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AppleSiliconがもたらした「王様のパソコン」

2020年も秋を過ぎて11月、Appleが自社製CPU&GPU「M1」を発表。様子見を決め込むべきか否かと一瞬迷ったものの、これは大変な変化が起こったことに気がつき、即座に購入ボタンを押下、そして手持ちのintelCPU版Mac2台を即座にメルカリにリリース。なにが起こったのかというと、散らかった机の上を大規模に大掃除&シンプル化する一大チャンスが訪れたのである。

20年前のThinkPad版 王様のパソコン

遡ること今から20年前、Richard Sapperデザインの黒くてソリッドなB5サイズのThinkPadをベースに、ドッキングステーションと18インチの外付け液晶ディスプレイを装着した「王様のパソコン」(計67万円/当時)なる記事があって、外出時は1.5kgの軽快なノートブックだが、オフィスでは18インチの広大な画面で作業ができる環境にえらく憧れたものだった。

https://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20001011/nomad05.htm

いつかはThinkPadで「王様のパソコン」を!!と思っていたからか、当時買った同じRichard SapperデザインのデスクライトTIZIOはいまだに机に鎮座したまま。しかし2000年代のパソコン環境はあっという間にWindowsPCを過去のものへと葬り去り、2002年にApple教への宗旨替えが起きる。チタン製のPowerBookG4から、intelチップへと切り替わった黒いMacBook、そして封筒に入るパフォーマンスがMacBookAirへと目まぐるしくダウンサイジングされていったが、AppleはAppleで1600×1024ピクセルの画面が表示できる22インチ AppleCinemaDisplayという素敵な画面があって、MacOS Xで動くApple版「王様のパソコン」環境は至極快適なのであった。

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PowerBookG4 15インチ + AppleCinemaDisplay 22インチ。いま見ても最も美しいプロダクトデザインだった。創世記特有の迫真の気合いを感じる(2003年)

2012年、5120x2880ピクセル環境の登場によるノートとデスクトップへの分断

この至福の状況を一転する出来事が2012年に起きる。Retinaディスプレイの登場によって、5120x2880ピクセル(いわゆる5K)もの高精細画像がMacに表示できるようになったことは画期的であったものの、外部ディスプレイ側はそれから長らく昔ながらの「ドットが目視できる」ディスプレイのままであった。外出先では高精細画像だが、オフィスではドットがカクカク、という状況がしばらく続くが一向に改善のきざしの見えないまま、2014年に5Kの解像度を表示できる27インチのiMac(いわゆるiMac 5K)が登場する。翌2015年には920gの12インチMacBookが登場。どうも至福の時代はしばらく戻ってこない事情を薄々感じ、やむなくノートとデスクトップの2台のパソコン体制を選択。

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ノートとデスクトップ・・・どころか、増えていく一方のデバイス類(2018年)机の上は液晶パネルで埋め尽くされそうである。

当時Appleは2つの問題を抱えていた
1.5K液晶パネルをストレスなく稼働させるグラフィックチップが熱処理の問題でMacBookに実装できない
2.MacBookと外付けディスプレイを接続するTunderbolt2ケーブル(20Gbps)の帯域不足(5Kをリアルタイム伝送しきれない)

2つめの問題については2016年に登場したMacBookProへのTunderbolt3(40Gbps)の実装によって解決したものの、同時に発売された5K解像度のLG UltraFineDisplayを組み合わせて買ってみたところ、1つめのグラフィックチップの問題によって、今度は操作がカクカクという悲惨な状況によって即返品となった。

2020年秋、グラフィック処理速度3倍という下剋上的高速化

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このグラフィックチップの問題が解決されたのが、2020年11月に発売されたAppleSiliconことM1プロセッサーだったというわけである。intelに三行半をつきつける必要は、まずここにあったといえる。分かたれた身体がようやく一つに戻るときがやってきた。少しでも持ち歩く荷物の重量を軽くしたいので、必然的に選択したのはMacBookAirである。(メモリを16GB、SSDを1TBにするなど、ほぼフルフルにアップグレード)

参考までにGeekbench 5で計測されたGPUのMetal Benchmarksが以下の通り

MacBookAir(2020/8Core)M1 GPU 19151 ←NEW
MacBookAir(2020 intel Core i5)Intel Iris Plus 6362
MacBookPro(13-inch 2020)Intel Iris Plus 10144
MacBookPro(13-inch 2016)Intel Iris Graphics 550 4880 
iMac 5K(27-inch 2014)AMD Radeon R9 M290X 24716

