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死神として

5年前、関西を旅した時のことだ。

関西には、粉もんと酒を一緒に出す居酒屋がたくさんある。
街を歩いて小腹が空いた私は、そこいらのたこ焼き屋に立ち寄ってみることにした。
暖簾をくぐると、中に客と思わしきオッサンが一人座っていて、標準語で「隣に座りなよ」と言った。私は遠慮なくカウンターの隣の席に座った。
たこ焼き一舟と烏龍茶を注文。たこ焼きがジュージュー言い出す間に、オッサンが話しかけてきた。
「あんた何処から来たの?」
「岡山です。出身は山口ですけど」
「遠いとこから来とるんだな~」
このオッサン、やけに馴れ馴れしくて胡散臭い。
オッサンは続けて言った。
「俺な、手相占いをやっててな、近くに店があるんだ。良かったら来てよ。」
そう言って差し出された名刺には「占いの館○○」と書かれている。
ますます胡散臭い。
私は占いの類のものは絶対に信じないと決めている。
「にーちゃん、せっかくだから、ちょっと手相を見せてみなよ!特別に無料でやってあげるからサ!」
私はムッとしたが、表情には出さずに手を差し出した。
自称占い師は手のひらを見て、にぎにぎしたり、広げたり閉じたりしていた。
しばらくすると占い師は目を丸くして言った。
「にーちゃん、これは凄い手相だよ」
「はぁ」
「これはね、あらゆる人の人生を巻き込んで、ぐちゃぐちゃにしていく人の手相だ!」
・・・・・・・・。
そんなもんあるもんか!

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時は流れて2022年。
最近は「人当たりが強い」と言われる日が増えた。
我が強いのが原因なのだが、これくらい強くないといけない。
家族は天才秀才ばかりで、黙っていたら何も意思決定できずに決まってしまう。
岡山に住み家族から離れて、ようやく自由を手にした感じで、出来なかった色々なことに手を出す日々が増えた。
熱帯魚飼育を始めたのもあるけど、一番はゲームを配信すること。

もともとゲーム実況に興味があった私は、ゲームで人を楽しませることを夢だと思っていた。
配信を始めたころは仲間内でリプレイなんかを見ながら「ここがばかだった」「あそこは面白かった」などと話を進めていた。

最近になって、色々な視聴者が増え始めた。
同じゲームをする人。実際に配信する人。ゲームに興味を持った人。知らぬ間に来た人。友人も、そう。
私はなし崩し的にそれらの人全体を見なければならなくなった。

人を楽しませるために何をすべきか。不快にさせないためにはどうすべきか。自分も他人も幸せにするにはどうすれば良いのか。

このプレイは動画にできる。あのプレイは配信に載せれる。
ありとあらゆる趣味の場面で、他人を意識した。

それでも、やらかした。

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私は、昨日ひとりの友人を斬り殺した。
大事な友人だった。かけがえのない友人だった。

それでも、私の視聴者を不快にさせる言動を行い、私のもっとも大切な、大切な知り合いに、多大な迷惑をかけた。

私は彼と断交しなければならなかった。
それは苦しい。
私は苦しかった。
すまない。私が言う事ではないのだが。すまなかった。
許してほしい。

誰もが幸せになる道なんてものはないのだから。
私は一部の少ない人間を切り捨てるしかなかった。
それが悔しい。

私の相方は、最後までその友人をかばっていた。
はっちーびー、君は人間として正しい。
私が間違っている。それが分かっている。

私は趣味を続けていくために、大多数でいることしかできない。
それが間違っていようと構わない。

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Voiceroid実況者界隈に居た時も、私は最後に人を不幸にしたね。

その時の記憶が今も残っている。
私は人に恨まれる事ばかりしている。
もし天国と地獄があるなら、私は地獄に行くんだと思う。

残りわずかの命を燃やして、他人を不幸にしていく。
自殺企図と自殺未遂を繰り返して、燃える炎は他人すら巻き込んでいく。
・・・・・
やっぱり占い師は胡散臭い人種だ。

死神が鎌を振り下ろした。
ドスンという鈍い音が響き、私の大切な人たちが真っ二つに割れた。
刃には自分の瞳が反射している。

血塗れの手を眺めて、悲しくなった。


インターネットを渡り歩いてまだ6年、色々なカテゴリを楽しみ、「消費者」として生きています。 そんな文化の消費者の毎日思ったことアレコレを書いていきます。雑記。