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第100回箱根駅伝 山登り5区は山の神レベルが複数出現する史上空前のレベルに!

第100回の箱根駅伝について、2区の争いが凄い事になりそう、と言う事を前回に書きましたが、山登り5区の方も、大変な事になりそうです。

5区の区間記録について

5区の区間記録は前回大会の城西大学・山本唯翔選手が出した70:04です。
しかし、5区には、ほぼ同じコースで過去にもっと凄い記録が出ています。
それが、山の神・今井正人選手が出した69:12!
これは当時としては破格の記録で区間2位を大きく引き離していました。箱根駅伝のレベルが大きく上がった今でも破られていない、正に神の領域とも言える記録です。
しかし、今年の箱根駅伝では、この記録に挑戦できるだろう選手が複数人います。
と言うのは、過去に5区を70分台で走った事のある選手が5人も居るのです。
それは

  • 城西:山本唯翔:70:04 (99回)

  • 中央:阿部:70:36 (99回)

  • 創価:吉田響:70:44 (98回)

  • 駒澤:山川:70:45 (99回)

  • 青学:若林:70:46 (98回)

この5人は今シーズンも元気に活躍していて、5区に出走すればよりタイムを向上させる事が期待されます。
つまり、70分を切るランナーが複数人出そうな状況なのです。
その中には、今井選手の記録に迫る選手も出るかもしれません。

区間賞争い

区間賞争いは、上記の5人の選手が中心になるだろうと思います。
その中でも、私が本命だと思うのは、山川選手です。
山川選手の今シーズンの充実度は素晴らしいです。まず、2月の丸亀ハーフで61:36という素晴らしいタイムを出すと、春の関東インカレではハーフマラソンで2位になります。駅伝シーズンはさらに充実していて、前哨戦の出雲、全日本ではエース区間で好走しています。出雲駅伝では3区で3位、上二人は留学生選手で日本人選手の中では一位、しかも留学生選手との差は小さく(14秒差)、他の日本人選手とは差をつけて(4位と32秒差)います。つまり、他校の日本人エースに差をつける留学生選手並みの活躍をした、という事になります。全日本大学駅伝では最長区間8区で区間賞、しかも区間2位と41秒もの大差をつけました。これはもう、大エースへと覚醒した、と言って良いでしょう。前回5区を走った選手の中で最も成長した選手と言えます。前回初めての5区であれだけの走りをした山川選手、今回は大幅な上積みが期待できます。

前回区間賞の山本選手も大きく成長しています。
今シーズンの山本選手は、最も素晴らしかったのは全日本大学駅伝の予選会。各大学のエースが集まる最終組で奮闘し、日本人選手では3番目の8位でゴールしました。留学生のキムタイ選手の調子が上がらない中、タイムを稼ぐ役割を果たし、城西大学のトップ通過に大きく貢献しました。
また、駅伝シーズンではエース区間を任されており、出雲駅伝では6区区間3位、全日本では8区区間5位で役割を果たしています。(山川選手の成績には見劣りしますがそれは山川選手が凄すぎるだけです。)前回の5区ではあと少しで70分切りで走っていて、そこからの成長を考えると高い確率で70分を切ってきて、今井選手の記録にも近づけるのではと期待できます。

吉田選手も今シーズン絶好調です。前哨戦の駅伝では出雲、全日本とも区間賞! 特に全日本では区間2位に38秒の大差をつけています。しかも、その走りを、チームが下位に沈む悪い流れの中でやってのけ、シード落ちの大ピンチからの救世主となりました。(吉田選手は1年時も箱根駅伝でチームが下位に沈む中、山登り5区で区間2位の大駆けをし、チームをシード争いの輪に引き戻す働きをしていて、駅伝力の高い選手です。)この活躍から、吉田選手も大きな上積みが期待できそうです。

阿部選手も今シーズン、しっかり走れています。昨シーズンの全日本は8区区間8位、今シーズンの全日本は8区区間4位と成長していて、箱根でも上積みありそうです。
若林選手も全日本は1区8位とまずまずの結果でした。しかし若林選手が前回箱根5区を走った時は、全日本でブレーキした後だったので、こちらも上積みあるでしょう。

つまり、上記5名が70分台で走っていて、それぞれに上積みが期待できる状況です。この中から複数人が70分を切ってくるだろうし、切れなかった選手も近いタイムで走ると思われます。

この記事に限らず、城西大学や創価大学が5区で大逆転して往路優勝が狙える、としている記事がよくあります。確かに両校の5区候補選手は強力です。しかし、上で比較してみた通り、他の3校の5区候補選手も同じくらい強い選手が並んでいる訳で、いくら山本選手や吉田選手と言えど、差がついた状況から簡単にひっくり返せる相手ではないと思います。渡辺さんや色々な人は、山川選手や阿部選手、若林選手の力を過小評価しているのではないでしょうか。(特に中大・阿部選手の過小評価には目に余るものがあると思う。一応、5区の過去のタイムでは2番目の実績があるんですけどね。)

ただ、それ以外の大学に対してなら、この5校は山では大きなアドバンテージを持っていると思います。
なので、往路で多少失敗してしまっても、山で大きく挽回して、この5校の次くらいまでは挽回してこれると思います。

それ以外の選手たち:実績組

それ以外に出走が予想される選手を挙げていきましょう。まずは前回に出走した実績のある選手たちです。

  • 早稲田:伊藤:71:49

  • 國學:伊地知:72:27

  • 法政:細迫:72:49

  • 国士:山本雷我:73:09

  • 大東:菊池:73:21

  • 明治:吉川:75:09

この中で、まず國學院大学について検討します。というのは、國學は優勝を争う大学と予想されているからです。

國學院の山はどうする?

