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落とした魂を拾いに行く、という合理的なシステム

今でも残っている風習なのか? と、ネットで検索すると、出てくる出てくる。現役の風習らしい。沖縄では、驚いたりすると、魂(マブイ)を落としてしまうと言われているらしい。

昔、私が読んだのは雑誌のエッセイか何かだったと思う。
沖縄在住の若い著者は、交通事故に遭った。幸いすぐに退院できたが、退院するなり年長者に、
「事故のとき、魂を落としているから、すぐに事故現場に魂を拾いに行きなさい」と、言われたそうだ。

読んだとき、軽く興奮した。
なんて合理的なんだろう、と。

私はパニック障害持ちである。
まだ実家で暮らしていた頃だが、酷い時期には家から一歩も外に出られず、一人では留守番もできず、風呂に入るにも頓服薬を持ち込んでいた(そのあいだ毎日、猫のモモさんが私を風呂場まで先導し、私が風呂から上がるのを待っていてくれた)。

そんなわけで、パニック障害に関する本も、たぶん十冊以上は読んでいる。
(その大半は、ゴミ箱に叩き込んでしまったが)

外出恐怖を克服するのに、”心理的なアプローチとしては”、認知行動療法や暴露療法が、有効だと思う。
どの本だったか忘れたが、
”もしも外出先でパニック発作を起こし、その場から逃げてしまったら、なるべく日を置かず、その場所を再訪しましょう。『ここで発作を起こした』という、ネガティブな記憶を、『この場所はもう、大丈夫』という記憶に上書きをしておきます。”
というようなことが書いてあったのだった。

完全な蛇足だが、
この技法は、実は人間だけに有効なわけではないらしい。
猫の飼い方の本を読んでいたら、
”猫に嫌なこと(病院に行くとか爪を切るとか)があったら、その猫の好きなおやつをあげましょう。
猫の記憶を、「怖い、嫌だ」から「美味しい、嬉しい」に書き換えておきます。そうすれば、「病院=嫌、怖い」ではなく「病院=美味しい=嬉しい」になります”
みたいなことが書いてあり、妙に感心してしまった。
(とはいえ、我が家のトロロは、緊張すると大好きなおやつにも、見向きもしないので、この方法は使えなかった)


というわけで、私も近々に、魂を拾いに行かなければ、と思っています。
というのは、十日ほど前、車の運転中にうっかりパニック発作を起こしてしまったからなのでした。

とはいえ、魂を拾いに行くのに、焦りは禁物。
今回の私の場合、パニック発作を起こした場所までの道のりに、中継点を3箇所ほど決め、1回目は一番近い中継点、2回目は二番目に近い中継点………という具合にクリアしていくつもりです。
というのは、再び発作を起こすと、ネガティブな記憶が強化されてしまうから。

ちなみに、徒歩、バス、電車は日常生活に支障のないくらいに大丈夫です。片道2時間近く掛けて、ライブで出かけられる程度に回復しています。
ここまで回復するなんで、自分でも思ってなかったです。

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