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【百線一抄】004■尽きることなき美景を背にー東海道本線(東海エリア)

たなびく雲を頂がつんざき、どっしりと構える富士の山。車窓の醍
醐味としてその美しさとたくましさに、旅人の歓声が飛び交う車内
の様相は、いつの時代も変わらないといっていいだろう。頭を雲の
上に出し、四方の山を見下ろす日本一の山、富士山を車窓から眺め
られる路線は数あれど、やはり大幹線である東海道本線を外すわけ
にはいかない。実際にかなりの時間、楽しむことができる路線だ。

鰻で有名な浜松を出発して東に歩を進めると、1時間も乗り進むう
ちに焼津に到着する。静岡までは10数分という所にきたところで
意外に思うかもしれないが、実はこの先から富士山が見えてくる。
できれば先頭の車両に乗って、運転席に近い場所を確保しておくと
天気のよい日であれば前方や進行方向右側に、少し小さい富士山を
見ることができる。東を向いて進行方向右側だと海側では?と思わ
れるかもしれないが、静岡を過ぎて清水あたりまでは海側で見える
場面に時々出くわす。地図で確認してもわかりにくいのが難点だ。

清水を過ぎ蒲原を出ると、富士川越えと富士市街地へ向かうべく針
路をグッと北へ向ける。新幹線の下をくぐり、さらに北へ進むとま
た富士山が大きく見えるようになる。富士川を渡る時は山側の前方
へ目を向ければよく見えるが、車内で写真を撮るならば、上り列車
の乗車中に狙うとよい。鉄橋のトラスがない分だけ綺麗に撮れる。

富士駅を過ぎても見えどころはまだまだある。住居が増えてきて瞬
時に見どころを捉えるのは少し難しくなってくるが、吉原、東田子
の浦、原とそれぞれの駅間や駅の周辺で見つけられる。原駅を過ぎ
たら少しずつ頭だけしか見えなくなってくるが、沼津を過ぎると、
かなり小さくなった富士山が進行方向後方に見えて、終幕となる。
狙い通りの富士山が見えるかどうかは、まさに運次第。旅の一場面
に富士山を背景としたいい写真が撮れる場所はたくさんあるのだ。

唯一の夜行列車となった「サンライズ出雲・瀬戸」の上り列車から
季節は選んでしまうが、早朝の富士山を見ることが可能だ。富士駅
は朝5時過ぎの通過なので、少し早起きをする必要がある。部屋の
振り分けによって山側の部屋ではなかった場合は、デッキなどのフ
リースペースで見ることができる。非日常のひとときを過ごす独自
追加オプションとして、一つ予定に組み込んでみるとよいだろう。
通勤通学電車とはまた違う、特別な富士山に逢えるかもしれない。

それでは次回の投稿まで、ごきげんよう。

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