國學院大学は、青学・中央と共に、優勝候補・駒澤を追う2番手集団の1校と予想されています。実際に前哨戦の全日本大学では青学・中央と激しい2位争いを繰り広げ、3位になっています。
その、優勝を争う駒澤・青学・中央には、上記のように70分切りを狙おうかという非常に高レベルのランナーの出走が予想されています。なので、國學も近いタイムで走れないと、優勝争いで大きく遅れをとってしまいかねません。
國學は去年、チームのエースである伊地知選手が5区を走りましたが、ペース配分が難しかったようで、前半突っ込みすぎて入った分、上りで伸びず、凡走で終わってしまいました(エースを起用してこのタイム・区間順位では期待外れだったでしょう)。この経験を活かして今回は激走できるかもしれませんが、元々登りに高い適正があるタイプというより走力で押し切るタイプと思われます。なので、区間賞候補に挙げた5人の選手と比べると少し厳しいかもしれません。
國學院は、伊地知選手以外の選手が5区を走るかもしれません。ただ、優勝を争うライバル校がいずれも山に切り札を持つだけに、最低でも71分台で走れるランナーが用意できないといけないでしょう。いずれにせよ、國學院大学にとって5区は大きな課題だと思います。

3回目の山に挑む選手たち

早稲田・伊藤選手、法政・細迫選手、国士舘・山本雷我選手の3人は、前回、2回目の5区に挑み、1回走った経験を活かして大幅にタイムを向上させて来ました。

  • 早稲田:伊藤:73:24 → 71:49

  • 法政:細迫:74:33 → 72:49

  • 国士:山本雷我:73:50 → 73:09

伊藤選手・細迫選手はいずれも2分近く、山本選手も40秒以上タイムを縮めました。3回目も、経験を活かしてさらにタイムを縮められるかに注目です。ただし、2回目に「経験を活かしてタイムを縮める」というのを既に達成している訳で、それ以上に縮めていけるか、というのはあると思います。もっとも山本選手は今年、激坂王で優勝し波に乗っていますし、41秒というのは上昇幅としては小さいので、まだタイムを縮める余地は十分にありそうです。
特に早稲田にとっては、5位争いのライバルと思われる城西・創価がいずれも5区に区間賞を狙える切り札がいるだけに、ここでの差をいかに小さくできるかが重要になります。伊藤選手の激走にかかる期待は大きいです。
法政にとってもシード争いのライベル校へのアドバンテージになれそうな区間ですし、国士舘にとっては頼みの綱とも言える区間でしょう。

経験を活かし大きな躍進が期待される選手

大東・菊池選手と、明治・吉川選手はいずれも今年の予選会で好走しています。前回は初めての山に苦しんだと言える両選手。特に吉川選手は1年生で予選会も走っておらず大学初めての大舞台で、力を出しきれなかったと言えるでしょう。しかし今年の予選会では 62:41と好タイムでチーム2番手でゴールしていて、大きく力を伸ばしています。確かな走力をつけての再びのチャレンジ、経験も活かせますし、今回こそは素晴らしい走りを期待したいところです。
菊池選手は元々チームの主力で去年の予選会もしっかり走っていましたが、今年は 62:28と躍進しています。前回は大学としても久しぶりの箱根で、2区のブレーキから最下位争いの流れの中で襷を受けた難しいレースでした。しかし今年は大東は全日本大学駅伝で久しぶりにシード権をとるなど勢いに乗っています。もっとも2区に爆速のエースが居る訳ではありませんので、差を広げられないように粘りながら少しずつ順位を上げていく戦いになると思われます。なので、菊池選手の所で挽回してシード権の枠内に入る活躍が期待されています。

それ以外の選手たち:激坂王上位組

激坂王は箱根5区の前哨戦として注目されています。特に5区の経験の少ない予選開校にとっては選手の山適正をみたり、山登りレースの貴重な経験を積む場として重宝されています。それはつまり、駅伝ファンにとっては、5区要員を予想する貴重な場でもある訳です。
では、今年の激坂王の結果を見てみましょう。

  1. 山本 雷我 / 国士舘大学 54:11

  2. 弓削 征慶 / 山梨学院大学 54:19

  3. 吉村 颯斗/ 東京農業大学 55:36

  4. 後藤 天馬 / 国士舘大学 55:45

  5. 倉島 啓人 / 駿河台大学 55:49

  6. 柴田 大輝 / 中央学院大学 55:53

  7. 新山 舜心 / 駿河台大学 56:25

  8. 永井 駿 / 立教大学 56:37

優勝は経験者の欄で挙げた山本雷我選手でした。これはつまり、上記選手たちの活躍は山本選手を基準に多少は予想できるという事になります(もっとも実際の箱根では経験の分だけ山本選手がより有利だと思いますが。)
それでいくと、山梨の弓削選手はある程度期待できそうに思えます。また55分台の東農・吉村選手、駿河台・倉島選手、中学・柴田選手はある程度ではまとめてくれそうです。

ここに挙げた以外の大学にとっては、山は全く未知数だと思います。ただし、箱根駅伝では山の重要度は高いです。特に今年は、ここまで述べて来たように非常に高いレベルが予想されています。それだけに、山が計算できない大学は苦戦が免れないように思われます。

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