見出し画像

【第三回】ユーグレナ/田町おじさんによる田町の企業分析

直近で、一日で株価が26.4%も上昇も経験したユーグレナ。
なぜ一日で26.4%も株価が上昇したのか?そもそもユーグレナの業績は?財務状態は?等、見ていき、同社のユニークな施策も紹介します。
noteの最後に、おまけで財務分析ができるようになりたい人向けのおすすめの参考書籍も紹介してますので、興味ある方は覗いて行ってください。

1. ユーグレナってどういう会社?

ユーグレナは、“ミドリムシ“を軸としたビジネスを展開している会社です(ユーグレナの和名がミドリムシ)。詳細は同社ホームページに譲りますが、ミドリムシはめちゃめちゃ体によいことが証明されており、このミドリムシを人の健康に結びつける、ヘルスケア領域(食品・化粧品)が現在の同社の主力事業になっています。同社の20年9月期の売上高133億円のうち、実に129億円をヘルスケア領域が稼ぎ出しています。
さらに、ミドリムシからバイオ燃料の開発にも取り組んでおり、自動車用のバイオディーゼル燃料はすでに商業化に成功しています。ヘルスケア領域で稼いだキャッシュを、「先端投資領域」と位置付けるバイオ燃料事業などへの投資にあてている構図です。

画像1

2. ユーグレナの株価推移

ユーグレナの株価は上場直後に過度な期待から3,000円台まで急騰したあとに、なかなか上向かない業績への嫌気から、
最近は最高値圏比較3分の1の水準で推移を継続していました。
しかし、予てから開発に取り組んでいた、バイオジェット燃料完成の発表を受け、2021年3月16日に一日で+26.4%の上昇を見せました。
その後、投機的な利益確定の売りが入り、株価は下落していますが、この上昇には驚きました。

画像2
画像3

(出所)日本経済新聞 2021年3月16日

3. 業績推移と財務状況

ここ数年の株価低迷の理由、それは、赤字体質が続いてきたことです。
売上高が18年9月期で頭打ちとなっており、事業の柱であるヘルスケア領域の伸びの鈍化が意識されていることや、
バイオ燃料事業の収益化には、まだ時間が要することなどから、株価も上値が重い展開となっています。

画像4

財務三表を見てみると、それぞれから以下のことが読み取れます。
■B/S:自己資本比率は高く、現預金・売掛金に対する流動負債比率も低く財務の健全性自体は悪くない
■P/L:売上原価は高くないものの、販管費にコストがかかっていることが伺え、20年9月期の営業赤字の要因と推察
販管費の中身は何か、販促費に資金を投下したのであれば、新規ユーザー開拓などを期待可能かがポイント。

画像5

■C/F:営業赤字により本業でキャッシュを創出できていないことが読み取れ、本業テコ入れは必須
*投資CFが少ないのは、前期にバイオ燃料事業へ投資したため20年9月期は少なくなっている。

画像6

4. ユーグレナに期待するふたつのこと

①中核事業のヘルスケア領域のテコ入れ
まずなんといっても、中核事業のヘルスケア領域の売上増加による営業黒字化は誰がみてもまずは達成しなければならないでしょう。
ここで生み出すキャッシュが、バイオ燃料事業などへの投資に充てられるからです。

では、ヘルスケア領域での黒字化への道筋はあるのでしょうか?
答えはYESと言えそうです。理由は大きく二つ。
ひとつは、20年9月期の営業赤字の要因が、販管費であることから、「販促費に資金を投下したのであれば、ユーザー確保などが期待できる?」という目線で、同社の決算資料をみてみると、なるほど販管費の中身は、新規ユーザーの開拓に向けた動きだったことがわかります。
2020年9月には、同社中核ブランド『からだにユーグレナ』をリニューアルしており、新規ユーザー開拓による売上改善が期待できます。

