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『未来と芸術展:AI、ロボット、都市、生命-人は明日どう生きるのか』行ってきたレポ

2020年2月7日、六本木ヒルズ内にある森美術館で開催中の、『未来と芸術展:AI、ロボット、都市、生命-人は明日どう生きるのか』に行ってきました~!いわゆる現代アートの枠組みなのかなと思うのですが、門外漢の私でもすごく楽しめたし勉強になったのでレポートいたします!

1 都市の新たな可能性

この展覧会は、5つのチャプターに別れています。1つめが、都市の新たな可能性と題された展示。世界中のあちこちで構想されていたり、実際に作られていたりする、新しい都市に関する内容です。海上都市もあれば、空に浮かぶ都市、なんてものもありました。アラブで実際に建築中の都市構想は、胸躍るものでした。車が地下を走り、地上は人が歩けるようにするとか。交通事故も減りそうだし、車の排気ガスにも無縁だし、いいな~。

私は都市とか建築とかは全く専門外なのですが、知識の有無にかかわらずワクワクさせられる内容でした。もっとサステイナブルで、人と自然が共に生きていくような都市の在り方が模索されているのが世界の潮流なのでしょう。それってとても魅力的だし、未来は明るいんじゃないかなって思わせてくれますね。土地の少ない日本でこそ、もっと革新的な都市が創られてもいいのに!


2 ネオ・メタボリズム建築へ

なんて思っていたら、「メタボリズム建築」という概念を提唱したのは日本の研究者だったそう。メタボリズム建築と言うのは、建築物がもっと柔軟に、まるで新陳代謝を行うように変わっていくことを指します(正確なのは調べて)。60年代頃に提唱されたらしいですが、AIやバイオテクノロジーの技術が進んだ現代、ネオ・メタボリズムとして新しく注目が集まっているのです。

へえ~と思ったのが、一周回って木や紙が素材として注目されているということです。木は空気中の水分量などで、形を変えます。そういう柔軟さが、ネオ・メタボリズム建築と相性がいいのでしょうか。でも、建築資材として木を使うのって結局森林伐採とかにつながるのでは…?と思ってしまいました。そこんとこ、どうなってんだろうね!調べなきゃ!

このチャプターでは、ポスターにもなっていたエコ・ロジック・スタジオの《H.O.R.T.U.S. XL アスタキサンチン g》も展示されています。3Dプリンターでつくった彫刻に、光合成をする素材(なんだっけ忘れちゃった)を組み合わせ、まさに酸素を生み出す彫刻をつくっちゃったのです。すげえや。他にも、トウモロコシを利用したレンガも紹介されていました。自然物と建築をうまく組み合わせることで、新しいアートが生まれているという印象を受けました。

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作家名/作品名:ミハエル・ハンスマイヤー ≪ムカルナスの変異≫

この写真/動画は「クリエイティブ・コモンズ表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際」ライセンスの下で許諾されています。


3 ライフスタイルとデザインの革新

このチャプターでは、都市や建築から一転、もっと小さくて身近なものたちが主役でした。洋服、インテリア、食べ物、車、ペットも!

特に面白かったのが、POP ROACHという作品。食糧としてのゴキブリに注目して、カラフルでいろんなフレーバーの彼らを作っていました。エナジー・バナナ味の黄色いゴキブリとか。解説に、いくら見た目がカラフルで味がついてたとしても、ゴキブリ食べれます??みたいなこと書いてあって、いやそれな!と思うなどしました。でも、食糧危機のソリューションとして昆虫食はありなんじゃないかな~と個人的には考えています。カブトムシの幼虫くらいならギリ食べれそう。

Aiboと、あと名前を見れなかったんですけど愛玩ロボットも展示されていました。Aibo欲しくなりました。本物の犬や猫は飼えなくても、ロボットなら飼える??

