
名声も財産も美貌も若さも全て持ち合わせた、社交界の華。気が強く、憧れを抱く先祖の命日に喪服を着る変わり者。

レナール家を出たジュリアンは、神学校で勉強に励むが、派閥争いに巻き込まれ出て行くことに。ジュリアンと共に神学校を出たピラール神父(夏美よう)の紹介で、パリのラ・モール公爵の秘書として働くことになる。パリはジュリアンが目標としていた地。そこで公爵の娘マチルドと出会う。

このマチルドもなかなか歪んだお考えのお嬢様で…ある意味ジュリアンと似たもの同士でお似合いだったのかもしれない。
側から見れば、世の女性達が欲しがる物、全てを手に入れた恵まれた人だが、退屈で幸せを感じられない。
マチルドが先祖のため喪に服す理由は、国王を救おうとするも失敗し処刑された先祖の首を、恋人が墓地まで運び自ら葬った話が好きだから。勇敢さと情熱に憧れを抱いている。
どこか危険な香りのするジュリアンと出会い、彼とならそんな情熱的な恋ができるかもしれないと思うようになる。
ジュリアンも相変わらず拗らせているから、マチルドから好意を寄せられても「身分の低い俺を揶揄っているのか」「それとも本気か?」「なら俺はあの婚約者と肩を並べているのか!」と違う意味で喜ぶ。プライドと野心の塊だから。
いよいよs…事に至るわけだが、この時の珠城さんの表情が「手に入れたぜ」って顔をするんだけど、もう最高で…みんな見て。
ジュリアンついに最高級のパリジェンヌを手に入れたが、事後マチルドは「なんか思ってたのと違う」とヒドい感想で、ジュリアンは逆に「抱いたら愛しく思えてきた」とこちらもまあまあヒドいが、初めてマチルドに好意を抱くようになる。
しかしマチルドは「一度抱いたからといって調子に乗るな」「後悔」「退屈」「誰でもよかった」とこれでもかと攻撃し、ジュリアン激オコ。

ジュリアンは再びマチルドの気持ちを振り向かせるため、53通りのラブレターサンプルを持ち15歳から恋の勉強をしているいわば恋の専門家コラゾフ公爵(月城かなと)に相談し(この時のジュリアンは超素直)、言われた通り実行する。成功はするが、マチルドはジュリアンに傷付けられた怒りで罵りが止まらない。
「厚顔無恥」「やはり血は争えない」そして名言「下衆は下衆だわ!」
ジュリアン大激怒。近くの剣でマチルドを刺そうとする。(じゅりちゃん珠城さんを思いっきり罵ってくれてありがとう)
マチルドは、恋人に殺されかけた今の状況が、憧れの先祖のように情熱的な恋をしていると感動し、ジュリアンにプロポーズをする。ジュリアンは、マチルドが本気で望んでいると分かり、受け入れる。(なんて激しい仲直り)
マチルドは、ジュリアンの子を身籠もり、父ラ・モール公爵も2人の結婚を認めようと前向きに動いていたが、レナール夫人から文が届き…。

じゅりちゃんマチルド、狂気を凄く感じた。良かった。珠ジュリアンと対等に戦っていた。(戦うなんて表現ヘンだけど、でも戦っていた)
マチルドとの恋は、ルイーズの時とは全く違う。
マチルドが憧れるのは、命の危険と隣り合わせな、スリリングで情熱的な恋。恋に恋しているところがあると思う(クレイジーな恋だけど)。ジュリアンに好意を寄せたのも、純粋に好きになったというより、自分が憧れる恋をこの人なら叶えてくれそうと、要するに条件に一致したから、と私は捉えた。「思ってたんとちゃう」と冷めかけたこともあったけれど、ジュリアンに剣を向けられた瞬間、「まさにスリリングで情熱的な恋をしているじゃないか私」と自分に酔う。ジュリアンの死刑執行後、生首を抱えて墓地まで運んだら、思い描いた恋の完結を迎える。常人には理解し難いけれど、マチルドなりの真剣な恋だったのかな。
ジュリアンは、最初は貴族と肩を並べたことに喜びを感じていたけれど、マチルドの激しさに触れて、愛おしくなったのかな。
ルイーズは「包み込む愛」で、マチルドは「激しい愛」だった気がする。


