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#03 「腹ごしらえ会」を語る。

2018.05.01

tamaki niimeと食のつくり手の、カラダにも
地球にもやさしいクリエーション「腹ごしらえ会」。

shopの2階にある広々と心地よい空間「tabe room」にて今年1月よりスタート、毎週土曜・日曜に開催、新鮮な野菜をふんだんに使いこだわりある料理を提供するお店が日替わりで登場する。

今回は、玉木と酒井が「食作人」と呼ぶ、食のプロたちによる「腹ごしらえ会」を巡って、ふたりの様々なトークが展開してゆく。


玉木新雌
「昨年9月の移転1周年イベント『ひとつ会』に出店してもらったシチニア食堂さんと最初に酒井が交渉して、そこからシチニアさんの紹介で“いい友繋がり”形式でやりましょうという話まで結んで来てくれて『腹ごしらえ会』は始まりました。」

酒井義範
「まずはうちのスタッフが食作人さんたちから色々と学ばせていただくという事だったんです。でもそれだけだとおこがましいというか、出店していただいて何かしらのメリットがあれば、お互いがウィンウィンになるのではという、関係性に重きを置いた会なんです。単なるお金のやり取りだけの関係というのは何か“資本主義的”で嫌なので。こちらは学ばせていただくし、食作人さんも何かしら創意工夫をして料理に力を注いでいただき、そしてここでお客さんから得た評価というのを持ち帰っていただくという感じです。」

玉木
「大事なポイントのひとつは、うちの調理スタッフだけが学ばせてもらうために来ていただいているのではなくて、料理人のプロとして皆さんそれぞれの地域でお仕事をされているし、私たちもプロとしてやっていかなければいけないという立場で、tamaki niimeの服を売るにしても飲食で料理を提供するにしても、共通する心構えってありますよね。あ、こういう事をしてもらえたらお客として凄く嬉しいとか、楽しいとか。感動とか。やっぱりそういう事って人から伝え聞いただけではよくわからないので自分たちも体験するべきだと思うから。率先して買い物に行けとか、色んな経験を積めってスタッフにもよく言って聞かせるんですけど、それをなかなか忙しいうちのスタッフが西脇から出て、色んなところへしょっちゅう視察に行けるかというとそうは行けないからこそ、せっかくのこの『腹ごしらえ会』という機会を凄いチャンスだと捉えてもらってスタッフ皆、食作人さんのごはんを頂くという。そこで今まで食べた事のない新しいものに出会う感動とか喜びとか、そういうものを経験値として積んで、それをまた自分たちのモノづくりに活かす、と。服づくりや接客で、自ら体験した事を活かして自分なりに新しい、プロとしてのアイデアを育むというか。そんなきっかけにしたいなというのはあります。」

― ジャンルは違えど食のプロから学ばせていただくという事ですね。

玉木
「私たち自身もまだまだ勉強不足やから、食作人さんたちが提供する色んなものを食べてみたり、色んな事を訊いてみたり。ただ単に味がどうとかじゃなくてブランドとして、どういうストーリーがあるお店さんなのか?それを知ることで私も人に伝えやすいし、お客様にも納得していただけるというのもあるし…本当にトータルですね。」

酒井
「例えば僕が神戸だったり都心へ出て経験した事で言えば、全くお店を知らない中で、食べログとか見て美味しいお店に当たる確率って限りなく低いんですよね。色んなレストランが載ってるし逆に言えばコアなお店は載せてなかったりするし。そんな中で『腹ごしらえ会』ではコアな人がコアな人を紹介してくれるっていういい循環が生まれてますよね。だから今まで遠くて行けなかったけれども、あのお店がtamaki niimeに来るんだったら是非行ってみたいと思われる西脇のお客様もいらっしゃるだろうし。近隣も含め、あちこちからもいらっしゃるだろうし。ネットでいちいち検索しなくても、毎週土・日毎にそこに行けば確実な食の情報が得られるっていうのは非常に効率的やと。僕たちにメリットがあるというのはもちろんですが、お客さんに楽しんでいただきたいという想いがあるからこそ、洗練された情報をピンポイントで集めたいというのがあります。だからお店からの紹介を繋いでゆく『いい友形式』にしてるし、食作人さんやからこそこだわった人を紹介してくれる。自分たちにこだわりがあるからこそ、こだわった人を紹介したいっていう想いが食作人さんにもあるみたいで。そこは自分たちにしてもそうで、こだわった事を自分たちがしてるからこそ、この人ならという人しか紹介したくないし。だから毎週土・日には確実に洗練された食の情報が集まりますよね。そこはグーグルで検索するよりもピンポイントで正確というか。」

