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【3分解説】なぜ週休3日制か/学び直しの最初のステップ

2022/1/6、パナソニックが週休3日制を導入することを公表しました。新興企業ではなく、歴史ある大企業が導入することで、今後も週休3日制を導入する企業は増えそうです。しかも、単に休みを増やすのが狙いではなく、従業員の学び直しが狙いのようです。
※週休3日制は生産性向上と一体で検討を:日本経済新聞https://www.nikkei.com/article/DGKKZO79268110W2A110C2PE8000/

ですが、なぜ今、週休3日にする必要があるのでしょうか。また、それは労働者から見てどう捉えるべきなのでしょうか。また、学び直しってどうすればいいのでしょうか。そもそも、なぜ週休2日制だったのでしょうか。

なぜ週休3日制にする企業が増えているのか。週休2日だとどういう問題があるのか。

・今まで、働き手のキャリア形成は、新卒で就職した企業の中で出世することが中心でした。
・結果、優秀な人材は既存の企業の中に囲い込まれますので、新しく成長させたい産業に、優秀な人材が十分に集まらない、というのが大きな問題となっていました。
・そこで、政府は2021年6月に決定した骨太の方針(その年の経済・財政政策の基本方針)において、選択的週休3日の導入・普及を図るとしています。
・労働者は増えた休みを活用して学び直しをしてもらい、成長分野へ移動させたいわけです。要は、働き手のキャリア形成を企業主体から働き手主体に変えるということです。
・ここでいう選択的とは、希望する労働者が選ぶことができる、という趣旨で、国として法律を変えて強制する類のものではない、ということです。

そもそも、なぜ週休2日制だったのか

・そもそも、週休2日制は法律で定められたものではなく、労働基準法では、労働者は毎週1回の休日取得が定められているだけです。労働基準法は1947年に制定された、戦後の日本の働き方を決めた基本法です。法律で定められているのは労働時間が週48時間だけで、多くの企業は週6日各8時間勤務として、日曜日を休日として定めました。
・もっと遡ると、江戸時代には明確な休日はありませんでしたが、明治時代に入り、日本社会に欧米の仕組みが導入される中で、キリスト教の安息日(キリストが復活した日)として日曜日は休日とする習慣が定着しました。
・週休2日制になったきっかけは、1965年に松下幸之助が経営する松下電器産業(パナソニック)で導入したことです。幸之助氏が米国視察に行った折、週休2日で成果を挙げている姿を目の当たりにし、米国企業との競争に勝つべく自社にも導入したようです。
・単に2日休みではなく、1日休養、1日教養という形で学びを奨励していたようです。今の学び直しの議論を先取りしているようで、まさに先見の明といったところですね。その後の松下電器は生産性の向上も寄与し、大きく成長を遂げました。
・実際に企業が週休2日制にしたのは1980年代で、きっかけは、先ほどの労働基準法が1987年に改正され、法定労働時間が週48時間から40時間に大幅に減少したことです。
・なぜこのような法改正が行われたかというと、当時は日本の製品が米国中心に世界を席巻しており、いわゆる貿易摩擦という形で日本による過度な製品輸出が批判を受けていました。
・その中で、日本人が働きすぎである点に批判の矛先が向き(言いがかりですね笑)、日本政府としても労働時間を下げるための施策を実施せざるをえなかった、というわけです。
・こうして労働時間が下がった分、国民は余暇に高級ディナーや高級衣服など消費にいそしんだわけで、米国の思惑通りだったかもしれませんが、その後のバブル経済につながったのかもしれませんね。
・こうした政府の施策もあり、一般に土日が休日として定着していきました。
・ただ、あくまで法律上は週休1日しか法律では定められていないので、必ずしも土日を休日にしなければならないわけではありません。映画館や商業施設などは稼ぎ時の土日を一律休みにすると困りますよね。

学校はどうだったのか

・戦後しばらくは土曜日の午前は通学、午後は休みが続いていました。
・1980年代、労働時間短縮の流れに沿って、親が土曜日に休む家庭が増えていきましたが、同じ家庭で子供だけ学校という点に批判が集まるようになり、1992年には全国の国公立の小中高校等で毎月第二土曜日が休業日となりました。カリキュラムの調整のため一気に土曜日を休みにすることはできませんてしたが、その後も順次、1995年には月2回休みとなり、2002年には完全に週休2日になりました。
・ですが、同時期にゆとり教育も導入されましたが、先進国が加盟するOECDが実施した学習テスト(PISA)の結果が良くなかった(数学的応用力が1位(2000年)→6位(2003年)、読解力が8位(2000年)→14位(2003年))ため、ゆとり教育と週休2日制は学力低下の批判の対象となりました。
・結局、東京都など一部の自治体では土曜日の授業を再開しています。

