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わたしが開くトーストの店

レジは打てないし、原価計算などとんでもない。そもそも子どものころから、お店屋さんごっこよりも断然おままごとのほうが好きだった。
それなのに、いつか、いつかもし、お店を開くなら喫茶店と決めている。それも、厚切りトーストとコーヒーだけの小さな喫茶店。

トーストに使う食パンは、北千住「ふらんすや」の無添加食パンがいい。素朴で飽きないおいしさと、日常のパンにできるお値段。以前、文筆家の木村衣有子さんが北千住に住んでいたころ、食パンはここで買うと決めていると何かで読んだことがある。ちなみに、わたしが拙著『レシート探訪』で書いた「あんドーナツ146円」も、ここのもの。

トーストの話に戻る。
トーストには、バターやはちみつ、いくつかのジャムを選べるようにしたい。ジャムは季節の果物で手づくりするのが理想だけれど、できるだろうか。いちご、あんず、ブルーベリー、ルバーブ、りんご。シナモントーストもぜひ入れたい。チーズトーストには、メープルシロップを少しだけ垂らすのが好きだから、これは常連さんにこっそり薦めようか。

きつねというより、たぬきに近いくらいこんがりと焼いたトーストは、好みが分かれるかもしれない。でも、これだけは譲れない。

店内には小さな本棚を置く。並べるのは、トーストを食べる10分くらいで読めて、それでいてぽっと心に火が灯るような本。工藤直子「のはらうた」、さくらももこ「コジコジ」。詩歌は季節によって入れ替える。ほかに、「クッキングパパ」はどうだろう。トーストをかじりながら、ひとつ、ふたつ読んでもらえば、元気で、やさしい気持ちになれる。でも全巻揃えるとなると、本棚が荒岩ファミリーで埋まってしまうから、169巻の中からとびきりお気に入りのエピソードが詰まっているのを探し出さないといけないなあ。ああいそがしい、いそがしい。

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