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<Amor Brasileiro>Vinicius Cantuaria

「無駄な音の無い音楽」・・・音楽をやっている人間なら誰しもが考える、理想の一つだと思います(僕だけ?)。まさにそんな音楽がこのアルバムに収録されている楽曲達。全曲を通してヴィ二シウスのギター/パーカッションとボーカルそしてNaná Vasconcelosのパーカッションだけで構成されています。ゲストとして2曲にMichael Leonhartのトランペット(5曲目の<Só Danço Samba>が良い)、そして10曲目<Minha Geisha >にArto Lindsayがギターで参加。全編無駄なく、「そこにあるべき音」だけで音楽が出来上がっています。
こう書くとなんだか硬質な、緊張感のある音楽のように感じますが、まったく逆。リラックスした、時間も場所もあやふやな(笑  静かに音楽だけが流れていきます。ヴィシウスのギターは、ほぼコードワークに徹したプレイですし、ナナ(又は本人)のパーカッションもシンプル極まりない(フィルインぽいものもほとんど無し)。ボーカルは微妙な変化はあるものの、淡々と歌われ、特に派手なハイトーンもビブラートもでてこない。乱暴にくくってしまえばJoão Gilberto系ともChet Baker系とも。
そんな音楽が続いているだけなのに「ああここでギターソロがあれば」とか微塵も浮かんできません。これはいかに完璧なバランスで成り立っているかという事だと思います。アートの「あの」ノイズギターも「ギターの傍を通った時、弦にうっかり触れてしまった」「ギターを弾こうとつかんだ時に鳴ってしまった」といった微細な音であるにもかかわらず、音楽の一部として成立しているのですから。

このアルバム、頭の1曲をかけてしまうと必ずと言っていいほど最後まで聴いてしまいます。ただ心地良いだけならそこまで惹かれることもありませんよね?そこはかとなく漂っているのです。「変態」の香りが。

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