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「絵画のドレス ドレスの絵画」展①

八王子にある東京富士美術館で、企画展「絵画のドレス ドレスの絵画」が開催されています。本展は、神戸ファッション美術館とのコラボレーション企画で、東京富士美術館が所蔵する18世紀から20世紀にかけての絵画を、“ファッション”に着目して紹介するものです。本展の見どころは、絵画とともに神戸ファッション美術館所蔵の同時代の衣装を実際に目にし、絵画を通してファッション史を学ぶことができる点にあります。

第1章 18世紀―貴族文化の興隆
展覧会は18世紀の絵画から始まります。この時代のフランスでは、17世紀後半に即位した太陽王ルイ14世による絶対王政が浸透し、ヴェルサイユ宮殿を中心に社会構造全般が整備され、煌びやかな貴族文化が花開いた時期です。ジャン=パティスト・パテルの<占い師>などと共に、ローブ・ヴォラントを実際にみることができました。ローブ・ヴォラントは、17世紀後期に部屋着から発展して流行した、ゆったりとしたガウン形式の衣装です。「ヴォラント」は「翻る」という意味のフランス語です。スカートを左右に膨らませるためのアンダースカート・パニエを着用するためするローブ・ヴォラントは、歩くとスカートが軽やかに揺れ動くため、この名がつけられました。特徴は、背にたたまれた箱ひだです。画家・ヴァトーは好んでこの部分を描いたことから、「ヴァトー・プリーツ」と呼ばれています。18世紀の衣装は、その他にも華やかな宮廷衣装のアビ・ア・ラ・フランセーズやローブ・ア・ラ・フランセーズ、英国趣味を取り入れた簡素な日常服ローブ・ア・ラングレーズなどが紹介されていました。

第2章 19世紀前半―フランス革命とナポレオンの台頭
この章では、フランス革命以後の絵画とファッションが紹介されました。絶対王権制度が終わり、市民主体の社会への変革は、ファッションにおいても大きな変化をもたらします。ナポレオン・ボナパルトによる帝政時代、フランスの王政復古、ナポレオン3世による第二帝政時代など、不安定な時代が続く中、絵画においてはジャック=ルイ・ダヴィッドらによる厳格な新古典主義絵画が広まっていきました。この時代のファッションには、古代ギリシャ・ローマ時代の影響が色濃く現れます。絢爛豪華な貴族たちの宮廷スタイルから、簡素なスタイルへ。この背景には、18世紀半の古代遺跡発掘がありました。身体が透けるほど薄い、モスリンなどの白い生地で作られたウエストの位置が高めのドレスが流行したのです。インドとの貿易で輸入されるようになったモスリンは、着心地が良いうえ洗うこともできるという実用性の高い素材で、人気が一気に高まったのです。下着のようにも見えるため、シュミーズ・ドレスと呼ばれました。コルセットやパニエを捨てた、全時代とは極めて対比的な服装が流行したのです。

展覧会では、東京富士美術館が所有するナポレオン=ボナパルト関連の絵画も多く展示され、1804年の載冠式の際に、皇帝ナポレオン1世と皇后ジョゼフィーヌが着用した大義礼服を再現した衣装も展示されていました。赤いベルベットのマント、白テンの毛皮、金糸刺繍といった伝統的な宮廷衣装の要素を取り入れた「エンパイア・スタイル」のドレスは、ダヴィッドが描いた<皇帝ナポレオン1世と皇后ジョゼフィーヌの載冠式>から抜け出したかのようなクオリティです。

長くなるので、後半は明日にします。

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