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ラオウより強い父

一枚の写真で泣いたことある?


わたしは、ある。
妹から送られてきた一枚の写真。


父と妹の赤ちゃんが2人で寝ているだけの写真。
一つの枕をシェアしながら、スヤスヤ寝ている。

布団と枕の真ん中に赤ちゃんがドーン。

枕の端に父が落ちかけた頭を申し訳ない程度に乗せてる。

半身を赤ちゃんの方に向けて、父の足は人魚のよう角度をしている。

ただ2人で寝ている姿だけでなんかこみあげてしまった。

それは父がいわゆる世間の父親像より、はるかに怖い存在だったから。
かつての父からは孫と添い寝なんて信じられない。

ほのぼのしちゃって、奇跡のよう。

父のことをずっとただ厳しくて、怖い人だと思っていた。

大人になって、親になってみて、その怖さはただの不器用故の振る舞いだったんだと分かったけど…。

父の育った複雑な家庭環境からなるもので、愛情の受け渡し下手すぎるのだ。

幼き子どもにとって不器用な愛情は難解すぎる。

見せられてるそのままの面しか受け取ることができなかった。


父を怖いと思うきっかけは子どものころテレビでよく見ていた『北斗の拳』も関係している。

胸に7つの傷をもつ男


今ならコンプラ的に人が死にまくる…しかもヒデブーな死にかたよ…ちょっと…大丈夫??

強さがにじみでる怖い感じの絵のタッチ。毎回ケンシロウの服が破裂するぐらい圧倒的な強に子どもながらなんかすげ〜ーと思ってた。

そして、ケンシロウの兄ラオウ。

暴力と恐怖で世紀末の世を支配していた極悪非道な悪役



ケンシロウでも相当強いに、ラオウはさらにその上をいくんだから。

わたしが子どものころの強いのもの! の極みはラオウだった。

怖い父とラオウとではところで…どっちが強いのだろうか?と本気で悩んでいた。

テレビでケンシロウ、ないしラオウを見るたびその疑問は大きくなる一方。

意を決して父に恐る恐る…

「お父さん…ラオウとどっちが強いの?」聞いてみた。

今なら真剣にそんなことで悩んでいる子どもに可愛くて吹き出してしまいそうだけど当時は本気。そして必死。

父の答えは 
「お父さんや!」

えーー!
やっぱり。ラオウより強かったか。

それ以来何かにつけて、うちのお父さんはラオウより強い。
あのラオウより強いのだ。と思って生きてきた。

強い何かに出会うたび、それはラオウとどっちが強いか?
を基準に強さをジャッジ。

結論はほとんどが、いやーラオウの方が強いやろに落ち着く。

そのラオウより父は強い。までが、1セットの思考。

はびこる父最強説。

が!!ラオウより強いはずの父は、
孫の前にはいとも簡単に優しい人魚になってしまうのだ。

ラオウより強いのはまさかの赤ちゃんだったとはね…。

赤ちゃんと添い寝して、柔らかい表情を浮かべて枕までゆずって、岩場の人形姫のように寝てる写真。

これはねぇ、我が家の父を知る人からしたら泣いてしまう案件なの。

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