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第七章 晩秋の北帰行(その1)


104 新潟→羽後本荘→奥津軽いまべつ→青森

 残すところはあと8枚となったわがまちご当地入場券。地域で言えば道南、函館本線のいわゆる山線部分と砂原線、それから道北、宗谷本線の音威子府以北、そしてシリーズ唯一の道外となる奥津軽いまべつ駅だ。単純に考えれば北東北・みなみ北海道の旅と稚内空港から往復の2つの旅とするところを、三連休(ただし金土日)のフル活用によって列車メインで北上してしまおうという、何とも効率やコストの面から見ればよろしくない旅なのであった。どうしてこうなったのかは後述する。
 三連休に入る前夜に仕事がはけたあと、夜行バスで新潟へ向かう。定時で到着して好天の朝を迎えた。この日の目標は奥津軽いまべつ駅でご当地入場券を購入することがメインで、そこまでの旅程はある意味自由だ。そこで今回は新潟から青森までの片道乗車券と羽後本荘までの特急「いなほ」の特急券、そして「えきねっとトクだ値」で確保した新青森―奥津軽いまべつの乗車券付き特急券の往復である。移動の途上で由利本荘市を走る由利高原鉄道を利用して矢島まで往復、さらに時間的余裕があれば、ではあるが男鹿線で運行を開始した蓄電池電車の乗車体験を盛り込んでみた。
 羽後本荘から鳥海山の麓を走行する由利高原鉄道は旧国鉄矢島線を第三セクターに転換した路線で、2018年には路線開業80周年を迎えた。民間社長の就任や高校生メンバーによる乾電池駆動電車の運行実験成功、有志による私設応援団の積極的な関わりなど話題に事欠かない。2018年は沿線の廃校を活用した「鳥海山 木のおもちゃ美術館」の開業にあわせて「おもちゃ列車」の導入や駅改装を実現するなど、地元を盛り上げる施策を次々と打ち出している路線である。おもちゃ美術館もおもちゃ列車も、当日は子どもたちや家族連れでなかなかの賑わいを見せていた。
 男鹿線のEV―E801系蓄電池電車「ACCUM(アキュム)」は栃木県の烏山線に続く導入で、秋田―追分―男鹿間で運行されている。上り列車のそれを迎撃すべく、秋田発の男鹿線列車の車掌に申告して追分―二田間の往復乗車券を購入すると、意図を察してもらったようで、二田駅の状況をわかりやすく教えてくれた。途中の二田駅から追分までの利用であったが、ディーゼルカーとの比較ができて興味深かった。
 追分からは快速電車で一気に北上して弘前で乗り換え、新青森には20時30分の到着。ここからが本番だ。東京を17時20分に出発した「はやぶさ33号」で一駅、15分で奥津軽いまべつ駅に向かう。改札口横のみどりの窓口でご当地入場券を首尾よく購入。そして30分ほど後にやってくる「はやて98号」でとんぼ返り。青森着は21時59分であった。新潟から13時間半を超える、壮大な前哨戦はこうして終わった。

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