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取材と書くこと

朝、雨の新宿。緊張してバスを待っていた。

こんなにたくさん取材をしてきて、

取材が生きがいだと思っていても、

取材の前は緊張する。

初めて会う人は特に。

今日はある障害をもつ人を取材する。

ずっと前に一度だけお会いしたことがあって、そのときその人は障害を負っていなかった。

いつかまた会えたらと思っていたら、

めぐりめぐってまた会えることになった。

障害がある人だから緊張するのか、初めてに近い人だから緊張するのか、

久しぶりすぎるから緊張するのか、

取材がうまくいくかどうかが心配だから緊張するのか。

わからない。どれもか。

とにかくいつだって、誰だって、取材で会う前は緊張するのだ。

それは悪いことじゃないと思っている。

悪いことじゃないんだよ、と自分を励ます。

励まさないとやっていけないほど、私はいつも無防備だ。

すごく楽しみでこわい。

でもあった瞬間、その緊張はほぐれていく。

少しずつ言葉を交わし、目線を交わし、

空気を一緒に吸って、

たどってきた道を逆戻りしていくうちに

ただその人を好きになる。

会えてよかった、もっと聞きたい、もっと聞かせて。

そんな顔をするんだ。そんな手の動きなんだ。

笑ってる。いつかの涙を想像する。誰かへの熱い思いに胸が震える。

楽しい。会えてよかった。聞かせてくれてありがとうございました。

離れ難くなった頃、取材は終わり、お別れをする。

そしてその人との思い出を胸に、

私はまたたった一人になって、原稿を書く。

できあがったものを誰かが読んでくれたら、
私の出会った人の人生が、読んでくれる人の人生と触れ合う。

その頃には私はまた誰かに会いたくなって連絡をとり、

緊張して雨の中、到着を待っている。

それの繰り返しだ。



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