・③エリザ(きよら羽龍)
レナール家の使用人。共に働く下男のサン・ジャン(大楠てら)に言い寄られている。
レナール家にやってきたジュリアンに恋をする。(美青年だしラテン語堪能だしね)
叔母の遺産を持参金にジュリアンと結婚したいと司祭様に伝えたが、ジュリアンからはっきり"嫌だ"と断られてしまう。悲しみに暮れるエリザは避暑地へ同行した際、ルイーズに「奥様からもう一度話してほしい」とお願いし了承してもらえたが、ジュリアンとのお戯れを目撃してしまい、激オコ。
腹の虫が治らないエリザは、レナール町長と敵対するヴァルノ(千海華蘭)に告げ口して、2人の仲を引き裂こうとする。

エリザは気が強い。ジュリアンに惚れたのも、見た目とラテン語ができるから。自分のご主人であるルイーズに、ジュリアンとの仲を取り持つようにお願いするのも、強くないとできないと思う。お願いしたはずなのに裏切られて、これまたご主人の町長と因縁のあるヴァルノにチクるとは、エリザを敵に回すと怖い。
お羽ちゃんはかわいかったよ。声が通るよね。


・④フェルバック元帥夫人(結愛かれん)
マチルドの友人。未亡人。
恋の専門家コラゾフ公爵(月城かなと)に言われた事を実行するため、ジュリアンがターゲットにした女性。
マチルドが見ている前で夫人を誘惑し、コラゾフ公爵直伝のラブレターのやり取りを重ねる。(サンプル通り書くジュリアンを想像すると萌える)

ジュリアンにいいように利用されただけなので、かわいそうに思えるが、夫人自身も恋の駆け引きを楽しんでいるようにも思える。大人の余裕を感じる。
またゆいちゃんが色っぽくて、声も艶やかで。
さすが俺達の結愛かれん。

・(番外編)マリアンヌ(羽音みか)
ラ・モール公爵家の使用人。ジュリアンを気に入ったのだろう、お世話がしたくて「お困りのことはないですか♡」と健気に何度も尋ねるが、「別に」「特に何も」(昔どこかで聞いたことあるな…)と毎度素気なく返事をされてしまう。


ベリエールの人たち。

・フーケ(月城かなと)※2役
ジュリアンの唯一の友人。彼もジュリアンと同じく材木屋の息子だが、家業を継いで誇りを持って仕事をしている。信頼するジュリアンに「一緒に働かないか」と何度も誘うが、ジュリアンは材木屋を毛嫌いしているのでいつも断られる。(フーケ…どんまい)ジュリアンもフーケの前では、本来の自分のまま接することのできる心許せる友人。ジュリアンがナポレオンを崇拝している事も知っている。ジュリアンに何かあった時は、いつも駆けつけて助けようとする、友達思いで心優しい青年。

れいこフーケが可愛くて。なんでフーケとジュリアンは友達なんだろう。確かナウオンで、れいこちゃんが「小さい頃イジメられてる所をジュリアンに助けてもらったから」みたいな事を言っていたけど、本当にそんなキッカケだったのかなと思える。だってあのジュリアンだよ?神学校の門番(瑠皇りあ)とのコインのやり取りは楽しい。れいこちゃんはクスッと笑わせるお芝居がお上手。るおりあくんも上手だった。
監獄の場面はフーケとジュリアンの友情を感じるから、切ない。「お前のナポレオンは元気かい?」にフーケの優しさが詰まっている気がする。れいこちゃんの言い方が優しいから、余計に胸にくる。
ジュリアンがフーケに「お前は最期までいい友達だったなあ」と言うのが、切ない。