画像7
画像8

ヘルスケア領域での黒字化を期待するふたつめの理由は、M&Aを通じた中核事業であるヘルスケア領域での収益力強化にを図っている点です。
ユーグレナは、2021年12月15日に売上高約250億円の青汁のキューサイの買収を発表しました。
2021年末までに出資比率を49%にまで高め、キューサイを連結子会社化する方針で、製造ノウハウや品質管理手法、販売網などを取り込みます。

②バイオ燃料量産化と収益化
ユーグレナに期待することのふたつめはなんと言ってもバイオ燃料事業の黒字化です。
同社が赤字体質なのは、バイオ燃料事業がまだ黒字化に至っていないことも主要因
です。
開発に成功したバイオジェット燃料が量産化され、収益の柱になることを、多くの投資家が期待していると思います。
バイオ燃料事業は、その市場規模からもとてつもないポテンシャルを有しており、昨今のESG投資やSDGsの視点、脱炭素の流れもあり、2025年に予定しているバイオジェット燃料の商用プラント完成・その後の事業展開が楽しみです。

画像9

日本で最高の投資家のひとり、藤野さんも、ミドリムシ由来のバイオジェット燃料完成の報を受け、以下のコメントをしています。
僕も同じ気持ちで、目先の利益はでていないけれども、からだにも環境にも良い事業を展開しているユーグレナという会社をこれからも応援していきたいと思います。

画像10

(出所)日本経済新聞 2021年3月15日

5. 子どもが経営に参画!?

ユーグレナの取組で、これは面白いなと思ったものをひとつ紹介します。
同社は、“CFO=Chief Future Officer(最高未来責任者)”を設置しており、現職のCFOはなんと2005年生まれの15歳女性です。
CFO以下、18歳以下限定メンバーで構成された“Futureサミット”が、会社に対し経営改革の提言をしていきます。
これは、同社の以下の考えから2019年に設けられたもので、現メンバーが第二期。

画像11

第一期の取組が、素晴らしい成果として形になっており、第二期の活躍も楽しみです。

画像12

6. まとめ

今回、ユーグレナという会社を分析してみたことを纏めると、
● 財務は健全であり、赤字体質脱却にむけ中核事業のヘルスケア領域でM&Aや中核商品テコ入れ等の対策を講じ結果も出始めている。
● バイオジェット燃料の開発にも成功、これまでの投資回収、及びより大きな収益を上げる準備が整いつつある。
● 自社の経営に18歳以下世代の声を積極的に取り入れており、よりよい未来の実現に尽力している。

ミドリムシを活用した事業を通して、環境や健康の問題に真摯に挑戦している田町のユーグレナ。
今話題の代替肉との協業にも取り組むなど、ますます目が離せなくなってきました。今後も陰ながら、応援し続けていきたいと今回の分析を通して改めて思いました。

田町おじさん

【参考ページ・資料】

画像13

おまけ:財務分析をできるようになりたい人向け

著名な投資家ジム・ロジャーズは著書『危機の時代 伝説の投資家が語る経済とマネーの未来』(日経BP)の中で、次のように述べています。
「良い投資家になりたいなら、バランスシート(貸借対照表)を読むことを学ぶ必要がある。バランスシートから始めれば、投資を考えている会社が健全かどうかを知ることができる。バランスシートは損益計算書よりもはるかに重要になる。健全な会社かどうかが分かるからだ。損益計算書よりもバランスシートに企業の経営の本質は現れる」
僕も財務分析のスペシャリストというわけではないも、
今回noteに書いている程度のことは、読み取れるようになりました。
どうしたのか?勉強法は?というと、
シンプルに、財務諸表関連の本を読んで、気になる会社の有価証券報告書を実際に読んでみる、ということの繰り返しで、少しずつですがわかるようになってきました。
今回は、僕が財務諸表を勉強した際に参考にした書籍をオススメ順に、特別に紹介します。順番に読むと効率よく理解度が高まると思います。
この情報が誰かひとりでもお役に立つことができれば、うれしいです。


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?