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うつくしきせかい

加害者に対して
「同じ苦しみを」
「同じ悲しみを」
そう願う人は少なくないです。

ならば私も、そうなりたかった。
私は加害行為をしたことがあるからです。

中学生のころの私のねがいでした。
世界のすべての悲しみや苦しみを背負って独りで死にたかった。
それであとはみんなハッピー。

そんな、単純な世界なら良かった。

でも世界は、そんなに単純ではない。
世界は、そんなにきたなくはない。

そんなことでは悲しみも苦しみも他人の死もなくならない。
戦争もなくならない。

複雑なこの世界を、憎んだこともありました。

だけど、この世界は、
思った以上にうつくしい。

加害者が同じ思いをすべきなら、
そうしたかった、私だって。
同じ思いをして、苦しんで、悲しんで、その末に死にたかった。
世界のすべてのそれらを背負って。
私一人が死ねば良いと思っていた。

でも、現実はそう甘くはない。
世界はそう単純ではない。

私一人が死んだって、
なんにも変わらない。

私一人が死んだって、
悲しみも苦しみも消えない。

私一人が死んだって、
戦争は終わらない。

そんな現実が酷だなぁと、
たまに思います。

この世界はうつくしい。
その美しさに、この陽射しに、私は消されそうになります。

ああ、このまま消えられたら。

また人が死にました。
毎日人が死にます。
私ではない人が死にます。

私が死ねばよかったのに。
どうして私じゃなかったんだ。

毎日、毎日、そう思いながら
それでも私は
このうつくしい世界に、
存在してしまっているのです。

私は嘆きます。
どうしてもっと単純で、きたなくあってくれなかったんだ。世界よ。

それも無駄な嘆きなのです。
世界は、――――

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