見出し画像

鳩の親子―鳩の子育て四十日間の思い出―:M.F

こんにちは、玉光神社note担当のAMです。
(だんだん、この名乗りも無意味になってきたので、次回から止めようと思います……。)
今回は、M.Fさんのベランダで起こったお話です。


春になると、家のベランダにしょっちゅう鳩が来るので、巣を作られないようにいつも警戒しておりましたが、色々忙しくて油断していたところ、いつの間に産んだのか、ベランダの隅に鳩の卵を一つ見つけました。
鳥獣保護法により、勝手に取ってはいけないことになっており、業者さんに頼まなければならないようで、どうしようかと思っているうちに、次の日には卵が二つになり、もう親が温め始めているではありませんか。その姿を見ていると、さすがに取るのも可哀そうになり、そのまま様子を見ることにしました。

鳩は卵を通常二つ産むようで、一つがオス、一つがメスになることが多いそうです。
親のオスとメスが昼夜交代でせっせと温めています。そして約18日後にヒナがかえりました。産まれた直後はよく見えなかったのですが、メスが警戒しながらも、「私の子供達を見てちょうだい」と言わんばかりに、ヒナを見せてくれた時には黄色の毛で、まだ目は見えていないようでした。
鳩はしばらくの間、喉からピジョンミルクと言われるミルクを出して餌として与えるようで、オスとメスが交代でミルクをあげていました。本当に甲斐甲斐しいです。オスもミルクが出るのです。

ミルクの栄養が良いらしく、すぐ成長しはじめ、毛色も灰色がかった色に変わりはじめました。そのうち親が誘い出し、巣からおそるおそる出てベランダを歩きまわるようになりました。私がのぞくと、必死に走って巣に戻り、何もなかったかのように、二羽並んでちょこんと座っている姿がとてもかわいらしかったです。

だんだん親は餌を与える時しか帰ってこなくなり、ヒナも餌をもらう時だけ鳴くのですが、その鳴き声が大きくなり、近所迷惑かなあと心配になりはじめました。
ある時、いつもより鳴き声が激しかったので、見てみると、他の鳩が巣を横取りしようとして、ヒナをつつきまわしていました。平和の鳥のはずなのにと思いながら、可哀そうで、私が顔を出すと来なくなりましたが、ヒナはけっこう傷ついているようでした。心配しましたが、なんとか大丈夫のようで安心しました。

次第に親に近い大きさになり、羽をばたつかせ、飛ぶ練習をするようになりました。
親が上がったり下がったりしながら、低いところから高い所へと飛び移るよう促していると、いつの間にかベランダの手すりに乗るようになりました。
ある時には、一羽のヒナが上の階へ上がって、どこへ行ったのか、一晩帰って来ず心配したこともありましたが、次の朝にはちゃんと戻っていました。
この頃になると、親も一緒に四羽で寄り添って寝るようになり、朝になると親が飛ぶように促して、あっという間に向かいの屋上まで飛び移るようになりました。生まれてから三週間位のことでした。

さすがにベランダはひどく汚れ、天気なのに洗濯物も出せず、ベランダにも出られない日々が続いていたので、もういいでしょうと思い、業者さんに来てもらい、きれいに掃除をしてもらって、親子を寄せ付けないようにしました。
鳩は一度巣を作るとずーっとやってくるそうで、それは困ると思い、鳩防止策をめぐらしましたが、いつの間にか隙間からちゃっかり入ってきては、我が物顔でベランダを歩き回っているので、しばらくは大変でした。
そのうち諦めたのか、少しずつ来なくなりました。
ただ私の方が鳩ロスになって、向かいの屋根にいるかなあなどと、気にかけておりましたが、だんだん見かけることもなくなっていきました。

その後久しぶりにうちの鳩の親子が向かいの屋上にいるのを見て、「なかなか親離れ子離れできない私達家族のベランダで育ったから、鳩親子もなかなか子離れできないのかもしれない」などと思いながら、「どうか仲良く元気で暮らしてね、でもうちのベランダにはもう来ないでね」と心の中で呟いていました。