12月のカギョウを観に行った


 ぎっくり腰が快方に向かい始めた中で3時間座すのはどうか、と思ったが、この日の開催場所である劇場「楽屋A」は椅子が結構良い。映画館とまでは言わないけれど、パイプ椅子とかじゃない奴だから「いける」と勇躍四ツ橋へ。四ツ橋駅徒歩2分。楽屋Aに到着。お客さんはたくさん入っている。
観客が作る熱気がある。
ちゃんと何かを楽しみにして集まっている集団が持つ熱気がある。
スポーツ文化芸能問わずこの空気があるだけで興奮する。そして興奮は伝播し合う。
受付への列に並んでいる時の全員の「まだかな」感が興奮をさらに高める。

 受付を終え、僕はデブでごそごそ動くし座高が高いクソみたいな観客なので、一番後ろの一番端っこに座る。落ち着く。
時間になるとオープニングトークが行われ、そこから前半7組の芸人さんの演目が披露されていく。
後のトークコーナーで「地下の帝王」と称されていた村橋ステム、ハクション中西両氏の演目がすごく面白かった。

 村橋ステムさんはNSC入学生の最初の授業を担当するNSC講師のお話。最初の設定を客席にしみ込ませる演技がすごく丁寧で。
そこまでバカ受けしていた会場を強引ではない形で、でも強力に己の世界に引き込んでいき、身を任せているうちに設定や仕掛けが体にしみ込んできてラストに向かって爆笑をしている自分が居る、という。いいようにされた感覚。
 ハクション中西さんはその点強引であった。舞台上真ん中で「親子ほども年の離れた女性と寝た」という告白をするところから演目が始まる。客席はハクションさんが何でそんなことを言っているのか、コントの登場人物として言っているのか、本人として言っているのか、それとも気が狂ったのか、すべてが謎の状態から見始めることになる。
謎は残ったまま、その狂気性に笑っているうちにことはどんどんとその狂気方向へ物語が加速し始め、理解しがたい珍なる世界観を演技の熱量で以て引っ張っられて連れまわされて笑い続けているような。そんな数分間。
お二方ともまさに帝王であると思う。でも上記のパターン以外のパターンの面白いやつも見ていたりするし、うーん、かなり強い帝王だ。すごい。

 後半の始まる前にフリートークがあって、怒涛の後半戦が進行していく。後半戦はもう、本当にお気に入りの芸人さんばかり登場するので、笑っているだけの男であった。たぶんちょっと前の人とかには迷惑だったと思う。こればっかりは申し訳ない。 

 にぼしいわしさんの漫才が素晴らしく面白かった。生活の中で必ず起こっている一瞬の不浄を居合で一撃するみたいな導入だった。不穏な時間が積み重なって、緊張が増して行って、件の一撃で人が人に責められる瞬間があったんだけど、強い演劇的な興奮があった。緊張のピークから、ほんの一瞬の間を置いての急激な緊張の緩和。そこからは堰を切ったように爆笑の連続。
「し、枝雀師匠が言うてたやつ…!」と帰り道で思い返しながら感動したり。

 東京からゲストで来られていたひつじねいりさんもとっても面白かった。二人のたたずまい、なんであんなに面白そうなんだろう。すごいことだ。それで実際とっても面白いし。
手術に踏み切る為に野球選手にホームラン打ってもらう、みたいなことについてずっと揉め続けている漫才だった。
いくつかのかたまりが漫才の中にあって、一つづつ消化していくような形。
そのかたまりが永遠に連続していてそれを見続けられる天国があったら行きたいくらい面白かった。オチとかそういうんじゃなく、ずっと二人が揉めているのを見ていたい。終わってほしくない。
感情的になる人が好きなんだけど、お二人は別方向にだけれど、すごく感情的で、その方向の組み合わせが奇跡みたいに面白かった。

 感想が書けなかった他の芸人さんもとっても面白く、なんというイベントなのだろうか。うーむ。と思いながら帰路に就いた。出演の順番も多分無茶苦茶いい組まれ方がされているんだろうと思う。
 見ている間は笑っているだけなのだが、帰路だ。帰路は、意図とか意味とか作戦とかに関する想像や灌漑が湧いてきてうーむ、とか、ほおう、とか、くうう。みたいなかみしめる感じになる。

 来月はどんな様子になっているのか、来月になったらまた気になって、きっと足を運ぶことになるのだと思う。と思ったが来月のカギョウの日は仕事であった。残念。6月くらいから毎月かかさず通えていたんだけどなあ。残念。

 今日は大いに盛り上がり、沢山のお客さんだったがそれでも空席がいくつかあった。あの空席、きっとこれを読んでいるあなたが埋めていても損はしなかった。相当笑ったと思います。
ぜひ来月は、僕がいけない分あなたが行ってみてください。端っこに座る必要はありません。デブでごそごそ動き座高が高いクソみたいな観客じゃなけりゃあ。
今にチケットがとれないライブになるんじゃなかろうか。

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