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酒造業界における玉乃光酒造の役割

京都に根付く地酒メーカーでありながら、全国のスーパー、コンビニにも流通している玉乃光酒造。

今回は、そんな玉乃光酒造だからこそ担うべき役割について改めて考えてみたので、お話します。


ナショナルブランドと地酒メーカーの違い

現在日本には、約1400の酒蔵があります。

そのうちのトップ10くらいがいわゆるナショナルブランド(NB)と呼ばれていて、全国のコンビニ・スーパーにも多く流通している酒蔵です。これらの酒蔵で市場の半分くらいを占めています。

そして、残りの99%は全て地域に根付く地酒メーカー。

もちろん通販や居酒屋への仕入れなどで地方外で出会えることもありますが、地酒メーカーのお酒の基本的な流通は各地方が中心です。


実はそんな中で、玉乃光酒造は、準ナショナルブランドと呼ばれる少し特殊な位置づけにある酒蔵。

京都に根付く地酒メーカーとして地方らしさを活かした酒造りをしながらも、トップのメーカーには遠く及ばないものの全国のスーパーやコンビニにも流通しています。

ナショナルブランドとしての一面と、地酒メーカーとしての一面を、両方持ち合わせているのです。


これは、一見ハイブリットで良いように思えますが、逆に言うと中途半端であるとも言えます。

例えば、地酒メーカーとしての位置づけであるなら、地域を代表する酒蔵として良いお酒を作りつつ、新たな挑戦をし続けることが役割になります。
日本酒業界は参入が難しいので、地域で日本酒を作っていること自体が価値になり得るからです。そして、規模が小さいと、色々なチャレンジもやりやすいからです。
世の中に広めていく、というよりは、地域のブランドとしての価値を高める、いわゆる職人さんやアーティストのような、ビジネスモデルです。

逆にナショナルブランドとしての位置づけであるなら、その認知度と規模で、とにかくたくさんのお酒を広く世の中に届けていく役割があります。

しかし、玉乃光はそのどちらか一方というわけではありません。
業界において中途半端な位置づけのままだと、いつか存在感を失ってしまう。

だからこそ、ここで一度、玉乃光酒蔵としての役割を考え直す必要がある、と思ったのです。


準ナショナルブランドとしての玉乃光酒造の役割とは

玉乃光酒造のそれぞれの特徴について、もう少し掘り下げてみます。

玉乃光酒造にある地酒メーカーらしさはなんでしょうか?

それは伝統産業としての日本酒らしさを感じられることだと思います。

玉乃光酒造には、純米酒を復活させたり、幻の酒米雄町を復活させた歴史があります。
また、伝統的に純米酒だけを作り続けてきたこだわりがあります。そして、手造りに徹した伝統産業としての技術の伝承を大切にしています。

われわれは、京都の地酒メーカーとして、古き良き日本酒を守り続けてきました。


逆に玉乃光酒造にあるナショナルブランドらしさは、小さい規模に留まらず、全国に名が届く取り組みもしているという点です。

つまり、規模はある程度ありながら、伝統を大切にしている。

そんな玉乃光酒造の役割は、「そんな古き良き日本酒の良さを世の中に届けていくこと。」なのではないか、と思いました。

市場規模が縮小し続ける日本酒業界に貢献するためには、どうしても新しい世界に手を出さないといけないのではないか、と思いがちです。

ラベルが可愛い日本酒、フルーティーで飲みやすい日本酒、アルコール度が低い日本酒、そんな新進気鋭な分野に手を出さないといけないのでは無いかと感じてしまいます。

ただ、それは、われわれの役割ではないのではないかと思うんです。

そういう革新が得意な、ある意味ベンチャー志向の酒蔵が、業界を盛り上げるために新しい取り組みをすることで、業界に新しい風を吹かせて欲しい。それは我々にはできないこと。

我々も革新的な取り組みをするべきではないかと思ったこともありました。

ただ、玉乃光の業界におけるポジションを考えたとき、われわれがやるべきことは違うのではないかと思い始めました。

我々がやるべきこと。
それは、玉乃光が伝統的に守り続けてきた古き良き日本酒の良さをただ届けていくこと。

日本酒の良さを原点に帰って伝えていくことがわれわれの役割ではないかと思うようになってきました。

新しいことをしないといけないという焦りに負けて、一番大切なことを失うのが一番良くない。
それが、準ナショナルブランドとして、伝統と規模を一定程度有する我々にしかできないことなんではないかと。

そう考えた場合、今われわれが一番考えないといけないことは、「どういう商品を作るべきか」じゃなくて、「どうやってこの想いをお客さんに届けていくか」かと思うんです。

商品自体を変えるわけではなく、お客さんへの届け方を今の時代にあった形に変えることが大切だと思っています。
例えば、熱燗。
流行りの日本酒からは少し遠い存在です。

でも、それって本当に廃れていい文化なんでしょうか?
本当に必要のないもの何でしょうか?
世界でも類を見ない温度帯で楽しめる日本酒。
これはきっと時代が変わっても、変わらない価値なんではないか。

こういうことと、とことん向き合うのが我々の仕事ではないのか。そう思うようになりました。
この価値をお客さんに届けたい。
今の時代にあった言葉で。表現で。


ナショナルブランドには、規模と経済力を背景とした発信力を生かして、日本酒を広く世の中に届けてほしい。
規模の小さい地酒メーカーには、伝統産業を背景とした日本酒に革命を起こして欲しい。

そしてその両方の一面をもつわれわれは、日本の文化としての日本酒らしさを世の中に届けていければと思っています。
一番難しい役割ではありますが、規模と伝統の両立を成し遂げたいと思います。


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