テクノロジーの進化は、私たちの身近なところにも、すなわち衣食住のところにも、大きな変革をもたらすのでしょうね。人間が、それをあっさりと受け入れるのか、それとも抵抗する流れになるのか。きっと数十年たってこの展示をもう一度見たら、「こんなの当たり前じゃん!」ってなってるものがたくさんあるんだろうなと思います。

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作家名/作品名:エイミー・カール≪インターナル・コレクション≫

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4 身体の拡張と倫理

私、倫理学専攻ということもあって、このチャプターを一番楽しみにしていました。ロボットやAIの技術が向上するごとに、人間はできることがどんどん増えていく。自動運転や、デザイナーベイビー、死者をよみがえらせることさえ、もしかしたらできるかもしれません。そうなったときに、無批判に「進歩」を受け入れるのは正しいことなのか?そこには、技術の行き過ぎをおさめるストッパーとしての倫理が必要なのではないか?この展示から、私はそういうメッセージを読み取りました。

中でも印象的だったのか、マチュー・ケルビーニという方の作品≪倫理的自動運転車≫です。これはゲーム形式のシミュレーションを通して、AIの道徳的、倫理的課題を問いかける作品です。自動運転車が走行中、目の前になんらかの突発的な障害物があらわれ(倒木とか、暴走するスクールバスとか、飛び出してくる対向車とか)、車はアルゴリズムから行動を決定するわけです。そのとき、選択基準として何を最も優先するのか、それは自分自身だったり、経済効果だったりするのですが、それによって私たちからすれば「倫理的でない」決断が下されてしまうこともあるわけです。例えば、瞬時に事故が起きたときにかかる賠償請求と自身の保険金を計算して、その利益が最大になるように行動した結果、自動運転車に乗っていた人は切り捨てられてしまうとか。ありえない、SFだ、と言う指摘のほうがナンセンスだと感じられるほど、この問題は身近になると思います。

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作家名/作品名:ディムート・シュトレーベ≪シュガーベイブ≫

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作家名/作品名:パトリシア・ピッチニーニ≪親族≫

この写真/動画は「クリエイティブ・コモンズ表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際」ライセンスの下で許諾されています。

5 変容する社会と人間

社会は、テクノロジーの発展と共に、想像もできないようなスピードで変わっていっています。先述のように、それを無批判に享受していると、いつのまにか取返しのつかないことになっているかもしれません。一方、人間がそれをしっかりとコントロールし、うまく活用できれば、今ある問題を解決し、未来へつながるような素晴らしいツールにもなりうるのです。

ここでは、シェアーズベイビー(生殖技術が進み、3人以上の遺伝子を受け継ぐ子が生まれたとき、その子の親権を複数人で共有すること)をめぐるディスカッションや、監視社会を表現した作品(1つの部屋に入ると、壁一面に入場者の姿がカメラで映し出される。顔をドアップにされたり、他の人との距離感を測定されたりする)、アルゴリズムの結果死者が出てしまったという架空の事件の裁判を描いた映像作品などがありました。今の時点では、はるか未来のことのように思えるけど、果たして本当にそうでしょうか?



鑑賞を終えて

思ったより密度の濃い展示で、集中してみていたらあっという間に2時間たっていました。始めは、「海上都市かっけ~」とか思っていたのに、終わるころには人類の未来に思いをはせていました。

生命倫理に興味があって随分調べていた時期があったので、生殖医療と倫理については知っていることもいくつかありました。が、それ以上に世の中はもう進んでいるのかもしれません。AIなどのテクノロジーが進出してくるのは、たしかに少し不気味で恐ろしいようにも思います。でも、やっぱりおそれるべきはロボットよりも人です。創る側、それを利用する側のモラルがこれから一層問われていくでしょう。

日本では、あまり踏み込んだ議論はまだなされていません(夫婦別姓でこんだけ揉めてますから、シェアーズベイビーなんて国会で出したら袋叩きにあいそうですね)。でも、日本って国土もせまいし、天然資源はぜんぜんないし、人も少ないし、持たざる国なわけだから、技術力を活かしてこの分野で存在感を出すことも戦略の1つですよね。今回の展示は、海外の作品ももちろん多かったけれど、日本の作品もたくさんありました。私はアーティストにはなれないけど、応援することはできるのかもしれない。

平日に行ったからか、あんまり混んでなかったです。日本人よりも、海外の人が多かった気がします。ブロンドのくりくりボーイが、Aiboとたわむれてました。興味がわいた人は、ぜひ行ってみてくださーい!!





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