どんな企業が導入しているのか

・早いところでは、ユニクロを展開するファーストリテイリング(2015年)、ヤフー(2017年)が導入しています。その後も、みずほフィナンシャルグループなど伝統的な企業も導入していますが、あくまで育児・介護の支援や長時間労働の是正が目的でした。
・従業員の学び直しの趣旨をふまえた取り組みとしては、冒頭の通りパナソニックが導入を予定しています。パナソニックは週休2日制の先駆け(1965年に導入)となった企業なので、今回もその役割を担うかもしれませんね。
・企業側としても、従業員には自立したキャリアプランを描いてもらいたい、という意向があります。というのも、デジタル化や脱炭素、国内市場の縮小など事業を取り巻く外部環境が大きく変動する中で、機動的に事業の入れ替えを行いたい、という背景があります。
・従業員も所属する会社は変わるかもしれないし、業務も全く別のものに変わるかもしれない、あるいは業務自体がなくなるかもしれない、そのための心つもりをしておいてほしい、というわけです。
・既に大手企業による事業の入れ替えは盛んに行われるようになってきていますが、今後も厳しい競争環境を勝ち残るため、事業の入れ替えは一層増えると思います。
・こうした事情から、週休3日制もまた大手企業中心に導入が増えると見込まれます。

週休3日は労働者にとって良いことなのか

・政府の検討する制度は、労働時間が減る分、給与も減ることを前提としています。
・休みなんかいらないから、今の職場で給料を確保したい、という人にとってはいらない制度ですね。
・また、そうでなくでも、働き手が新たに手に入れる1日の休みを学び直しのために有効に活用できなければ、やはり給料が下がるだけになってしまいます。
・学び直しの機会が十分に確保されることが前提となる制度ということですね。そもそも、学び直しの意欲があることが前提になりますが、、、

そもそも、学び直しは何をしたらいいのか

・学び直し、と言われても、何をしたらいいかわからない、という人が多いのではないでしょうか。
・政府も以下のような学び直しのための大学等の講座情報を提供するサイトを整備していますが、こうした情報を収集だけしても、次のアクションになかなか結びつかないのではないでしょうか。https://manapass.jp/

・学び直しの迷子にならないためには、情報収集の前に、学び直しの前の段階の、そもそも自身のなりたい姿とそのための必要条件を洗い出すことが大切だと思います。そのための学び直しのステップをご紹介します。
・学び直しに向けたステップとしては、ざっくり分けて、①自分のありたい姿の理解、②今までのキャリアの特徴の把握、③ありたい姿を実現できる選択肢の洗い出し、④自身のありたい姿をふまえた強みと弱み・必要なスキルの把握、⑤選択肢の検討、となるかと思います。
・①では、そもそも自分が一体何をすると喜び、楽しいと感じるのか、具体的なシーンを思い浮かべながらひたすら書き並べます(注目を浴びるプレゼンが大好き、など)。その中から、自分はどんな状態であれば幸せなのか、そのためには何が必要か考えます。
・②では、自身のキャリアを棚卸し、思いつく特徴(営業トークはピカイチ、など)をやはり書き並べます。
・③では、①で考えた自分の幸せな状態を実現するために、どのような働き方がありえるのか洗い出します。ここで、はじめて情報収集してよいと思います。どのような職業がありえるのか、どうすれば希望する働き方に近づけるのか、また希望する働き方をしている人のキャリアストーリーなど。自分のありたい姿を認識したうえでの情報収集ですから、何が必要な情報か取捨選択できると思います。
・④では、③で洗い出したなりたい姿の選択肢毎に、②で把握した自身のキャリアの特徴を強み・弱みに切り分けていきます(強み・弱みは目指すキャリア次第の相対的なものなので、順番は逆にしてはいけません)。また、その職業に就くために必須のスキルも書き出しましょう。
・⑤では、④をふまえたうえで、各選択肢の実現可能性を比較したうえで、どの選択肢を選ぶか決めます。それでも決まらない、ということもあるかもしれませんが、論理的に検討をして散々悩んだ結果であれば、最後は直感で決めてもいいのではないでしょうか。

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