・ヴァルノ(千海華蘭)
助役。レナール町長(輝月ゆうま)と見栄の張り合いをする。町長夫人のルイーズに長年言い寄るが、相手にされない。レナール家の使用人エリザ(きよら羽龍)から、ジュリアンとルイーズの関係を聞き、ジュリアンを恨む。
この件で町長に恥をかかせようと、エリザを使い2人の関係を町長に知らせる。
ジュリアンの裁判では陪審員長を務め、陪審の評決は友罪と下す。この評決が出たことにより、ジュリアンに死刑判決を下される。

名役者その①。からん先輩はお芝居のプロ。"ノルマンディー種の馬争い"(笑)の勝ち誇ったいやらしい笑い方が堪らない。あからさまな嫌みにならない程度に見せる表情の塩梅や、適度に見せる企んでいそうな目線が素晴らしい。


・レナール町長(輝月ゆうま)
ルイーズの夫。助役のヴァルノが町長である自分と張り合おうとするのが気に入らない。子供達にラテン語の家庭教師をつける為、シェラン司祭(颯希有翔)に相談し、ジュリアンを紹介される。
ルイーズとジュリアンの関係を知り「そんな馬鹿な馬鹿な」と取り乱す。

名役者その②。なんであんなにお芝居が上手なんだろう、と毎度唸ってしまう。"ノルマンディー種の馬争い"に負けたまゆぽん必見。ヴァルノに先を越されて悔しくてしょうがないのに、奥方達の前で取り乱す訳にはいかず堪えた表情が最高。
町長はヴァルノとの見栄の張り合いに忙しいから、ルイーズがジュリアンと関係を持っても全く気付かない。
ところで「そんな馬鹿な馬鹿な」ソングの配信はまだですか?約2年ずっと待っているんですが。


・デルヴィール夫人(晴音アキ)
ルイーズの少女時代からの友人。観察力が鋭い。知的で凛とした女性。レナール家の避暑地滞在に毎年同行する。いち早くルイーズとジュリアンの関係に気付き、ルイーズの為ジュリアンに「あの人を破滅させないで」と忠告する。

名役者その③。はーちゃん安定のお芝居。ルイーズやジュリアンに鋭く意見を伝える姿が美しい。ジュリアンに忠告する歌、素人ながら音域が↑↓広くて難しいと思うけど、さすがのお上手さ。「いえ、結構」の言い方が、好き。


・シェラン司祭(颯希有翔)
ジュリアンにラテン語を教えた師匠。気難しい性格を理解した上で、ジュリアンのことを気にかける。
レナール町長にラテン語の家庭教師としてジュリアンを紹介する。ジュリアンとルイーズの関係を町長から聞き、レナール家を出てブザンソンの神学校へ行くよう促す。

この作品では、つっちーの美声を聴く機会がなくて残念だったが、台詞の声は相変わらず聞いてて気持ちが良い。


・フリレール副司教(蒼真せれん)
ベリエールで実権を握っている。ブザンソンの神学校にも権力が及び、校長のピラール神父(夏美よう)と対立。神父と、彼の愛弟子ジュリアンを追い出そうと不正を働く。パリのラ・モール公爵(一樹千尋)から、土地についての訴訟を起こされる。
ルイーズ宛に、ラ・モール公爵からジュリアンの行状問い合わせの文が届くと、悪く書くようルイーズを脅す。
ヴァルノ(千海華蘭)とも繋がりがあり、ジュリアンの裁判で有罪になるよう裏で動いたと思われる。

