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事前イメトレ

 朝から何やらシャー、シャーと音がする。工事だろうか…とぼんやり思っていたら、今度はビーッビーッという音が。なんだか変な音だと思い窓の外を覗くとアパートの駐車場いっぱいにビニール紐とガムテープの線を引いている人がいる。


階下の住人だ。常日頃伸び伸びと暮らすご夫婦+5歳児のファミリー。自転車20台程のスペースに子どもの自転車を無造作に6台停める。原付の駐車スペースでもあるため、同じ階に住むヤンチャなお嬢様が時折、こどもの自転車に突っ込む形で原付を止めていたりする。夏には毎日駐車場でプールやBBQをする、奥さんがとても愛想のいいご家族だ。

 我が家のアパートの駐車場は非常に広く、アパートの住人だけでなく、隣の中小企業の社用車用と近くの飲食店にもスペースを貸し出している。なので知らない車の出入りの激しい駐車場だ。
 そんな駐車場にめいいっぱい紐で枠どりをし、突然枠の中をぐるぐる歩いたかと思ったら急に寝転び始めた。つくづく不思議な夫婦だと思い、なおもこっそり観察を続けていると、パパさんが何やら紙と方位磁石を手ににごにょごにょ話している。どうやら家を建てるようだ。そうと分かれば私も上からどこが玄関でどこがキッチンかと妄想をふくらませる。


 私の住む街は地価がめちゃくちゃ高い。山の上を覚悟すればそれなりなのだろうが、基本的に住む土地が少ないので家を建てるのはかなりハードルが高い。だからさぞかし楽しいだろうと思う。思うけれども…
しばらく観察していると案の定、戻ってきた社用車の運転手さんが非常に困った顔で「ここ、うちの駐車スペースなんですけど、いいですかねぇ」と申し訳なさそうに声をかけた。ご夫婦は「あ、すいませーん。いますぐ外しまーす。」と言って紐を外し、少しずらしてまた駐車場に貼っている。うーん。相も変わらずだ。


 私としては、夫がかねてから原付を買ってくれると言っているのだが、そんな駐車スペースの都合上、足踏みをしていたのだが、どうやら近い将来、原付をゲットできそうでほくほくしている。今からどこの何番目あたりに駐車するかをガムテープをはってイメトレしておかなくては。

#夢のマイホーム #イメトレ #駐車場 #公共の精神

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