玉木
「人に伝える情報としてね。」

― tamaki niime がひとつの発信基地というか、良いもの・良い情報が集まる集積地としての機能を持つという事ですね。

酒井
「そうなると『所さんの世田谷ベース』じゃないけど“tamaki niimeベース”的なところがありますね。そこに何かが集まる楽しさっていうか。そこに行けば何かがある楽しさっていうか。例えば食作人さんに今こうして土・日に来て頂いている『腹ごしらえ会』をずっと繋げていって移転2周年記念イベント『ふたつ会』で、わたしたちの独断と偏見で選りすぐるって言ったらおこがましいですけど、一日毎に異なる食作人さんに出店していただき、皆さんに楽しんでいただく、とか。」

― tamaki niimeによる食の博覧会というか美味しい食をパッケージしたものになりそうですね。

玉木
「どこに食べに行こうか悩むくらいならウチにおいでよ、美味しいのが揃ってるから、という。」

― 間違いないから、と。

玉木
「そういう感じやね(笑)。もちろん皆さん好みもあるかもしれないし、何かしらこだわりがあるよね。だから、今回それで悩んだのは、私がヴィーガンだからヴィーガン・フードでなければ困るというところでスタートしようとしたんですけれど、そこをちょっと舵を切りなおして、『いりこメシ』のおっちゃんが来たんですけど。いりこを作っているから魚でしょう?」

― 動物性じゃないですか。

玉木
「でもずっと彼らはいりこを作り続けていて、大量生産的な作り方じゃなくて昔ながらの製法で大切に魚を使っていて。逆にお魚さんの事を誰よりもしっかり考えているし、海をきれいにしたいという意識も凄くしっかり持っているという意味では、動物性のものを食べるから・売るからダメっていうんじゃないんだと思った。私は自分に課した実験として食べないけれども、魚や動物と向き合って命を頂き、だからこそしっかりと地球の事を考えているという人たちもいらっしゃるんだという事を知った。」

― 魚が獲れる環境を守るため、持続性と循環のために漁獲量は一定に抑えておこうとか…

玉木
「ずっと頂くという意味で海を汚さない、手間暇かけて仕分けして焙煎釜で煎って本当に美味しいと思って貰えるいりこを作り続けておられる方で。日本全国にそれを伝えに物販に行くという。」

酒井
「値段は決して安くはないよね。」

玉木
「大量生産的なやり方ではなくて昔ながらの小さな焙煎釜でないと良いいりこが出来ないと言ってこだわっておられるしね。」

酒井
「良いものを使っているのに原価率無視でやってますっていうのはアカンと思うんですよね。持続性や循環を考えながら関わるからこそ見い出せる価値があり、そこには正当な値段を付けるという事だと思うんです。」

玉木
「なぜその値段になるのか?高くなるのには何かしらの理由があるのかもしれないと考えるお客様に対して、ちゃんと説明出来れば、買う・買わないは別として理由を知ってもらうきっかけになるだろうし。だから『腹ごしらえ会』も一概に動物性の食材で作る人は嫌というのではなくて、ちゃんと地球の事を良くしようと思っている人たちであれば、動物性のものを使ってはいても、その背景を知ってもらうためには、ただ否定するというのではよくないとなったんです。」

酒井
「魚を食べない・動物を食べない、地球環境の中の生命の循環に影響を及ぼさずに、そこを考えているのが玉木で、いりこのおっちゃんはそういう生命の循環に関与している、だからこその目線からアプローチをしている人やと思うんです。ヴィーガンという立場から言える事と、漁業に関わるからこそ言える事。そう考えるとすごくフェアなやり方で魚との関わりを体現されている方やと思います。」

玉木
「志は一緒だから。肉を食べる・食べないは関係なく。」

― 生業にされている部分で魚と真剣に向き合っておられるという事ですね。

玉木
「魚の恩恵で生きてるからそこに感謝をされているし。乱獲せず絶やさずに大事にしていかなくちゃいけない、獲った命は美味しく感謝して頂く、という事をしようとされている方だから。」

酒井
「僕らがコアなモノづくりをやっているから、食作人さんたちも中途半端な事は出来ないんですよね。僕らがやっている事を理解出来るならば、この状況を理解出来る人ならば相当のプレッシャーだと思うし。だからこそ、その緊張感の中で持てる力を全力で出し尽くしていいパフォーマンスをしようとするだろうし。そういう事だと思うんですよね。お客さんに来てもらいたいし知ってもらいたいのはもちろんですけど、『腹ごしらえ会』という、こういった取り組み自体が、クリエーションという意味で価値があるんじゃないかと思いますね。」


異業種ではあるけれどもそこには“真剣勝負”、真摯な仕事同士が向き合い交わる場が在る。

ここにもまたそのモノづくりと同様、tamaki niimeの一貫した哲学と日々の思考、そしてクリエーションのエッセンスが滲んでいる。

書き人  越川誠司

https://www.niime.jp/

tabe room

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