フリレール凄いな。出番は一場面だけなのに、名前は各場面で頻繁に登場する。しかも全て悪い話題で。この作品の一番の悪役。


レナール町長とルイーズのかわいい息子達。

・アドルフ(夏風季々) しっかり者の長男。
・ミリアム(美海そら) 神経質な次男。
・スタニスラス(白河りり) 無邪気な三男。

3人ともやんちゃで、使用人エリザ(きよら羽龍)を困らせる。家庭教師の先生が、毛むくじゃらで怖い先生だったらどうしようと心配するが、ジュリアンを見て若くて優しそうと安心する。

娘役の子役ってかわいい。とにかくかわいい。
「先生も可愛いです」←この台詞が最高に可愛いです。
ジュリアンも子供達のことは可愛がっていたんじゃないのかな。


パリの貴族たち。(貴族じゃない人も混ざっています)

・コラゾフ公爵(月城かなと)※2役
ロシアの貴族でハンサムガイ。(俊藤さんではない)
連隊屈指の剣の使い手。ジュリアンが剣の稽古を始めたと聞き「今度お手合わせを」と揶揄うが、動じない様子を見て面白がる。
色事師で恋の専門家。53通りのラブレターサンプルの持ち主。(←笑うとこ@からん先輩)
マチルドを思い通りにできず悩んでいるジュリアンに、恋のアドバイスをする。

れいこコラゾフが格好良すぎる。まずビジュアルが良い。れいこちゃんは軍服もお似合い。
フーケとコラゾフ公爵の演じ分けが素晴らしい。雰囲気も、仕草も、声も、全てが違う。


・ラ・モール公爵(一樹千尋)
パリの大貴族。後に大臣に就任する。ノルベール伯爵(夢奈瑠音)とマチルドの父。
ピラール神父(夏美よう)の紹介で、ジュリアンを自分の秘書にする。有能で気位の高いジュリアンを気に入る。
フリレール副司教(蒼真せれん)に土地についての訴訟を起こし、ジュリアンも手伝う。
ジュリアンと娘のマチルドが恋仲と気付き、2人の結婚を認めようと、ジュリアンに貴族の爵位と軍の中尉の職を用意するが、レナール夫人からの文により白紙にする。

ヒロさんは流石のお芝居で平伏すしかない。特に、レナール夫人からの手紙の場面は圧巻。


・ピラール神父(夏美よう)
ブザンソンの神学校の校長。優秀なジュリアンを高く買っており、才能を伸ばすべく力を入れて教育する。フリレール副司教(蒼真せれん)の策略により、愛弟子であるジュリアンと共に神学校から去り、ラ・モール公爵の招きでパリへ行く。

はっちさんも素晴らしい。レナール夫人からの(残酷な)手紙を読み上げる前、(…これを…これを…ジュリアンに…私の口から…伝えるのか…)というような、ワナワナ震えるような表情をされるところが、特に素晴らしい。


・ノルベール・ドゥ・ラ・モール伯爵(夢奈瑠音)
ラ・モール公爵(一樹千尋)の息子。マチルドの兄。公爵家の跡継ぎ。父の秘書ジュリアンを有能で使える人と評価はしているが、妹マチルドには、冗談なのか本気なのか分からないが、「あの男は怖いぞ」と伝える。

るねちゃんの軍服めちゃ格好良い。貴公子でしかない。これからもいっぱい着てほしい。いつか白軍服が見たい。王子役も見たいな、と期待が膨らむ。


・クロワズノワ侯爵(蓮つかさ)
マチルドの婚約者。家柄も財産も共に宮廷一の貴公子。
周りから結婚はいつなのかと期待されている。

れんこんはナウオンで「こんなに娘役に囲まれたことがないから(慣れない)」的なことを言っていたけど、いやいや、貴公子の余裕を感じる佇まいだった。れんこんの声は台詞が聞き取りやすい。台詞明確選手権トップ3に入ると思っている。