13インチ型のMacBookにおいて、2016年からの4年でたった2千程度しか処理速度が向上していなかったものが、半年前に発売されたMacBookAir(2020 intel Core i5)に比べ突如約三倍にもなったのだ。2014年時点のiMacでは既にストレス無く動作していたので、つまり、外付けディスプレイで5K解像度をストレスなく表示させるのに必要な速度は、Geekbench 5でGPUを計測した結果で約2万近い数値が必要なことが解る。どこかの記事で読んだのだが、ジョブズの生前、既にintelに対してグラフィックチップの処理速度の低さと廃熱処理の悪さを指摘していたというから、10年がかりの移行であったことが伺える。となると今回変化しなかった外観が、今後大幅に変更されてくるのだろう。

選択肢の無い5Kディスプレイ

M1プロセッサーに内臓されているグラフィックチップがリアルタイムに5Kの解像度を処理してスムーズに作業が行えることは解ったものの、最終的な課題はインテリアとしての設置に耐えうるプロダクトデザインを持った5Kディスプレイが存在しないという問題が残った。Apple純正の32インチRetina 6Kディスプレイも動作するものの、ディスプレイ単体で60万円超えのお値段もさることながら、あの背面デザインはいただけない。レイアウトの都合上、背面がモロに見えてしまうという問題もある。それにあの多孔質恐怖症になってしまいそうな穴ボコは避けたい。

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そうなってくると選択肢は、あの2016年に返品したLGのUltraFine 5Kディスプレイ27インチしか存在しないのである。何故か、世の中液晶ディスプレイは数あれど、5120x2880ピクセルを27インチ以内で表示できる密度を持ったディスプレイはこれ一択しかない。


アームによって色気も補強+縦置きも自由に

そんな閉塞状況を突破してくれたのが、ColeBrook Bosson SaundersFlo Monitor Armだ。LG製の無骨で色気もクソも無いスタンドが、不思議とアームによって補強されてくることを考えると3.5万円は高くない。

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ディスプレイの下にスタンドもケーブルも無いこの爽快感よ。アームがあることで、ディスプレイを縦型にすることもできる。販売サイトにも説明書にも書いていないが、macOSは元々昔から、ディスプレイの環境設定で表示角度を自由に変更できるためだ。長文の編集や、ウェブサイトの制作なんかは縦型の方が作業効率が上がる。

外付けキーボードは不要

以前、Retinaディスプレイの登場によって2台に分割する前は、MacBookをクラムシェルモードにして蓋を閉じた上で、外付けのキーボードを使っていたが、今回はディスプレイの直下にMacBookAirを設置し、MacBookAirのキーボードを直接使うことにした。そうすることによって 1.Touch IDの指紋認証によるログイン・パスワード確認ができることと、2.新たにキーボードとトラックパッドを買わなくても良くなりシンプルに。これもAppleSiliconがintelチップほどは熱くならない為にできる技である。

過渡期的不安定リスクを覚悟しつつも実戦投入

AppleSiliconMacの発売後即時投入はやや博打であったが、何事もつかってみないことには解らない。特に新しいものについてはより使ってみることで打開策が見えてくることと、Appleのストアから購入したものは使用後でも二週間の返品期間があるので、とりあえず購入ボタンを押しておく。使ってみて、これはダメだと思ったら返品も可能なのである。

で、2020年11月17日に到着。プリインストールされている最初のバージョンであったmacOS BigSur 11.0では問題が頻出した。LG UltraFine 5Kディスプレイがスリープの復帰後に4Kの解像度で表示されるというトラブルや、致命的だったのがAdobe IllustratorがGPUに関連するエラー頻出で5分おきに落ちるという有様であったが、macOS BigSur 11.1へのアップデート後、症状は落ち着いている。GoogleChromeやMicrosoft OfficeもM1チップへのネイティブ対応をはたした今、一般的な作業には問題を感じないレベルにまでなってきたが、特殊用途のアプリケーションについては対応を確認されてから移行することをオススメする。

ちなみに弊環境で動作確認しているソフトウェアはおおまかこのような感じ

・Adobe Photoshop(M1チップネイティブ対応のBeta版がオススメ)
・Adobe Illustrator(intel版)
・Adobe Lightroom Classic(intel版)
・GoogleChrome(M1チップネイティブ対応。ほぼウェブ制作のSTUDIO専用)
・Microsoft Office365(M1チップネイティブ対応。ほぼ経理用)
・LINE(intel版)
・Transmit4(intel版)
・DropBox(intel版)
・zoom(M1チップネイティブ対応)
・Astropad(M1チップネイティブ対応)


写真を含めたデータとバックアップの流れは以下の通り

スクリーンショット 2020-12-30 11.58.06


最近のデスクトップさらし系の記事の流儀に従って、基本的なところで椅子は、夏涼しいメッシュ張りのAlberto Medaのメダチェア(16年目)
https://www.vitra.com/ja-jp/office/product/details/meda-chair

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それから・・・だいぶ寒くなってきた昨今、足下のヒーターはStadler Form の Annaと、天板裏に貼り付けたパネルヒーターの組み合わせです。急速に温めたいときはファンヒーターを。通常時はパネルヒーターの方が暖かくなりすぎず、眠くならなくて良いです。


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