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手織り布とすず竹のバッグ 続き

「おぼけ」から制作すると底が四角なのでバッグに仕立てたときに使い勝手も良く縫製も綺麗に仕上がる。
「おぼけ」とは農作物、小物、裁縫道具などを入れるもので、手仕事の道具としては麻などの糸づくりの時に績んだ糸を入れる口が円形で底が四角の割にしっかりした作りをした籠のこと。

今回手を上げてくれたKさんは「おぼけは無理、米研ぎざるだったら改良できるけれど」とのこと。そこで米研ぎザルをベースにバッグ用に編み方を変えて作っていただくことになった。
大きな違いは表と裏が逆になること。ザルは内側が表となるけれど、バッグは外側が表となる。そして底はより安定するよう立ち上がりをなるべく角に、縁はやや太くしっかりしてザルとしては持ちやすいけれど布と合わせるときに馴染まないので、なるべく出っ張らないように編み上げる、など細かな打ち合わせを重ね布とも相性のいいバッグ用のすず竹バッグのベースが仕上がっていった。

葛を績むための「おぼけ(特大)」
猫の下に私の績んだ葛糸があります

竹のザルも籠もそのまま素敵だからバッグにする必要が果たしてあるのか。
実際すず竹だけで編まれた市場カゴも存在して人気もある。

その理由は二つ、一つは利便性。
竹製のバッグは内側も竹なのでいろいろなモノを入れる時に心もとない時がある。
内側に布バッグを入れたり、内布をつけたくなる。上から見えやすいので口部分にも布を被せたい。布との共作はそこのところをカバーできる。
二つ目は宣伝効果。
新たなモノを生み出すことは大変だけれどもワクワクして楽しい。日々コツコツと手足を動かし作り上げることはもちろん喜びではあるけれど、新たな出会いにより思いもよらない発見があったり、学びがある。
三つ目は宣伝効果。
和綿、亜麻(リネン)、大麻(ヘンプ)そのものへの興味、紡ぎ、染め、織ることとスズ竹とその文化。お互いがお互いを知ること、それだけでも宣伝になり、ここでいいモノができたらさらにその文化が広がる。

江戸時代に広まった和綿は時を経て令和まで受け継がれ私が種を蒔いて育てたもの、その綿を紡いで染めた糸を織った布と江戸時代に富士山麓の浅間神社にも奉納されていて現在も営まれているすず竹細工、きっと調和すると、そこには自信を持っていた。

布部分の模様 自家栽培の和綿を手紡ぎし本藍染めしました
生地は手織り、すず竹は富士山二合目産、Kさん作

模様は自家栽培の和綿を紡ぎ、生成りのものと本藍染めをした糸を用いた。
ベースはフランス産リネンと日本で加工されたヘンプいわゆる大麻で織り上げた。
試作品を車に乗せて御坂峠を越えながら、不安と期待が入り混じって落ち着かない。せっかくのすず竹良さを壊していないだろうか、気に入っていただけるだろうかと、そう思う一方で仕上がったバッグはこれしかないというハーモニーが生まれているという自負もあった。

河口湖のすず竹工芸センターに着き代表にバッグを見ていただいた。
「いいね、この生地がいい、ちょっとみんな見て」
この言葉をいただいて肩の力が抜けた。そしてすぐに冷静になり安心して説明することができた。「ここのところもう少し高い方がいい」「これだと広がりすぎかな」などと、すず竹部分の大きさを調整したり、布部分の長さや口の収め方などを話し合い最終調整を行った。

こうして出来上がったバッグが2点、鎌倉の廻り道さんへの納品が決まった。
続きは手織り布とスズ竹のバッグ おしまいへ綴りました。
ご一読いただけますように





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