・ナピエ大司教(周旺真広)
パリの大司教。ラ・モール公爵(一樹千尋)との繋がりが太いのか、公爵が大臣に就任したことを「この日を待っていた」と喜ぶ。

かなみんはこの公演でご卒業。千秋楽を迎えることが出来なくて私達も悔しかったが、かなみん自身が一番悔しかったと思う。あれから約2年、お元気ですか?
お芝居が上手で、特に歌が素晴らしくて、存在感のある男役さんだった。この大司教役も権威のある落ち着いたお芝居で良かった。


・ラ・ジュマート男爵(礼華はる)
パリの貴族。(これ以上情報がないの…)

ぱるくんまだ新人公演主演する前だったけど、これからどんどん注目される存在になるんだろうな、という予感はあったかな。この時はお顔立ちやお化粧が初々しい。今では新公主演も務めて、更に洗練されて格好良くなった。これからますます楽しみ。


改めて、ジュリアン・ソレルを演じた珠城りょうさんについて。

まず足の長さに慄く。とんでもない等身バランス。
この作品は珠城さんのシャツイチをたくさん拝めるところが素晴らしい。珠さまのシャツイチは絶景。
シャツイチだからより際立つ珠さまのボディを堪能。広い肩幅、厚い胸板、あなたの胸に飛び込みたい。

珠城さんの巷のイメージは陽キャラで、もちろん陽のお役も似合うが、「月雲の皇子」の2幕の木梨や「Bandito」や「激情」のホセが好きな私は、陰のあるジュリアンも似合うと思っていた。
実際ピッタリだった。なんで珠城さんは陰のあるお役が似合うのだろう。自分の性癖にぶっ刺さってるだけ?確かに刺さりまくったが。

珠城さんの冷たい目線が堪らない。今回一番好きなのは、ルイーズに銃を向ける場面。あの鋭い目線がマジで堪らない。ちなみにお稽古風景のこの場面が、スーパー神アングル。まるで自分が狙われてるみたい。素化粧でのあの鋭い目線がもう…心臓止まりそう。
珠城さんはお芝居の人と思っていて、特に抑えた芝居の声が自然で引き込まれる。劇中披露されるラテン語の発音が上手い。(ラテン語知らんけど)

例のオペラが一斉に上がるあの場面。ルイーズを自分の物にしようと誘惑するシーン。まずルイーズの手首から腕にキスを這わせる所からもうヤバい。それからやたら首元にキスをするの。で、耳元で囁くの。これだけで鼻血出そう。次の場面の本番(笑)はR18だね。子供は見たらあかんヤツ。珠さまのラブシーンはなぜあんなに生々しいんだろう。大変けしからん場面でした。ありがとうございました。さくらちゃんよく耐えたね。


フィナーレ。

このフィナーレが大大大好き。「赤と黒」の世界観を残したクラシカルで大人な雰囲気だが、洗練された都会的な雰囲気もある。5組のダンス、娘役群舞、男役群舞はヤンさん振付。ヤンさんの振付は「ここ好き!」と思うポイントが多い。ヅカオタのツボを知り尽くしている。デュエットダンスは羽山先生振付。羽山先生の振付は素敵なこと間違いなし。

・れいこちゃんの歌唱指導。
れいこちゃん安定の歌声。声量があって、伸びやかな歌声。

・5組のダンス。
からん先輩(千海華蘭)・ゆいちゃん(結愛かれん)
るねちゃん(夢奈瑠音)・はーちゃん(晴音アキ)
れんこん(蓮つかさ)・お羽ちゃん(きよら羽龍)
ぱるくん(礼華はる)・りりちゃん(白河りり)
まゆぽん(輝月ゆうま)・じゅりちゃん(天紫珠李)

「赤と黒」の世界観そのままな、男女の美しいダンス。キスする振付もあって大人な雰囲気。まゆぽんとじゅりちゃんカップルが真ん中。まゆぽんが真ん中とか嬉しすぎる。ゆいちゃんがからん先輩の肩に足を乗せてポーズを取る姿が美しい。お羽ちゃんの踊りはキレキレ。リフトもあり見応え抜群。どのカップルも見たいから目が足りない。

