見出し画像

「ライブ・アット・ザ 19th・モントルー・ジャズ・フェスティヴァル」ジョアン・ジルベルト

João Gilberto の音楽。
僕は彼の音楽の素晴らしさを理解するの、に少し(随分か?)時間がかかりました。初めて聞いたのはおそらくは中学3年、ラジオ番組だったと思います。この頃、ワールドミュージックなどの言葉はまだ一般的でなく、「ボサノバ」という言葉は知ってはいても要は「雰囲気」でした。フュージョンが流行りはじめていたせいもあって、リー・リトナーは「ブラジル」、渡辺貞夫は「アフリカ」の音楽を取り入れているらしい(笑 なんて知ったふうな話をしてはいましたが・・・

ジョアンの音楽は御多分にもれず<ゲッツ/ジルベルト>が初めて。
悲しいかなギター熱に浮かれ「ギターはソロやってナンボ」脳の中学生には、コードワークのみで派手なギターソロもない曲は、「スタンゲッツのサックスがうるさい」程度で(酷いなあ)、当然他の曲に興味がわくこともありませんでした。

随分経って社会人となった頃、なぜだかブラジル音楽が世の中で取り上げられる事が多くなり、ジョアンのアルバムも入手しやすくなっていました。ある日、特に期待もせずジャケ買いしたアルバムに衝撃を受けることになります。<三月の水>というそのアルバムは、ギター、ボーカルとハイハットと実にシンプルな編成。ところが聴いているうちに、簡単明瞭そうでいて複雑難解。無限ループのようでいて微妙に変化し続けるギターとボーカル。弾き語りの素朴な音楽のようでテクノっぽい妙に近未来的な響き・・と、とにかくこれまで抱いていたイメージを全てひっくり返されました。

それからすっかり彼の音楽にハマってしまう事になるのですが、このアルバムは2度目に衝撃を受けたアルバムです。
ジョアンのギタースタイル、所謂「ボサノバ」のギターは「サンバのリズムを〜」というのは本人が語ったとかどうとか。ただし知ってはいても、実はあまりピンと来ていなかった。この演奏は大観衆を前にギター1本と自身のボーカルのみ、最小単位のパフォーマンスの記録ですが、観客の歓声(いやもう煩いのなんの)、「思わず歌ってしまった」ような<フェリシダージ>の合唱。そして絶好調だったと思われるギターを聴いて、ようやくそれが、まったく突然にわかったような気がしました。
「頭をガツンとやられた」とか「目からウロコ」のようなものではなく、深く染み込んでくるもの、そう「腑に落ちる」という表現が一番ふさわしい感覚でした。
そしてなぜだか「自分は歌うことは絶対に止めにしよう」と思ったのでした。




補:アルバム紹介では、アルバムタイトル・ミュージシャン名は
   国内盤のジャケット(又は帯)の表記を使用します。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?