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お姉さんとおじさんに切ってもらった髪を気に入っている

引越しまであと二日となりました。今日は散髪に行ってきました。引越し直前なのに今回は初めて行く散髪屋を選びました。理由は何個かあります。まずは単純に家から近かったからです。

もう一つの理由はイメチェンしたかったからです。

これまで行っていた美容院のお姉さんは「前髪を残しておくほうが似合っているので長めにしておきますね」と言ってくれていて、実際に、前髪が長めに残っていることでかなり良い感じの仕上がりになっていました。本人も周りの人からの評判も上々でした。

しかし夏です。夏なのでもう少し髪を短くしたい。それに次の仕事は食品も扱うかもしれないので短い方が衛生的にもいい。

だから普段より短くしようと思ったのですが、これをいつものお姉さんに言うと、なーんだ本当は短いのが好きなのに私に合わせてくれてたんだ、とか、いやいやだから前髪長い方があんたには似合っているのにわからない奴だな、とか思われてしまうのが気まずかったのです。

なので引越し直前にも関わらずこのタイミングで新しい散髪屋に行くことにしました。もちろんこれは僕の考えすぎ、気にしすぎで、お姉さんは快く短くて似合う髪型にしてくれたはずです。

そう僕は考えすぎる性格なのです。お姉さんごめんなさい。そしてありがとうございます。あなたのカットのおかげで僕は自信を持って転職面接に望め仕事を得られました。直接お礼を言えないのでせめてここで言っておきます。

振り返るとあの日があの人と会った最後の日だったんだなってことがよくおきる。だから躊躇せず、その時ありがとうと言いたいならありがとうと言い、ごめんねと言いたいならごめんねを言おう。



はじめて行った散髪屋は50代のイケおじさんが一人で営んでる小さな床屋でした。

室内はアメリカンテイストなインテリアで飾られていて、席は一つでした。BGMはELTや宇多田ヒカルといったぐあい。

その全てが合間って居心地が良かったです。

なによりイケおじさんのトークが素晴らしかった。

最初こそ一対一のタイマンで緊張するかと思ったけど、話を自然と膨らませてくれて終始和やかに時間が過ぎていきました。

30分という短い時間の中で、親友の25歳の息子が工事現場の事故で命を落としてしまった話、産まれてきた子供が自分の子じゃないんだと産んでからカミングアウトされた友達の話、そしてどうやら自分の子供も自分の子じゃない話というちびまる子ではとうてい扱わないディープな話の三本立てを絶妙なテンションで語ってくれました。

こういう方って髪を切る技術に加えて話術が巧みですね。

自分の子供が産まれた時に、助産師の人らに「お父さんにそっくりで、可愛いですね」と言われたときはこの上なく複雑な気持ちになった、と言っていたのが、申し訳ないけれど面白かったです。

話に夢中になっていたらいつの間にか髪は短く整えられていました。こんなに短くしたのは高校生ぶりです。

イケおじさんにも「これなら大学生って言ってもいいですね」とお墨付きいただいたので、今日からは現役大学生を名乗っていきたいと思います。

大学生に戻ったら一番にしたいことは青春18きっぷを使い、ひたすら電車にゆられて富士山の麓まで行くこと。時間と体力だけが無限だったあの頃にしかできないことを、ああ、もうこれは今しかできないんだ、と噛み締めながらもう一度体験してみたい。



髪がサッパリしてるんるんで帰っている道中、俳句界の有名人、夏井いつきさんのポスターを発見しました。九月におらが町で句会ライブをするそうです。行ってみようかと思いましたが、ああそうか、その頃にはこの町にいないのか、と気づき、ちょっぴり物寂しい気持ちにもなりました。

短くなった髪とぐんぐん長くなっていく雑草、梅雨入りしたのに快晴な日々、るんるんだったのに一転して物寂しくもなる気持ちの移り変わりはまるで夏の天気のよう。

こういったのを含んだ一句を詠みたいのだが、すぐにそんなうまいのはできないのだ。

だから詩に想いを乗せて、この記事を閉じます。



伸び切った髪も

行ってみたい講演会に行きたいと思ってもどうやら行けないと思うことも

あの人との結婚生活を過ごすことも

一瞬で消えてしまった

人生は短いというが25年はあまりにも短すぎる

わたしの髪はパーマをかけるには短すぎる

雑草だけは長すぎるくらいに長くなる

なるようにしかならぬ日々だし

るんるんもしょんぼりも

全て抱きしめて

帰ろっか

うん


ここまで読んでいただきありがとうございます。