・娘役群舞。
ヤンさん振付の淑女達のダンス。さくらちゃんが娘役を引き連れて踊る。さくらちゃんのお衣装は黒色で髪型も含めて大人っぽいので、まるでルイーズが踊っているみたい。スカート捌きが美しい。ゆいちゃんとお羽ちゃんはキレキレだから目立つ。さくらちゃんの最後のポーズが美しい。

・男役群舞。(※大大大好きな群舞)
ヤンさん振付(素敵な振付ありがとうございます)。黒燕尾だけど、ロック調の音楽でキレキレに踊りまくる。珠城さんはセリ上がりで登場。←この珠城さんが鬼カッコイイ。後ろ向きでセリ上がるけど、頭の先と手の先が見えた瞬間「もうカッコいい」となる。ホントにカッコいいの。みんな見て。4人ずつ登場するのも良い。最下級生4人登場の時だけ、掛け声出すのも良い。最後はれいこちゃん1人で登場するけど、「待った?」と言わんばかりな登場が好き。

ご卒業のかなみん(周旺真広)が、めちゃくちゃ良い表情で踊るから泣ける。卒業オーラが出てる。1人で踊る場面もあって珠城さんと握手を交わすけど、Blu-ray収録の日(中止前の公演最後の日)は、握手の後にハグするの。胸熱。

終盤一列になって踊るところも好きだし、裾を片方広げて胸板見せつける終わり方も大好き。やっぱりヤンさんの振付はヅカオタのツボを刺激しまくる。
珠城さんの黒燕尾似合いすぎ問題。たまに聞くけどマジで黒燕尾着たまま生まれてきたのかな。
群舞終わった後少しだけオマケの場面あり。このとき黒燕尾で客席降りする。(客席降りが懐かしいと感じる…)
なつこさん(夏月都)、りさちゃん(香咲蘭)、ゆきちゃん(桃歌雪)、ききちゃん(夏風季々)の娘役4名も登場して、珠城さんを盛り立てる。

・デュエットダンス。
羽山先生振付。カゲソロいちごちゃん(咲彩いちご)。アダルティで美しい大人のダンス。いちごちゃんの落ち着いた美声と、吐息のようなカゲコーラスも大人の雰囲気で素晴らしかった。たまさくのデュエダンは全部好きだけど、実はこれが一番好きかもしれない。「赤と黒」の世界観のまま、ジュリアンとルイーズが大人の恋を表現しているようで、ふたりの雰囲気に合っていた。この時のふたりが美しすぎるし、踊りも息ぴったりで、なんだか神がかってたんだよね。

実はこの公演を見たとき、珠城さんの卒業が近いのかなと思ってしまった。当時の発言からも薄々感じてはいたけれど。特に強く感じたのが、男役群舞とデュエットダンスのとき。卒業オーラじゃないけれど、それに近いものを感じてしまった。あまりにも美しいから。実際この公演から1ヶ月も経たないうちに退団発表があって、さくらちゃんまで退団発表されて、予感が当たってしまった……。(さくらちゃんは任期を考えると読めなかった)

・パレード。
りりちゃん(白河りり)エトワール。りりちゃんの癖のない澄みきった歌声が美しい。


最初に書いたが、この公演は千秋楽を迎えぬまま公演終了となってしまった。
今年に入り、星組が「王家に捧ぐ歌」を御園座で公演する予定であったが、アレの影響で初日を迎えられず、日程途中に公演を実施することとなり、先日千秋楽を迎えた。
千秋楽のご挨拶で、こっちゃん(トップスター礼真琴)が「月組が幕を開けた御園座公演を、2年越しで幕を下ろす事ができたように思う」のようなことを話してくれたと聞き、胸が熱くなった。

こっちゃんありがとう。配信見たよ。素晴らしかったよ。


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