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せつなさと希望のがんもどき含め煮 #まいにち土鍋
「甲府い」とがんもどき
がんもどきは、じゅっとなるのが美味しい。
せつなさを吸って、希望を絞り出してくれるような。
ふと、落語「甲府い」を思い出す。紙芝居を5枚ずつ吹っ飛ばしてめくるくらいかいつまむと、甲府から江戸でひと稼ぎしたい伝吉が、つまみぐいをしてとっちめられた豆腐屋で修行するのち立派な働き者になって、娘と結婚のあいさつに甲府に帰るという話。「豆腐、ごま入り、がんもどきぃ〜」と売り歩くクセがつい出て「どこにいくのかい?」と聞かれたとき「甲府ぃ〜」と言ったとさ。まじめに働けば、一文なしにも花が咲くというようなストーリーだが、早くに親を亡くした伝吉の信心深いのに罪をおかしたせつなさと、善い人に助けられて満ちる希望にあふれる話。
がんもどきの含み煮
だし汁と、ちょっとの醤油、ちょっとのみりん、おろし生姜をたっぷり、刻み生姜も入れる。あまり甘くしないで、生姜の香りを立たせるくらいが好き。落とし蓋をしてゆっくり煮る。煮物には土鍋の蓄熱性を有効利用しよう。火を消したあともゆっくり冷めてゆくので、味がうまくしみこむ。
あとがきコッチョリーノ(おしらせ)
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▶︎窯屋さんが現調にきてくれました。つい数年前、温度調整がうまくいかなくなり窯の心臓部であるマイコンを新調しました。その時、言いにくそうに「22年経ち庫内の劣化も激しいのでそろそろ窯は寿命を迎える頃です」とおっしゃいました。▶︎独立工房で窯を設けたときは60歳定年だな!なんて冗談を言っていましたが、すぐそこにその壁が見えてくると気持ちは変わるものです。▶︎窯場は半地下のようなところにあります。窯の搬入は足場を組み吊り下げるという大変さでしたが、窯を上げるというのはさらに困難です。そして近隣にはマンションが立ちました。時代が変わったのです。どんなに便利な情報化時代になっても解決法はありません。▶︎結果、現在の窯は修理をせずに「解体」することに決まりました。実はまだ騙せば焚けるのです。まだ生きているのです。▶︎窯の重量1トン半くらいあるので、動かせるくらいにグラインダーで切り刻むそうです。せつなくてたまらなかったのですが、22年前コッチョリーノの窯をつくってくれた信楽の職人さんの甥である後継者の職人さんのおかげで、第二の窯人生を新たに送る勇気が出ました。▶︎なぜなら、その職人さんは窯のことを大事な分身であるかのように考えてくれるような「不惑」な人であり、次に進む希望まで与えてくれたからです。従って復帰まで少し時間がかかるかと思いますが、必ず今よりもよい環境で復帰しますね。(コッチョリーノ 我妻珠美)
6月9日
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