演劇部・高校時代前編

高校は親元を離れたので、高校生活とともに下宿生活がスタートした。

もちろん入った部活は演劇部。人数は全学年合わせて40人くらい。小学中学の町内劇団と違って、舞監、演出、メイク、大道具、メイク、音響、照明をすべて部員内で行うというものだ。
なので、役者希望の人が役者を必ずできるというわけではない。(小学中学の町内劇団では、劇作家の方が子供たち全員が役者をできるように脚本を作ってくれていたので、オーディションというものが存在しなかった。)

とは言っても、演劇部に入りたての1年生は全員がグルーブに分かれて、役者を経験する「新入生発表」というものがあり、役者をやりたくない子からすれば地獄のような催しである。(役者志望と裏方志望で熱の入り方も違う)そのため、新入生発表の稽古は難航を極めた(ような気がする、うろ覚え)

そんな「新入生発表」も無事(?)終わり、演劇部は地区大会というものに向けて、本格的に動き始めることとなった。台本が配られ、オーディション開催の通知が来た。はっきり言って、なぜこのとき役者へ立候補しなかったのか、覚えていない。台本を読んだときに私以外の部員がすんなり当てはまってしまったからかもしれないし、この台本の中のキャラクターで演じられそうなものはないなと思ってしまったからかもしれない。理由はどうであれ、1年生の地区大会の舞台で、私は裏方をした。そこで、衣装メイクをしたのか、大道具を担当したのかも一切覚えていない。おそらく、そこまで1年生のときの地区大会に思い入れはなかったのかもしれない。
そんな地区大会も終わり、次の舞台の「卒業生応援講演」へと部は動いていった。

この「卒業生応援講演」が私の演劇部時代で一番楽しかった。一番充実していた。だが、そんなことは仲間の前では言えない。なぜなら、演出の補助をしていた同期が一番しんどかったと言っているからだ。一番充実していた楽しかったなんて言える訳もない。

だけれど、その私にとって一番端楽しかったことを楽しかったと記すことは許してもらいたいと思う。(おそらくその知人は絶対この記事なんか見ないし…。)

演劇部内でもとびきりかわいく、とびきり声の良い先輩が書いた脚本が「卒業生応援講演」に採用された。先輩方はかなりざわついていた。それもそのはず。かわいい先輩が書いたのは、「ミュージカル」の台本だったからである。本演劇部では異例のことである。部内にミュージカルに精通した人はかわいい先輩以外居なかったので、余儀なく、そのかわいい先輩が舞台演出を行うことになった。オーディションの内容もその先輩が決めた。
オーディションの内容は
①課題曲ワンコーラス歌唱(確か、マンマ・ミーアの日本語版)
②課題曲のダンス
であった。

私はこの内容を聴いた時、胸が躍った。始めてこのnote上で記載するが、日常でも勝手にヘテロ劇場を始めてしまうほど、歌がすきだった。だが、一つ問題があった…。

「ダンスが壊滅的に変な動きになる…」

ダンスが苦手だと発覚したのは、さかのぼること、中学校の体育のダンスの授業。周りはするする振付を覚えていくのに、私は右か左を動かすのか動かさないのか混乱。覚えたら覚えたで、体の動かし方がおかしいらしく、笑われるという始末…。ある意味トラウマであった。

オーディションは冬休み開け。冬は下宿に居られなくなるため、帰省をしなければならなかった。課題曲をウォークマンに入れ、課題ダンスのDVDを持ち帰り、帰省をした。帰省中に難なく課題曲は歌えるようになったが、やはり、ダンスが壊滅的であった。実家でも親に隠れて練習するが、振付がどうしても覚えられなかった。

そうこうするうちに、冬休みが明け、新学期が始まった。オーディションを一緒に受ける予定の子と自主練をすると、なんとなく形にはなったように思えた。だがそれでも一緒に練習している子の方が上手い…。焦りはあったが、やるしかないという気持ちでオーディションに臨んだ。

実はここまで書いておいて、オーディション中のことは一切覚えていない…。ここまで書いたなら嘘でもでっち上げでもすればいいと思われそうだが、嘘をついても何もメリットも何かを守れるということもないので、オーディションの話はスルーする。

そして役者発表の日になった。自分の名前が呼ばれたときは飛び上がらん勢いで返事をした。私よりダンスが上手かった子は落ちていた。なんなんだ、この世界は…。ちなみにその子は歌もうまいし、発声もしっかりしているので、演出のイメージに合わなかったというのが一番の理由なのだろう。受かる子がいて、落ちる子もいるので、非常に厳しい世界であることを今更ながらに痛感した。

ちなみに、かわいい先輩は主役となった。脚本家兼演出兼役者である。同機は非常にざわついていたし、かわいい先輩の演出補助となる、同期の子はかなりやりにくかっただろう…。私は当時はなんとも思わなかったが、同期がざわついていた意味が大人になってわかった。(おそらくあれだ、権力だ。私のための舞台ってやつや。)

そんな不穏な雰囲気なんていざ知らず、私はのびのびと稽古に打ち込んでいた。「ソロで歌えるところがある!見せ場がある!!」
目立ちたがり屋の私にとってこんなに嬉しいことはなかった。
かわいい先輩の書いた脚本は非常にありきたりであったが、部が初のミュージカルに挑戦するのであれば難しすぎないちょうどよい台本であった。

特になんの壁もなく、「卒業生応援講演」を終えることが出来た。非常に楽しかった。「私の演劇人生はあれで終わりでーす」だったらよかったのに。
そういい思い出だけでは終わらせてくれない。
私がもっと強い欲を出しちゃったから…。。。

高校後編に続く

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