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The Beatles Get Back


 当初、映画公開を予定されていた作品が、コロナ禍で中止になり、3部に分かれDisney+のみの限定配信となり、金曜日公開となり、早速観ました。
アップル社屋上におけるビートルズの最後ライブとして知られ、昔、一度「レット・イット・ビー」として公開されたものが、膨大な映像から、全く新しく作り替えられた作品。
 3部トータルで8時間弱の長尺、その上ほとんどの場面がスタジオでの曲作りを含む、レコーディング・セッションなので、ダラダラ進む場面も多く、一応、出演者もその曲も良く知っているので、時折寝落ちしながらも、何とか観られましたが、それほど興味のない方には、少し辛いかもという印象で、もしコンパクトな編集で映画で公開されていたらまた違ったものになっていたかもしれません。
 しかしながら、その上映時間の長さが、個々が自我に目覚め、ガール・フレンドと暮らすようになり、一緒にいる機会が減り、マネージャーのブライアン・エプスタインの死去により、まとめ目役がいなくなり、会社の経営者となりと様々な変化そして悪名高きアラン・クラインの接近、ヨーコの前夫の前衛作曲家一柳慧との離婚成立、ブラック・パワーの盛り上がりなどが混ざり合い、そこから生まれる、すれ違いや軋轢の微妙な空気を描くことを可能にしたとも言えます。
 当初は、テレビのスペシャル番組のライブ録音としての企画が、ジョージの脱退宣言(エリック・クラプトンを入れようとか、ボブ・デュランも呼ぼうなんて話も)も含む、紆余曲折を経て、サビル・ロウにあるアップル社屋上で無許可でのライブに行きつくところまで、物作りの現場からその成果までを垣間見ることができました。
 メンバーに演奏の具体的に指示をだし反感を買うほど曲作りの段階からアレンジのイメージができているポールの音楽の才能、即興、ユーモアの抜群のセンスと性格のナイーブさが交錯するジョン、指示されるままの演奏から一人のアーティストとしての自我が芽生えたジョージ、その三人の様子を見ながら自分の立ち位置を探すリンゴ。
 また、音楽的にもリハーサルで多く演奏される50年、60年代のロックンロールなどから 彼らのルーツからそのライブ感を取り戻そうという試みに加え、イギリスのミュージシャンに当時大きな影響を与え始めていたアメリカ南部の音楽の芳醇さをビリー・プレストンの参加という形で取り入れなど、なぜアルバム「レット・イット・ビー」があのような作品になったかも改めて解き明かせてくれます。

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